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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
34/77

34 春に祭典を 5

 夕食後、寝る前に持ち込んだ錬金術で作った道具で、もやしを試しに作っておきます。これで、明日の夜にでも試しに食べて貰いましょう。


 それから、九重さんと折角二人きりになったので、今まで聞きづらかった、お武家様の生活についてや奥さんのこととか、妹の立場で聞いてみました。

 九重さんは、勘定方の仕事についてや、道場でのこと、また年に一度の魔力だまりでの魔物討伐のことなど、武士として務めていた時の話をいろいろしてくれました。


 その中で、丁髷ちょんまげを九重さんや町の人達がしてない理由は聞けてびっくりしました。昔はみんな丁髷をしていたらしいのですが、獣人さん達がこの国に来た時、獣人さんは、丁髷が出来ないので、差別につながらないよう、丁髷の強制を行わない旨を国王が出したそうです。

 それから、獣人が多い北の地域では、丁髷が廃れたそうです。でも、王都や、それより南の地方に行くと、まだ、獣人が少ないこともあり、丁髷をしている人がいるそうです。

 私は、この世界では、丁髷自体がないものと思っていたので、意外でした。


 また、奥さんの事も最初は恥ずかしそうにしていましたが、いいお嫁さんだったようで、一緒に居られた期間は短かったけど、とても楽しく、幸せだった話を聞かせて貰いました。

 九重さんの事をあまり、知らなかったからいろいろ聞けて良かったです。ただ、ちょっと奥さんのことを思い出させてしまって、悪かったなとも思ってしまいました。


 その後、就寝しましたが、もちろん布団は、別々の部屋に敷きましたよ。

 ただ、街からそんなに離れていないのに、村はまだちょっと、夜の冷え込みが強く、寒かったです。




 翌朝、お妙ちゃんの家族と朝食を取りました。その後、早速、お妙ちゃんの家族の畑に集まり、私の種を育ててみたいという家族数組へ種の説明をしました。


 九重さんは、その間は、暇になるからと村長さんに周辺での狩りの許可を取て、狩りに出かけるようです。


 私のつたない説明に対して、向こうは農業で生活している方々、大変いろいろ質問をいただきました。

 私自身は、農業系の大学に進学したけど、そっち系のサークルに入っていたわけでなく、実習もまだしていません。おばあちゃんの手伝いや近所の人たちの作業風景を見ていたくらいなので、彼らの疑問に満足に答えられたか、少し不安です。

 いくつか、私の知識不足で上手く答えられないところもありましたが、お妙ちゃんがその辺を私と話し合った知識を元に、頑張って補足して説明してくれました。

 細かな野菜の作り方や、こっちの世界の野菜作りの常識とかわからないことも多いですからね。

 それでも、話を聞いてくれている皆さん、私の説明を、自分なりに一生懸命に理解してくれようとしてくれていたので、私もその熱意に負けないよう頑張りました。

 そして、説明が一通り終わると、皆さん、興味のある種をいくつか持って行って貰い、育ててくれることになりました。うまく育つといいな。

 さて、これで野菜作りの第一歩が始まりました。


 ただ、皆さんも、私も、こっちの世界で初めて作る野菜です。私の説明通り育つかも不安です。

 そこで、みなさんから、育成の相談の為、野菜を作る間何度か、村に来てもらえないかとも言われました。

 それには、私だけでは、即答出来ないので、九重さんやお政さんと話して回答すること答えました。雇われの身でもあるので、勝手に決まられません。

 ここに来れるか来れないか、来れるならどのくらいの間隔で訪れるかについては、決まり次第、お妙ちゃんのお家に手紙を出すという事にしました。

 その後は、お妙ちゃんの所の畑で草むしりを手伝ったりして過ごしました。


 三時頃、村の入口の方が慌ただしくなっていました。何かあったのかと心配しましたが、どうやら九重さんが大きな猪を仕留めたみたいで、騒ぎになっていたようです。


 お妙ちゃんか私の騒動への巻き込まれ癖が、発動したわけでなかったようでよかったです。

 でも、その後、猪がおおきなこともあり、村で一同集まって振舞われることになったようです。そこで、奥様方が急遽駆り出されて、解体やら、調理やらで大忙しになっていました。


 私も、もやしと春野菜、猪のお肉を少し貰って、もやしの肉野菜炒め物を作りました。この騒ぎに便乗して自分の種で作った野菜の宣伝をするつもりです。 

 そうだね、野菜を作って貰っても食べ方が分からないと、廃れちゃうよね。そのあたりも考えておかないとだよね。

 あと、街にも少し卸して貰えるようにお願いしておこう。現金収入にもなれば喜ばれるだろうしね。


 夕刻、陽も傾き始め、少し薄暗くなってきます。焚火はありますが、それだけでは、少し薄暗いかと思い、何か所かに『光源』の魔法を使い明かりを灯します。

 お妙ちゃんのお父さんに、村の中で別に生活魔法以外の魔法を使っても平気かどうか、ちゃんと確認して使いましたよ。


 街でも『光源』の魔法を使えると便利なのだけどな。これは、確かに扱うの難しいから、生活魔法に組み込むのは難しいので、仕方ないのだけどもね。


 農作業が終わった村の人達も、集まってきました。

 子供たちは、私の魔法で作られた光が珍しいのでしょう。光の元に集まって楽しそうにはしゃいでいます。

 私も、彼ら、彼女らの動きに合わせて、光を上下させて、遊んであげます。


 そして、村の人達がだいたい揃うと、村長さんの挨拶が始まりました。   

 挨拶の時、その横に大きな猪の頭と一緒に、九重さんも気恥ずかしそうに立たされていました。

 村長から、猪を倒した時の武勇を語られて、更に恥ずかしそうに俯いてしまっています。

 挨拶が終わると、乾杯が行われ、村全体での食事が始まりました。


 皆楽しそうに食べています。猪は、醤油だれで串焼きにされたり、豚汁等にと色々供されていました。

 その他にも、村の人達がそれぞれ持ち寄った料理なども並べられていました。

 さらに、村長さんと九重さんから、お酒の提供もあり、村の男衆は、はしゃいでいます。

 手拍子に合わせて、踊りを踊る人達も現れました。

 料理は、どれもみな美味しかったです。


 それと、明かりがあるせいもあって、みんな、食事が終わた人も会話に花を咲かせ残っています。

 酒が足りなかった人は、それぞれ自分の家から、酒を持ち込んできたりしたようです。


 「みんな、楽しそうだね。」


 九重さんの周りに集まって声を掛けていた村人が途切れた頃、私は、豚汁といくつかの料理を皿に盛って持っていき、九重さんに声を掛けた。


 「ああ、いい笑顔だな。茜殿の方はうまくいったのか?」


 九重さんは、それを受け取り、一口味わうと、私にそう声を掛け返した。


 「うん、みんな協力をしてくれたよ。それについて、また、九重さんに頼まないといけないことがあるかもだけどね。」


 「おう、遠慮するな。なんたって、俺の奥方の妹君だからな。」


 「そんなふざけたこと言って。飲み過ぎなんじゃないですか。もう。」


 「ははは、しかし、いいものだな。こういった騒ぎは、祭りみたいで。」


 「そうですね。」


 そんなことを話していると、お妙ちゃんが、私に声を掛けて来ました。どうやら、探していたようです。


 「あ、すみません。お話し中に、茜さんが作ったもやし料理を食べて、新しい野菜作りに興味を持った方がいるのですけど、今いいですか?」


 「うん、大丈夫だよ。今行くね。」


 「はい、お願いします。」


 「すみませんね。九重さん、失礼します。」


 「ああ、自分で作った物だ、一生懸命、広めてこい。」


 「はい。」


 こうして、お妙ちゃんの村での新しい野菜作りは、始まったのでした。



 

 翌朝、朝早く、お妙ちゃんの家族は農作業があるので、お別れの挨拶をする。


 「今回は、いろいろとありがとうございました。また近いうちに、お妙ちゃんを連れてまた来るつもりですので、その時もよろしくお願いします。」


 「ああ、また来てくれるのを楽しみにしているよ。野菜もちゃんと育てるから、任せてくれ。」


 お妙ちゃんのお父さんは、そう言ってくれました。


 「はい。初めての野菜でしょうから、失敗もあると思いますが、よろしくお願いします。」


 「お姉ちゃんも、茜お姉ちゃんも、またね。向こうに行った時にまた挨拶に行くから、よろしくね。」


 お藤ちゃんも、今回はあまり構って上げられなかったけど、また遊びに来たら、たくさん構って上げるからね。


 「はい、待っているよ。その時は、村の野菜のことも聞かせてね。」


 「うん、わかった。」


 そう言って、お藤ちゃんは、嬉しそうに笑う。頼りにされたのが嬉しかったようだね。

 そんな挨拶をしていると、他の村人も、私達を見つけて、見送りに来てくれた。

 新しい野菜への期待や、昨日の村を上げたお祭りのような騒ぎが出来たお礼などを口々に貰いました。


 私達も野菜作りが、上手くいくことを祈るのと、楽しく過ごせたことへのお礼を述べて、村を後にしました。

 帰路は、三人でとなったが、特に問題もなく、佐加里の街に戻ることが出来た。


 野菜が出来上がるのは、まだ、先だけど、出来上がったら、また、新しい野菜を使った料理を作り、村を上げて騒ぎたいな。



次回のあらすじ

 茜達は、お妙ちゃんの村に、農業指導の名のもと何度か、訪れていました。そんな帰り道、佐加里の街の外である一団を発見したのでした。

 次回 子供達と冒険 1 是非読んでください。

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