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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
30/77

30 春に祭典を 1

 私は、迷宮から戻ってから暫く休んだあと、元の生活に戻ったが、『光陰星霜』の女の子が訪ねてくるようになり、日本にいた時の料理を教えたりして過ごしていた。


 うーん、もっといろいろな料理を教えたいけど、あまりに野菜の種類が少ないんだよね。それに品種改良もあまり進んでないから、いまいち甘みが無かったりだしね。

 もしかしたら、物流が発達していないから、探せばこの国にも、色んな野菜があるのかもだけど、ここで手に入らない物は無いのと同じだしね。


 それと、日本居た時には無い野菜もあるからなんとかそれで誤魔化したりしてるけど、それも完全互換じゃない。

 ただ、現代日本にある野菜だって、もっとも江戸時代以降日本に入って来たものが多いし、そう考えれば仕方がないのだけれど。


 でも、洋風な料理とかももうちょっと作ってみたいな。そのためには、とりあえずトマトは欲しいわね。そうすれば、かなり作料理の幅が広がりそう。こちらでは、ニンニクや玉ねぎは既に食用として広まっている。これは大陸から来た亜人さんが広めたらしい。


 「どうにかして手に入らないかな。」


 「どうしたのです?茜さん。」


 「あ、お妙ちゃん。女の子達に教える料理を考えていたのだけどね。いろいろ材料が整わなくてね。」


 「あー。でも、この間のハンバーグっていうのは、美味しかったですよ。私も、教えて貰うの楽しみなんです。」


 「あれもね。本当は牛のお肉で作るものだけど、猪の魔物と鹿の魔物のお肉で作ったんだよね。味付けも和風一択だし。」


 「そうなのですか?牛のお肉なんて堅いし、臭いし美味しくないですよ。」


 そうなのだ。この世界ではまだ、牛や馬は貴重な労働力として扱われているので、子も産めなくなった年老いた雌牛くらいしか普通の人は食べられないため、そういった評価なのだ。


 「成熟したての若い牛を食べると、そんなことないんだけどね。」


 「そんな貴重な物食べれないですよ。」


 「そうなんだよね。だからいろいろ悩んでるんだよ。お肉もだけど、お野菜もいろいろ違うからね。」


 「そういう苦労があるのですね。こればっかりは、皆さんにも手に入る材料で教えないとだから、錬金術で材料を作る訳にも行きませんしね。」


 「うん、それに実際にない状態から作るとなると魔力が沢山必要になるだろうしね。」


 「野菜はすぐに育ちませんし、魔力が沢山必要そうですね。」


 「そうだねぇ。時間かかるよねぇ。ん?待てよ。そうだ種を作ればいいんだよ。それを育てる。種も近縁種を利用すればもしかすると魔力を押さえられるかもだしね。」


 うん、これは行ける気がする。ただ、どの錬金術師も出来る物じゃないから、錬金書庫には登録できないけど。

 これって、この世界に無いかも知れない野菜を作るんだから、遺伝子操作以上行為だよね。

 でも、色々な野菜があると便利だよね。作っていいよね。


 「でも、すぐには使えませんよ。」


 「それでもだよ。育てて、また種を取ればまた次の年も取れるし、作る量も増やせる。そうと決まれば、ちょっと試してみよう。お妙ちゃん、買い物付き合って。」


 「どこに行くのです?」


 「野菜の種を買いに行くの。どこで売っている?」


 「売っていますかね?」


 「えっ、どういう事。」


 「私の村だと作っている野菜は、昔からある野菜か、近隣の村と物々交換で手に入れた物、後は、これは滅多にないことですが領主様や商人さんが試しに作って出来たら買い取ると持ってきた物です。だから、街なんかで売っていたりするのかなと。」


 「なるほど。困ったな。」


 むー、お米や専売作物以外は自由に作っていいといっても、確実に作ることができる知識が蓄積されている昔から作っている作物や近隣で作っている情報を仕入れられる作物になっちゃうか。そうなると外からわざわざ種を買わないよね。


 田舎にいた時も、今でこそ、指導員が居たり、ネットに知識が溢れてるから新しい作物を作る人達がいるけど、大体の人は昔からの同じ作物を作ってたものね。

 そう言って、私がそんなことを考えていたら、お妙ちゃんが提案をくれました。


 「あのよろしければ、村の物品を街の市に売りに来ている妹に、茜さんが必要としている種を貰えるように頼みましょうか?」


 「うん、そうして貰えると嬉しいな。」


 「それでどんな種が欲しいのでしょうか?」


 そうだね。トマトの近縁種だとジャガイモがいいけどそれもないからな。そうだね。

 ジャガイモも作りたいけど、種からだと時間が掛かるね。あと近い種類と言ったら、やっぱり茄子からになるかな?

 茄子を使えばピーマンも作れるね。

 ちょっと、いろいろ思いついて、考えがまとまらないな、よし、ちゃんと考えてから頼もう。


 「ちょっと、ちゃんと考えてからお願いするね。」


 私は、そう言って部屋に籠って考えることにしました。



 トマトは、取り合えず茄子を使いましょう。鬼灯ほおづきでも良いけど毒があるから、なんか怖いしね。

 ジャガイモも、同じ感じで作ってみよう。


 あとは、キャベツだけど、甘菜と呼ばれてる葉野菜が、食べてみた感じ結球しないキャベツだと思うのでそれを結球するようにすればいいかな。


 苺とか甘い物も作りたいけど、あれも種からだと実を結ぶまで時間かかるからなぁ。でも、種からも育てるようにしないと株分けで育てると品質も落ちて行くから、うーん。

 それと……。


 そうやって、いくつか候補を考えていく。

 とりあえず、こんなものかな。でも、思いついたの全部書いたら、結構な量になっちゃた。

 あ、でも、こんなに沢山どうやって作ろうか。


 そう言えば、お妙ちゃんが、領主や商人が作ってと種を持ってくることもあるって言ってたね。錬金が上手くいったら、相談してみよう。

 と、勢いでここまでやっちゃたけど、私の雇い主であるお政さんにこんな事試みていいか聞いてみよう。




 「あの、お政さん。」


 「なんだい。今度は何だい?また面倒事かい?」


 いえ、そんなに面倒事をお政さんに持ち込んだ記憶はございませんよ?

 そんなことは、おくびにも出さす。

 お妙ちゃんと話して思いついた、私のいた世界野菜を作ると言う話をしてみた。


 「うーん、どうなんだろうね?よそ様の迷惑にならなきゃ、構わないような気が知るけどね。」


 そんなもんだよね。私がいた世界だって、外来種の問題が叫ばれるようになったのは、最近のことだしね。

 人の移動だって滅多にないこの世界じゃ、何が起こるとか分からないよね。

 倫理と食欲、さてどうしたもんかね。さっきは暴走しちゃったけど


 「どうしようかな。」


 「心配なら、一つ作ってみて、錬金書庫に書き込んでみればいい。」


 「えっ、でも、あれって、誰でも作れるものしか登録できないって言ってましたよね。」


 「ああ、そうだけど、登録できない理由を書き出して、ダメ出ししてくれるから、書き込んでみれば、それをやっても平気かわかるのさ。」


 「なるほど、いいことを聞きました。とりあえずやってみます。」


 あ、でも、錬金書庫の管理って誰がやっているんだろ?もし、普通の人間なら、今と状況あまり変わらないような?お政さんやみんなの話しっぷりから、この世界も別に神様とかいるような世界でないっぽいし。


 でも、何か問題があったら、錬金書庫のせいに出来るから、まぁいいよね。

 科学(食欲)は時に倫理より優先されるよ。

 私は、そんな悪の科学者が吐くような台詞せりふを思い浮かべながら、お妙ちゃんのもとに向かうのでした。


 結局、錬金書庫という安全弁を手に入れ、先程までの葛藤が嘘のように食欲によって暴走してしまったのでした。



次回のあらすじ

 茜は、錬金術で使う、野菜の種を仕入れるため、市に売り子に来ているお妙ちゃんの妹、お藤ちゃんに会うことにするのでした。

 次回 第31話 春に祭典を 2、是非読んでください。

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