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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
33/77

33 春に祭典を 4

 結局、錬金書庫の結果が出るまでは、他の種を作っても無駄になる可能性もあるので、結果が出るまで種の錬成はお預けすることにしました。


 私は、お政さんの仕事の手伝いを終えると、その日は、お藤ちゃんと、お妙ちゃんを交えて、料理を作ったり、お話をしたりしました。お藤ちゃんは、いろいろな魔道具を見ては、驚いたり、喜んだりと楽しそうにしてました。

 そして、夜は、私の部屋に、お妙ちゃんとお藤ちゃんの布団を用意して、一緒に少し遅くまでおしゃべりをして、寝ることにしました。

 お妙ちゃんの村の様子や、昔の出来事とか聞けてとてもよかったです。


 次の日は、三人で街中を巡ったり、惣弥さんの工房を見学させて貰ったりしました。

 そこで、お弟子さんが作っている習作の櫛を買って、お藤ちゃんに贈り物として渡しました。


 昨日、お妙ちゃんに、お藤ちゃんへ金剛石の付いた髪留めを渡していいか相談したら、怒られちゃいました。

 まだ子供にそんな高価なものあげないでください。それにそんな物付けてたら、それこそ人さらいに襲われちゃいますって。そうだよね。街道筋で子供が一人そんな高価なの付けてたら危ないよね。

 という訳で、惣弥さんの弟子のやる気を上げる意味も込めて、お藤ちゃんに選らんで貰って、買ってあげたのでした。

 選ばれた作品を作ったお弟子さんも、凄く喜んでたし、今度は、サキちゃんも連れてこようかな。


 その後、お茶屋さんでお団子を食べながら、茄子とかの種を蒔く時期を聞いたら、今月は田植えの準備で忙しいから、多分、次の大市が終わった辺りでと言うことだった。

 その時新しく作った種を蒔けるようなら、一緒に村に伺わせて貰うと話して、また、街の門まで送ってその日は別れたのでした。



 2日後、錬金書庫の結果が出て、汎用性がない錬金技術だったため、当然だが、書庫への掲載は見送られた。それが、この世界的には作っても問題ないと回答が貰えた。

 茜的には、遺伝子汚染とか、科学倫理とか、いろいろの気になったが、錬金書庫の偉い人がいいと言うなら、大丈夫でしょと、色々な野菜の種を作りまくった。

 そして、お妙ちゃんに説明が分かるかなどを監修して貰い、野菜の育て方を覚えている限り、紙に書いた。


 ただお妙ちゃんに聞いたが、肥料は、有機肥料を育てる前に土に混ぜ込んだりはするくらいで、種類が沢山あったりすることはないそうだ。


 苦土石灰があった方がジャガイモにはいいんだけど、混ぜ込んで土を寝かせたりしないとだし、なくても一応は育つから、今回は肥料関係を作るのは見送ることにした。


 錬金書庫には、肥料もあったが村で作るのに肥料を毎回買ってと言うのも難しいだろうからね。

 一応、注釈くらいは書いておいたけど、肥料を混ぜ込む量とか流石にかわからないから、作っても正しく利用できるように教えられないことに気づいた。


 あと、農薬とかもないけど、病気が出たら、生活魔法の『浄化』を使ってと書いておいた。お妙ちゃんに、野菜にも聞くのですか?と尋ねられた。

 私もよくわからないので、その辺の木のウィルスでおかしくなった葉っぱを見つけ、それに『浄化』を使ってみた。そしたら、効果があったので、おそらく大丈夫でしょう。


 それと、ジャガイモの種芋が、ウィルスに冒されたりしないようにするためにも、『浄化』が使えそうだしね。

 ただ、日常生活に生活魔法は、村だとかなり使うみたいで、どこまで利用できるかわからないと言われました。

 それなら、生活の便利さは犠牲にしないよう話しておこう。


 それと鑑定道具で、「品質:優」と出ていたが実際発芽するかも確かめるため、大豆を錬金術で一時的に周りを温かくする道具をつくり、もやしが出来るかも確かめてみた。

 結果は、大成功で、夕食にモヤシ炒めを作って振舞いました。みんなに美味しいと言って貰えました。

 こっちの大豆でつくったもやしは、流石に大きすぎて食べ辛いうえ、味も染み込みにくいので、大豆のもやし自体、売られていないそうです。そして、枝豆もないそうです。

 今回は大豆で作ったけど、本来、もやしを作るための緑豆は、こっちの世界では、どうなんだろう?春雨を作るには大きい方がいいかも?


 村に向かうための準備期間に、店の手伝いや、なにやらしながら、その合間に種をいろいろ作って、説明書きを書いたりした。

 そして、お妙ちゃんも一緒に来れるようにお政さんにお願いしたら、関所を越えて、女3人で村に向かうのは危ないからと、その時の村までの行き来の護衛を、九重さんには申し訳ないが、お願いしたりと、慌ただしくしていたら、あっと言う間に時間が過ぎて、次の大市が近づいてきました。




 「それでは、お政さん、申し訳ありませんが、お妙ちゃんを、また、しばらく借りますね。」


 「気を付けて行ってきな。お妙も、久しぶりの実家だ。楽しんでおいで。」


 「ありがとうございます。でも、本当に私も行っていいのでしょうか。」


 「何言ってんだい。本来ならまだ手習いでいいのに、店の帳面までつけて貰っているんだ。少しくらい休んでもかまわないよ。」


 「そうだよ。お妙ちゃん。お陰で、店番の時、やることなくて困るくらいだしね。」


 「それと、すまないが、九重の旦那、2人を頼んだよ。」


 「ああ、しっかり面倒見るから安心してくれ。」


 「ありがとね。九重さん。」


 「よろしくお願いします。」


 そうして、私達は、大市の帰りのお藤ちゃんとも合流して、お妙ちゃんの故郷、白菊村に向かったのでした。

 街の外に出るのも迷宮行くときくらいだったから、こうして遠くに出るのは、最初にお妙ちゃんと出会った時というか、この街に来た時以来だね。


 もっとも、村までも半日あれば着くのだから、それほど遠くに行くわけでもないのだけどね。

 しかし、お藤ちゃんだって一人で村から街に来ているのに、九重さんを護衛に頼むのは、過保護なんじゃないでしょうか?

 お政さんにもそう言ったのですが、女三人も連れ立って、街の外を歩くのは一人より危ないといわれたのでした。


 それと私はいろいろ刃傷沙汰に巻き込めれているから、心配だからと言われました。

 まぁ、確かに色々と不運が重なり、あっちこっちで襲われることが多いけども。

 でも、あっれて、全部私は巻き込まれただよね?というかお妙ちゃんも、全部一緒にいたよね?

 それに、最初のはお妙ちゃんが襲われてたし、もしかして、巻き込まれ体質は、私じゃなく、うん、これ以上考えるのはやめておこう。

 そんなことを考えながら、関所を抜け、お妙ちゃんと最初に会った場所も何事もなく通過し、山間の細い道を抜けると無事に村に着いたのでした。


 山間の開かれた土地に、小さな小川が流れている。家がいくつか離れた感じで建てられている。

 山側には獣避けか魔物避けだろうか、簡易だが柵が設けられている。

 

 「ここが私達の白菊村です。本当に何もない所ですが、ゆっくりしていってくださいね。」


 「ゆっくりはできないかな。頑張って私が錬金で作った野菜を作って貰わなきゃ。」


 「そうでしたね。私も頑張って口添えします。」


 「お願いね。」


 「お姉ちゃん、先に行ってお母さん達にお姉ちゃんが帰って来たの知らせるね。」


 そう言って、お藤ちゃんは先に駆けて行ってしまいました。お妙ちゃんと一緒に家に帰れたのが嬉しいんだね。


 「そうだ、ここまで来てこんなこと聞くのもなんだが、俺が泊れるようなところはあるのか?」


 九重さんがお妙ちゃんにそう聞いてきました。


 「私の家でもいいですけど、落ち着かないですよね。使っていない家がありますので、そこを使えるよう頼んでおきます。」


 「あ、私もそこに泊まりますよ。」


 それを聞いて、私も九重さんに便乗することにした。


 「え?どうしてです?」


 「たまには家族水入らずで過ごしなさい。」


 「え、でも。」


 お妙ちゃんは、そう言って、九重さんの方を見る。


 「おい、いいのか、茜殿、俺と二人で泊まることになるのだが?」


 お妙ちゃんが九重さんを見るより早く、九重さんがそう言って来た。

 あー、男女が同じ屋根の下、二人きりですか。でも、信用してますよ、九重さん。


 「大丈夫ですよね。師匠。いえ、この場合は義兄おにいちゃんがいいですね。」


 そう、なんたって、私の剣の師匠であり、義兄なのですから。


 やがて、お妙ちゃんの家に着くと、お藤ちゃんとその両親、あとお妙ちゃんの兄夫婦が畑から慌てて戻って来たのだろう。まだ、手に泥が付いたままで家の前で待っていた。


 「お母さん、ただいま。」


 お妙ちゃんは、そう言うと駆けて行き、お母さんの胸に飛び込んだ。そうだよね。この世界じゃ、大人とは言え、まだ十五歳だものね。家族に会えればうれしいよね。


 「おかえり、お妙、元気にやってたかい。そんな綺麗な恰好で、抱き着いちゃ、汚れちまうよ。」


 お母さんも会えて、嬉しかったようで涙を浮かべて抱きしめようとしていたが、お妙ちゃんが町娘の着物姿だったので、抱きしめるのを躊躇して、そう言った。

 私は、それを見て、ちょっと無粋かもと思ったけど、二人に近づき、『浄化』の生活魔法をかけてあげた。

 お母さんと目が合い、嬉しそうに頷くと、思いっきりお妙ちゃんを抱きしめていた。

 それから、お父さんさんとお兄さんにも、『浄化』をかけると二人も、お妙ちゃんとお母さんを抱えるように抱きしめていた。

 それを見ていた、お藤ちゃんも、一緒にその輪に入るように抱きついていた。

 最後に、お兄さんのお嫁さんにも、『浄化』をかけるが、お嫁さんは、私にありがとうとだけ言って、私の隣でその光景を見ていた。そうですよね。お妙ちゃんとの関係はわかんないけど、肉親の関係に入れないですよね。


 やがて、一段落すると、九重さんは、お妙ちゃんのお父さんに酒瓶を一つ渡す。そして空き家になっている家を寝泊まりに借りるため、村長さんの家に案内を頼み、向かいました。

 私も、お土産を渡し、私の作った種を畑で育てて貰うようお願いする。


 それから、私達は、空き家を寝泊まりできるようにきれいに掃除し、使っていない布団を借りて来て、寝られるように準備を整える。

 食事は、空き家に色々と道具を持ち込んでもらう訳にも行かないので、お妙ちゃんのお家で頂くことになりました。

 お妙ちゃんは、久しぶりの家族との再会でとても楽しそうに語らっていました。



次回のあらすじ

 茜は、錬金術で作った種を村で作って貰うために、一生懸命説明しています。その後ひと騒動もあって、お妙ちゃんの村、みんなで楽しむ事になったのでした。

 次回 春に祭典を5 是非読んでください。

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