36 子供達と冒険 2
やがて、その騒動に他の天幕で休んでいた男達も気付き、武器を片手に慌てて、天幕から出てきます。
しかし、私の魔法に気付かず、五人程が底なし沼に嵌まってしまいました。
残りの5人の男達は、外に出る時に気付き、沼に嵌まった男達を踏み台にして飛び出してきます。
竜馬さんが飛び込んだ天幕からも男達が三人程、逃げるように飛び出してきます。
狭い場所で、斬り合う不利を避けるためでしょう。
竜馬さんも、天幕を切り裂いたところから、姿を現します。
その手には、綾ちゃんが抱えられていました。
見た所、二人とも傷はありません。良かったです。
あの短時間で二人を倒して、綾ちゃんの救い出すなんて、九重さん並みの技量なのではないでしょうか?なんで薬売りなんてしているのでしょうね。
ただ、竜馬さんの目の前には、まだ八人程の敵がいます。
竜馬さんは、綾ちゃんを抱えているし、明らかに不利です。
私は、すぐさま『風牙槍』の魔法を気付かれないよう、私の真上に多重発動させ、二本の風の槍を勢いを付けるようにして撃ち込みます。
二つの旋風がそれそれ「ぐしゃ」と言う、鈍い音を立てて、二人の男に突き刺さります。
そして、血を吹き出しながら、座り込むように倒れます。
「あそこに魔法使いがいるぞ。」
気配探知を持っているのか、男がそう言って私達の方を指します。
そして、残った六人の男のうち三人が『身体強化』を使って走りながら、こちらに詰め寄ってきます。
上手く、戦力が分散されました。
私も急いで単発の『鎌鼬』を向かって来る男達に放ちますが、それは躱されてしまいました。
先頭の男が、魔法を放ち、隙だらけの私に目掛け、剣を振り上げ近づきてきます。
そして、男の間合いに私が入る前にお妙ちゃんが、私の目の前に割り込むと、急造の槍で男の胸を貫いたのでした。
そのまま槍を返すように払い、槍に突き刺した男を横に倒し、倒した男を障害物としました。
槍の間合に倒した男が横たわっているので、飛び越えるのは、回避手段を狭めてしまい危険なので、残りの男達は左右に別れて、こちらに向かって来る。
私は、お妙ちゃんが前に出て、敵の倒しつつ、動きを制約してくれたおかげで、再度魔法を発動することが出来た。
『鎌鼬』
今度は敵の移動中、しかも目の前での発動です。
男は、躱す事も出来ず、風の刃が胴体の右脇を切り裂くように直撃をします。
魔法で斬られた男は、血しぶきを上げながら倒れ込みます。
間近での大量出血を見て、物凄い不快感が私を襲います。
でも、まだ終わっていません。しっかりしないとお妙ちゃんを危険に晒してしまいます。
さぁ、これで二対一です。形勢逆転です。
「たかが小娘二人で、やってくれるな。だが、そんな槍の構えじゃ、俺を倒せないぜ。」
男は、私の魔法を警戒しながら、お妙ちゃんにそう挑発を入れ、攻撃を誘います。
「言いますね。でも。」
お妙ちゃんは、そう言って男に槍先を向け正対し、間合いに入られないようにだけして、神経を研ぎ澄ませています。
男は、踏み込んでこないお妙ちゃんに焦らされ、このままの睨み合いは不利になると覚悟を決め、私の魔法が来る前にお妙ちゃんと決着を付けようと、にじり寄ります。
だが、時すでに遅く、私の魔法は、発動しました。『水球』。
男の頭上に水を集め、そのまま顔を覆います。
突如、顔を覆われ、呼吸をしようとすると肺に水が流れ込みます。一瞬で苦しくなり、剣を放り、顔の水を拭い取ろうとしますが、水を掴むことが出来ず、藻掻き苦しんでいます。
そこにすかさず、お妙ちゃんが槍を男の胸に突き刺しました。
男は、そのまま動きを止め、膝をついて絶命しました。
お妙ちゃんは前に倒れ掛かる男から、すぐさま槍を引き抜きます。
「茜さん、早く竜馬さんと綾ちゃんを助けましょう。」
そして、そう言うと駆けだします。
そうです。まだ、竜馬さんが男達と遣り合っています。
竜馬さんは、綾ちゃんを抱え、それを守るように槍を振るっているため、三人掛かりということもあって、防戦一方のようです。
腕に幾筋かの刀傷はありますが、槍の長さを生かし、敵に踏み込まれないように槍を振るい、何とか耐えているようです。
「早く仕留めろ。囲め。」
真ん中の男が、そう指示を出しながら詰め寄って行きます。
竜馬さんも囲まれないように懸命に左右の男の動きを封じつつ、下がって包囲されないようにしています。
ですが、片手だけの攻撃です。手数が足りません、このままでは、囲まれてしまいます。
私は、取り合えず、相手の数を確実に減らすべく。背後を取って居る男へ拘束魔法を発動させる。
『這寄る蔦』
中央に陣取っていた男が、私の魔法に気付き、拘束しようとした男に指示を飛ばす。
それを聞いた男は、慌てて、自分を拘束しようとする蔦に気付き、振り向きざまに、それを切り裂こうとする。
しかし、襲い掛かった蔦が多すぎて、斬ったのは一部にとどまる。
そして、斬り損ねた残りの蔦が、首や手足に絡みつき、男を引き倒し、動きを封じた。
これで、残りは、二人だ。
竜馬さんは、私達の方向にいた男が蔦に絡み取られて、倒されたのを見て、綾ちゃんをお妙ちゃんに向け放り投げる。
それを見て、お妙ちゃんは、慌てて、綾ちゃんを落ちて来る勢いを殺しながら受け止める。
綾ちゃんを受け止め、無事であるのを確認すると、お妙ちゃんは、そのまま、私が居る場所まで下がってきた。
竜馬さんは、今まで綾ちゃんを抱えていた手が空いたので、槍を両手で握り直し、構える。
男二人も、にじり寄りながらも私達を視界に納めるように、位置取りを変える。
さて、どうするか。指示を出していた男は、考える。
この男も手強いかも知れねえが、勝ち筋がないわけじゃねぇ。
ただ、背後の魔法使いを考えると、ちっとばかり俺ともう一人だけじゃ厳しいかな。
持って来た荷も、既に半分は持ち込んだ。
仕事としては十分だろ。今なら、逃げられる可能性もあるしな。ここで無理することもねぇか。
「おい、逃げるぞ。」
そう指示を出すと、男は、私と竜馬さんを結ぶ線上を一目散に走り、背後の草むらに消えた。
竜馬さんも、迷わず彼の後を追う。
もう一人の男は、一瞬、指示を聞いて迷ったが、すぐに後ろに駆け出した。
こちらには、魔法が放てる。
そう考え、発動時間優先で魔法を放つ。
『魔法弾』
男が消えた草むら目掛け、水平に魔法の光弾が飛んでいく。
「うわぁ。」
彼の悲鳴と共に、倒れる音が聞こえた。
お妙ちゃんは、私が魔法で拘束した男の息の根を止めてから、草むらに逃げた私が魔法を放った男の後を慎重に追う。
私は、気を失っている綾ちゃんを抱えながら、事態を見守る。
お妙ちゃんも、竜馬さんも綾ちゃんを助けたのだから、無理はしないようにね。
しばらくすると、お妙ちゃんが戻って来た。
「すみません。茜さんが傷を負わせたのにみすみす取り逃がしてしまいました。」
血の跡を追って行ったのだが、しばらくすると止血したのか血の跡がなくなり、草を掻き分けた後も見つけられなくなってしまったそうだ。
お妙ちゃんは残念そうにしていたが、こうして綾ちゃんは助けられたし、後は竜馬さんが戻って来たら、みんなで一緒に帰るだけだ。
ちっ、追ってきたか。
竜馬さんの気配を感じながら、男は逃げる。
そこで、一緒ににげた男の叫び声を聞きいた。どうやら魔法を受けてしまったようだが、向こうは果たして逃げられるか。
まぁ、魔法使いともう一人の女は、向こうの相手になっているようだしな。
こっちも何時までも逃げてるだけじゃ、芸がないか。
相手が一人なら、よし、ここらで、こっちから仕掛けるか。
男は、逃げるのをやめ、気配を消した。
次回のあらすじ
茜達は、綾ちゃんを助け街に戻るのですが、そこでなにやら佐加里の街に持ち込まれたことを知り、今後の一悶着を予感するのでした。
次回 第37話 子供達と冒険 3、是非読んでください。
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