26 茜の迷宮探検記 3
私達の実力を見せた後、今度は、『光陰星霜』の徒党の方が私達に替わり、魔物の相手をし、進むことになりました。
今回の徒党は、十層攻略のための組んだ徒党らしく。
普段は、男性四人は固定で七層入口辺りまでの魔物を狩って、狩りをしないときは、一門衆の屋敷の掃除などをして生活をしているそうです。
女性陣は、他の女性の徒党が九層までの魔物の素材回収の依頼の時だけ徒党に入れて貰ったりして、普段は薬草採集で生活をしているとの事でした。
それでも、六人の動きは大した者で、即席の徒党とは思えない動きで敵を屠って行いきました。
まぁ、元々は彼らの為の第十層攻略なので、実力的にも当然だよね。
そうして、私達は無事に第四層を攻略を終え、初日の野営をすることになりました。
男性用と女性用の簡易式の天幕を設営して、この階層の魔物は火を使うと近寄ってこないこともあり、今日の焚火のため、地上から持ってきた薪を使い調理も行うことになった。
今日は、お昼も握り飯だったので、まともな食事は今日までとの事、明日からは、調理に火が使えなくなるため、保存食だけになるらしい。
まぁ、今日の夕飯も干し飯と乾燥野菜、煮干し粉を混ぜた雑炊と今日私達が最初に仕留めた猪型の魔物の串焼きに塩を振っただけの料理だけなので、いつもよりは質素だったのですが、これでも迷宮の中ではご馳走との事でした。
私達は、気を使わないで済むようにと女性陣と男性陣を分けて食事をすることになりました。
「へぇ、茜さんは、漂着者なのですか?」
「ええ、そうです。まだ、こっちに慣れていないので、変なことをしたら指摘してくださいね。」
「はい。こっちも向こうの事色々教えてください。茜さんは、狐人ですよね?向こうの世界にもいるのですね。」
「いや、居ないよ。普通の人ばっかだたよ。」
「えっ、では、なぜ狐人なのです?」
「そうですよ。おかしくないですか?」
「知り合いには、こっちに来た時たまたま近くにいた波長の合う人が狐人で、魔力がこっちに持ってこられた時、その体を私の魔力が読み込んで私の体を再構成したからだと言われたけど、本当のことはよくわかんないです。」
「難しい言葉でよくわからないや。あはは。」
「私も、行っていることの半分くらいしか理解できないです。」
「難しいかった?簡単に説明したつもりだけど。お妙ちゃんはわかったよね?」
「えーと、茜さんは、魔力と魂だけこっちに来たけど、それだけだと魂が維持できないから体を作ろうとして、近くにいた狐人さんの体を写して作ったってことでしょうか?」
「だいたいそんな感じかな。分かったかな?」
「なるほど、では、顔とかもあっちにいた時と違ったりしているのですか?」
「顔は向こうの時と変わらないかな。耳だけは違うけど。」
「では、なんで体だけ、狐人さんのを使たのでしょう?」
「そうよね。顔は向こうの時の姿に出来たなら、体だってねぇ。」
「うーん、たぶんこっちの世界で問題なく生きられるように、現地人の体を参考にしたのかな?」
「そうなんだー。あと、食べ物とかも漂着者が作り出した料理がこっちに結構あるけど、茜さんも何か作れるの?」
こんな調子で、私が漂着者と知って、色々質問攻めに会いながらも楽しく食事をとりました。
夜の見張り番は、今夜は、迷宮攻略の六人だけで行うことになりました。
私達も攻略に参加することになっているので、見張りに参加しようとしたのですが、初めての迷宮での野営だから、体を慣らす意味でも、今日はしっかり休むよう九重さんに言われ、大人しく休む事にしたのでした。
引率者の指示には従います。はい。
最初は、女性陣が見張りに着いたこともあり、私とお妙ちゃんは、初めての迷宮攻略の疲れもあってか早々と眠りに就いてしまいました。
そして私は起きたのも一番最後でした。
うーん、堅い地面に寝たせいもあって、体が痛い、柔らかな布団が欲しいね。
うん、大量に荷物が運べるラノベの定番アイテムボックスが欲しいね。錬金書庫に似たようなのでいいからないかな。後で調べてみよう。
「茜さん、おはようございます。ご飯の用意が出来たので起こしに来たところです。これで顔を拭いたら、来てくださいね。」
私が、上半身を起こし、体をほぐしていると、お妙ちゃんがそう言って、天幕に入って来た。
「おはよう。どうもありがとう。お妙ちゃんはちゃんと寝られた?」
私は、お妙ちゃんから手拭いを受け取ると、挨拶を返してお礼を言い、そう尋ねた。
「村では、綿も入っていないような堅い布団で寝てましたから、これくらいは平気です。むしろお政さんの所の柔らかな布団に中々慣れなかったくらいです。」
「逞しいね。私は、もうダメだよ。助けてお妙ちゃん。」
私がそう言って、お妙ちゃんに抱き着こうとするのを軽く躱し、お妙ちゃんは、こう言い残して、天幕から出て行った。
「何、ふざけているのです。先に行って待ってますから、支度してきてくださいね。」
半分本気だったのだけど、仕方がないさっさと身綺麗にしてみんなと合流しますか。
朝食は、納豆と梅干、干し飯を水で戻した物と胡桃柚餅子が用意されていました。
納豆や梅干等と翻訳されていますが、見た目はちょっと違います。例えば、梅干は、しょぱさこそ梅干しですが、実がツルツルの丸い見た目ですし、納豆は10cmくらいある豆の粒をひきわりにしてあります。美味しいんだけどね。そんな言葉と見た目の不一致が時々あるので、こっちに来て、かなり経つけどまだ戸惑います。
もちろん、見た目の変わらない食べ物もあります。お米とかは見た目変わりません。食味も少しパサついてますが、ほのかな甘みもあり、私の好きな味で美味しいです。
柚餅子は甘い物を所望した女性陣の要望との事でした。結構値段の張る物らしいですが、九重さんが奮発して下さったようです。
現地の女性陣は、滅多に食べれない甘い物という事で喜んで食べていました。私には、甘み自体は物足りない物でしたが、子供の頃食べて以来、久しぶりに味わったので、懐かしい味でした。
この日は、『光陰星霜』の六人と私達も交えての戦闘と言う形で進むことになったのですが、流石に八人もいると狭いので、私と向こうの魔法使いさんが交互に戦闘に加わり、前衛四人とお妙ちゃんが三人づつで入れ替わり、戦闘を行う形になりました。
お妙ちゃんは、最初は私達の護衛役と言う位置取りのはずたっだのですが、本人の希望により、前衛に回っての戦闘となりました。それでも、本人が志願しただけのことはあり、男性陣に負けないくらいの動きで戦闘に参加していました。どこを目指しているのお妙ちゃん。
そんなこんなで順調に進み、第7層の半ば辺りまで到達しました。
今日の夕飯は、生活魔法の火で軽く焙った魚の干物と乾燥野菜の味噌汁、水気のない堅いパンというかビスケットというかそんな物でした。うん、本当に質素になって行くね。乾燥したパンが口の中の水分を奪っていきます。
今夜の見張りも、六人が行ってくれることになりました。
今日の朝は起きられなかったし、私は素直に任せて、休ませて貰いました。
一方、お妙ちゃんは、手伝う気満々だったみたいだけど、私が大人しく引き下がったのを見て、私に合わせてくれました。うん、本当に見かけによらず逞しいよ。
次の日、私の今回の目的でもある紫アメナメクジの生息域に入るという事なので、頑張っていきましょう。
うん、アメフラシだよねこれ、ナメクジじゃないよね。しかも、猪の魔物の三倍くらいデカいし、気持ち悪い見た目だし。
私達が探索を開始して、最初に紫アメナメクジに出会った感想が、上記の物だった。
九重さんの話だと、紫アメナメクジは魔物なのに探索者に襲い掛かってこないうえ、動きも遅いので回避しやすいので、あまり積極的に狩られる魔物でないとの事でした。
実際に、九重さんも倒したことはないそうです。
でも、今回は薬の材料とするため、狩らせて貰います。ただ、今回使う部位は、腸なのでなるべく内臓を傷つけないように倒そうという事で、魔法で牽制攻撃をして相手の注意をそらしつつ、前衛の皆さんが、頭部を中心に攻撃を加え、倒すと言う段取りになっていたのです。
それが、相手は逃げるばかりで、魔法の攻撃の巨大な体を止めるまでに至っていません。前衛の皆さんも必死に回り込んで相手の頭を押さえて動きを止めようと頑張っていますが、巧みに紫アメナメクジもそれを回避しています。
剣や槍による攻撃も相手の体液と柔らかな体の前にいまいち決定打を浴びせられずにいます。
これは、面倒な敵だね。何かいい魔法が無いかな?私がそんなことを考えていると、今まで手を出さずに見ていた九重さんが、紫アメナメクジに近づいて行った。
そして、風魔法を近距離で放つ。風魔法によって紫アメナメクジの体は押しつぶされるように凹む。そこに九重さんは、小太刀を突き刺した。相手の体がある程度伸びきった状態になっているため、小太刀は綺麗に紫アメナメクジに突き刺さる。
紫アメナメクジは、それを嫌がるように体を捻じらせ逃げようとする。
九重さんは、相手の逃げようとする力も利用し、小太刀の刃を相手の動きと逆方向に走らせ傷口を広げていく。
その広がった傷口に他の人達が、次々に武器を突き立てて深手を負わしていく。そして、ついに紫アメナメクジを大地に寝かしつけたのだった。
「よし。では、慎重に内臓を引きづり出して、腸を洗浄しろ。茜殿は、今のうちに錬金釜の準備をしておけ。」
紫アメナメクジを倒すと、九重さんは、すぐにそう指示を出す。
解体に参加しようとしていた私も、その指示を聞いて、慌てて小型の携帯錬金釜の準備を始める。そうだった、ここからは時間との勝負、すぐに錬金術を使えるように準備をしなくちゃいけなかったんだわ。
小型の魔導コンロと一体になった錬金釜を起動させ、錬金生成素材という液体といくつかの薬草を用意する。
「茜さん、腸はこれで大丈夫でしょうか?」
私の錬金釜の準備が整た頃、『光陰星霜』の薬師の子がそう言って、洗浄した腸を持って来てくれた。
私は、お政さんから借りた鑑定魔道具で、部位と状態等を確認する。
名称 紫アメナメクジの腸 区分:薬材 価値:銅貨8枚 品質:優
ええ、苦労して採集した割に価値が低すぎ……。でも、状態は問題ないね。
「ありがとうね。うん、とてもいい状態だよ。では、早速錬金術で作りますか。」
「あの、私も見てていいですか?錬金術で薬を作るとこ見てみたいので!」
「いいけど、地味だし、つまらないよ。」
「ありがとうございます。つまらないことなんてありませんよ。薬師以外が作る薬の作成方法を見てみたいのです。」
「では、始めるね。」
私は、そう言うと生活魔法で作り出した水を沸かしている錬金釜に錬金生成素材を投入、続いて薬草をすり潰して乾燥させた粉状の物を投入、最後に今回手に入れた紫アメナメクジの腸をぶつ切りにして投入する。なんか乱暴だけどいいのかな?
そして、魔力を込めながら、掻き混ぜて錬成っと。すると抽出や乾燥と言った工程が錬金釜の中で行われ、乾燥した粉状の物が出来上がった。
よしよし、完成。さて、薬のの出来はどうかな?再び鑑定の魔道具を使ってみる。
名称 感覚強化紛薬(錬金術製)百包分 区分:薬品 価値:一包分銅貨3枚 品質:優
「よし、完成。」
「えっ、もう出来上がりですか?」
まぁ、驚くのも無理ないよね。五分もかかっていないからね。
驚いている薬師の女の子に鑑定の魔道具を渡してあげる。女の子は、それを受け取り、錬金釜の中を覗き込んでいる。
「本当だ。薬になっている。すごく便利ですね錬金術って。」
「でしょう。でも、このままじゃ、苦いから、後で丹薬か丸薬にしないとだけどね。」
そんな話をしていると、九重さんと、斥候の男の子、獣人の男の子がこちらに近づいて来た。
「茜殿、成功したか?」
「ええ、取り合えずまだ一回分しか錬成していないけど。」
私は、サキちゃんのお母さんと他の二人の分を六か月分とちょっと作ろうと考えていたので、そう答えました。
「その薬、いくつか分けて貰えるか?」
「少し余分い作るつもりでしたから、いいですけど、どうしたのです。」
「勘違いならいいのだが、誰かにつけられている可能性があってな。鼻の利く獣人にちょっと使って貰い、警戒を強めようという訳だ。まぁ、つけられているのが気のせいという事もあるがな。」
なんか穏やかじゃないですね。まぁ危険回避の為なら、喜んで協力します。そういう訳で、薬を分けてあげましたが、そのまま飲むとすごく苦いですよと忠告したら、獣人の子すごく嫌そうにしてました。
まぁ、味覚も敏感だろうし、それに薬を飲むとその感覚も強化されるから、大変だろうからね。そこで、薬師の子にどうにかできないか話したら、飲み込み易いようにいくつか丸薬にしてくれるという事だったので、加工を頼みました。よかったね獣人君。
私が残りの分を錬成して薬に変えている間に、薬師の女の子は、感覚強化薬を何かと混ぜて、丸薬にしていました。聞けば、薬の効果に影響を与えない物で出来ている練りものだそうです。
でも、紫アメナメクジの腸、薬草と混ぜて乾燥させるのだから、生活魔法で乾燥させて外に運び出してという方法じゃダメなのかな?傷みやすいとか放っておくと毒素が出るとかあるのだろうか?
試してみよう。私は、余った腸を生活魔法で乾燥させて、鑑定魔道具で確かめてみた。
名称 乾燥した紫アメナメクジの一部 区分:ごみ 価値:無価値 品質:劣悪
うん、やっぱり駄目なのね。でも、ここまで潜って、これを内臓を傷つけずに苦労して倒す手間を考えると、商売としてこの薬を作って売るのは現実的でないね。
次回のあらすじ
茜達は、迷宮探索の最中、何者かにつけられているようでした。野営中も念の為、襲撃に備えることにしたのですが。
次回 第27話 茜の迷宮探検記 4、是非読んでください。
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