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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
29/77

29 茜の迷宮探検記 6

 翌朝、私は顔を洗いながら、お妙ちゃんと会話をしていた。


 「いよいよ、迷宮の守護者とやらの攻略だね。」


 「ええ、私はとても不安ですけど、茜さんは楽しそうですね。」


 「うん、怖いことは怖いけど、こう言うのって滅多に体験できないことでしょ。」


 「そうですけど、ちょっとした過ちで死ぬかもしれないんですよ。」


 「そうだけどね。でも向こうの世界に居たら、疑似体験は出来きるかもだけど、実際に体験なんてできないことだから、そう考えるとね。」


 「疑似体験?ですか?そんなことできるんですか?」


 「疑似体験と言っても、テレビ画面で見るだけだけどね。」


 「テレビ?ですか?」


 「あー、この世界にはまだない物だから、気にしないで、あはは。」


 「はぁ。」


 そんな会話をした後、いつもの食事に柚餅子を加えて、ちょっぴり豪華な食事をして、攻略前の最終打ち合わせをすることになった。

 私達は、2人は、初めての打ち合わせだけど、基本後方での仕事なので聞いているだけでも大丈夫だと九重さんに言われた。

 ならと、安心して話を聞いていた。


 私は、前日の朝に聞いたとおり、後方で隙を見て魔法を放つだけでいいらしい。強化魔法や補助魔法は、もう一人の子が使ってくれる。強化魔法とかは、効果が切れないように管理して使わないとだからね。これも昨日の聞いていたし、時間管理も熟練者がいいので異存はありません。

 お妙ちゃんは、薬師の子と前衛を魔物が突破してきたら、私達魔法使いを守るように足止めを行う役目だそうです。突進して来る魔物を受け止めるのは大変そうだけど、前衛が抜かせなければいいのだから、頑張ってね、前衛君のみなさん。


 それと、時たま運が悪いと、通常の守護者以外の魔物が現れるそうだが、その時は改めて、九重さんが指示をくれるという事です。そんなことになりませんように。

 打ち合わせも済み、いよいよ、守護者とのご対面となった。


 皆で、再生回復薬を服用する。

 そして、決められた隊列のとおり、順に守護者の居る部屋に足を踏み入れる。

 皆が入ってしばらくすると、入って来た扉が閉ざされる。やがて、部屋の中央に魔法陣が描かれ、そこから魔物が姿を現す。四つ足で赤い毛色の熊のような魔物だ。


 なんか本当にゲームみたいな感じの現れ方だね。そんな感想を浮かべながら、その光景を見ていると、九重さんが、声を発した。


 「よし、敵は通常の守護者だ。打ち合わせどおり、今のうちに補助魔法を前衛に掛けろ。前衛は、前に出て魔物が動く前に一撃入れていけ。」


 「「おう。」」「「はい。」」


 各自、気合を入れるようにお互い声を発し、準備にかかる。

 よし、私も今のうちに大きい魔法を撃ち込むよ。


 「『二重発動』『風牙槍』」


 そう言って、魔法を準備し、空中に浮かせ、相手の完全な実体化を待つ。

 狙いは、首と前足の間。勢いをつけるために少し距離を取って、発動体を小さく収束させて、錐揉み状態で突き刺すよ。


 今だ!


 魔物が実体化した瞬間に、私は魔法を発動させる。二つの高速に舞う小さなつむじ風のような物が、魔物に向かって行く。

 魔法は、見事に魔物に突き刺さる。その瞬間魔物は苦しむようにして、大きな音を立てて倒れ込む。どうやら魔法が皮膚を軽く突き抜け、肺まで達したようだ。


 「え?」


 私は、それを見て思わず声を上げる。

 周りを見ると、他の人達も驚いたように立ちすくんでいる。

 暫くすると、魔物は動きを止めて、息を引き取った。


 「茜殿、『風牙槍』で、あの魔物に与えられる傷は、せいぜい皮膚を傷つける程度の筈なのだが、どうやった?」


 「えっ、あっ、威力を強めようと、勢いをつけるため少し距離を取って発動させて、魔力はそのまま発動体を小さくさせて、槍を高速で回転させて突き刺す感じて魔物筋肉の少なそうな首と肩の間にぶつけただけですけど。」


 「剣の才能はあれだが、魔法は適性があるにしろ、これはかなりの実力のようだな。これは見込み違いだったな。しかし、どうするか?」


 そう言って、九重さんは、少し困ったような顔をした。


 「何がです?」


 私は、私だけでほぼ倒しちゃったのはまずかった?まずかったよね絶対にと思いながら、九重さんに恐る恐るそう尋ねた。


 「いや、第十階層の攻略だ。これで終わりにするかどうするかだ。俺が連れている連中が、不完全燃焼だと思ってな。」


 「あー。」


 そう言って、私は、『光陰星霜』の人達を見る。


 「もう終わちゃったのかな。」


 「俺のやる気は、どうすれば。」


 「これじゃ、仲間に武勇伝を聞かせようと思ってたのにそれも出来ないな。」


 「倒したって達成感が無いっす。」


 「だよね。」


 「うん、凄いんだろうけど……。」


 彼等、彼女等は、私を見て口々にそう言ってきます。

 だよねー。自分達の一人前になるための関門だったのにこんなので終わっちゃね。


 「あははは……。ごめんなさい。」


 私は、笑って誤魔化そうとしたが、やっぱり無理で、素直に謝った。


 「仕方がない。途中で襲撃があったから、これで終わりにしようと思ったが、もう一戦するか。」


 「え、出来るんですか?」


 「出来るが、最低三人は討伐の証を受け取る必要がある。俺と茜殿、それとすまないが妙殿も証を受け取ってくれないか。」


 「私はいいけど。お妙ちゃんは大丈夫?」


 「は、はい。私は茜さんに付いて来ただけですし、構いません。」


 「そうか。すまないな。それとお前たち、俺も外で待つことになるが、自分達だけで戦えるな。」


 「おう。」


 「任せて下さい。」


 「茜さんが独りで倒せたんだ。やってやるぜ。」


 と他の子もそれぞれ賛同の言葉を発して、再戦が決まった。


 とりあえず、売ってお金になる魔石と魔物の爪を剥ぎ取り、私とお妙ちゃんが九重さんが魔物から抜き取った討伐の証として牙を手にする。

 すると魔物が消えていく。


 「よし、これで再戦が出来る。一旦外に出るぞ。」


 そう言って出口に向かう九重さんに私達は付いて行く。


 「ねぇ、この牙捨てたら再戦出来ないの?」


 私は後を追いながら、そう九重さんに聞いた。


 「うん?ああ、三日は捨てられない。このようにな。」


 私の疑問に答えるように九重さんが、牙を放り投げようとする。しかし、手から離れた瞬間にその力に逆らうように元に戻って行った。


 「なんで?」


 「一種の呪いのようなものだ。もちろん害はないがな。三日すれば捨てられるし、おそらく迷宮が守護者と連戦できないようにするための仕掛けのような物なのだろう。」


 ああ、確かに高価な魔石を連戦で取られたら、嫌だろうしね。

 そんな話をしながら、外に出ると魔力回復のため休憩し、午後から再戦することとなった。

 休憩中も、再戦組は、特殊な守護者が出た場合の対策を九重さんと話していた。私達も特にやることはないので、一緒に聞いていたけどね。


 特殊な守護者は、強さ的には、通常現れる守護者が第十五層辺りの魔物と同程度の強さらしいが、それが第十八層辺りの敵と同程度になるらしい。

 と言われても戦ったこともないですし、わかりませんよね。再戦のため聞いていた子たちも、分からなかったらしく、質問していた。


 九重さんは、それを聞いて考えてから説明をしていた。

 強さ的には、第五層の魔物が第八層の魔物に変わったと思えばいいとのこと。そう聞くと結構強くなる猪の魔物一、二匹が、紫アメナメクジのようなのが二、三匹になるのだからね。

 ただ、力任せな赤い熊のような魔物から、金色のバッタのような魔物になるらしく、速さは数段上がるが攻撃力はむしろ落ちるらしい。

 どっちが現れても自分達で対応できるように、弱点や効果的な攻略方法を頭に叩き込まされていた。


 話し合いが終わり、魔力がある程度回復すると、『光陰星霜』の六人は再び再生回復薬を飲むと守護者の部屋に入って行った。

 再生回復薬また飲んで、過剰摂取による影響とか本当にないのかな?

 部屋の中の音は外には漏れてこないようで、長い沈黙が支配していた。


 「大丈夫ですかね。皆さん?」


 私は沈黙に耐えられなくなり、そう声を発した。


 「なに、茜殿だって一人で倒せたのだ。心配はあるまい。」


 「そうですよ。でも本当に凄かったですよ。あの魔法。」


 「あれはね。九重さんには、あの攻撃をしても平気だと、予め聞いていたから使ったんだけど、結果は大失敗だったよ。」


 「それは、茜殿が普通に使って入ればの話であってだな。ああも強力な魔法にになるとは思ってなかったのだ。」


 「そう言われると、そうかもですけど……。」


 「まぁでも、私は戦闘をほぼしないで終わたので良かったですよ。」


 「本当に?お妙ちゃんも結構やる気でいたのではない?」


 「まぁ、やる気がなかったなんてことはないですけど、実際、初迷宮討伐でここまで来れることなどないですし、それに探索者として生きていくわけでもないので、これでよかったと思ってます。」


 「そうか。それならいいけど。確かに私達は、探索者として生活するわけでもないからね。」


 そんな取り留めのない話をしていると、やがて守護者の扉が開いた。


 「終わったようだな。行くぞ。」


 中に入ると、男の子が一人、薬師の子の治療を受けていた。

 戦闘中に敵の攻撃を躱し損ねて、脚に傷を負ってしまったとのことだった。幸い、治療薬を患部に掛けて、服用するだけで傷も癒え、後遺症も残らなそうだとのことだったので、ひとまず安心した。

 現れた守護者は、幸い先程の赤毛の魔物だったので、安心した。私のせいで、特殊な守護者と当たって苦戦したなんて聞いたら、後味悪かったしね。


 今回は、爪の他、皮も剥いでいた。

 九重さん曰く、本来なら傷の少ない私が倒した守護者の皮が良かったらしいが、戦闘前に疲れる作業もさせる訳にも行かないので、今回のを持ち帰るとの事でした。

 血抜きを行い、丁寧に皮を剥ぎ、余計な脂や肉を削ぎ落すと、生活魔法の『浄化』を使って綺麗にすると、塩を刷り込んで同じく生活魔法の『送風』で軽く乾かして、塩を刷り込んだ面を内側にして畳んでいた。


 防具だけでなく、状態の良い物は、貴族の屋敷の飾りにも使われるらしく、結構高値で取引されるそうだ。

 その後は、何事もなく無事に迷宮から外に出て、私の始めての迷宮探索は、ちょっとした面倒事はあったが、無事に終わったのでした。


 そして、私達を襲ったのは、最近、別の迷宮からやって来た一門の徒党という事はわかったのですが、その徒党員は、迷宮に入った後、すぐに一門の取り決めを破ったため、破門の処理がされていたらしく。

 その一門と『光陰星霜』は金銭的賠償だけで、表向きは話がついたそうです。

 表向きと言うのは、その後また一悶着があったためですが、それはまた別の機会に。

次回のあらすじ

 茜は、迷宮探検を終えて、街での日々を過ごしていました。ある日お妙ちゃんとの会話の中で次の錬金術で試したい事を思いついたのですが。

 次回 第30話 春に祭典を 1、是非読んでください。

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