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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
25/77

25 茜の迷宮探検記 2

今回、一部、血生臭い表現がありますので、注意願います。

 そんなこんなを迷宮行きが決まってから、慌ただしく過ごし、ついに迷宮行き前日の夜になりました。


 「いよいよ、明日だね、楽しみだよ。」


 「そうですか?茜さん、私は、不安の方が大きいです。大丈夫でしょうか?」


 「あたしゃ、妙の心配はないけど、茜の方が心配だね。」


 「そうだな。茜は、便利さに慣れ過ぎているからな。」


 おや、『光陰星霜』にここ数日泊まり込みをしていて、久しぶりに戻って来た九重さんがなんか不安になるようなことを言ってますよ。


 「どういうことです?」


 「うん、迷宮内は便利な魔道具等ないし、風呂も入れないし、睡眠も交代で見張りをしながらだしな。そんな不便な生活に果たして耐えれるかと思ってな。」


 そうですね。キャンプやバーべキューとかすると今まで当たり前のことができなかったりするのと同じか。でも、元は田舎の人間そこまで文明に染まり切っていないはず。


 「確かに、ここに来て不便を解消しようと魔道具とか買っていますが、あれば便利だから揃えてるだけで、なければないでやって行けると思いますよ。」


 「本当かね。まぁ、年寄りのあたしは、今更不便な思いをしたくなくて、茜に任せたのだから、余り人に言えた立場にはないがね。」


 「高校の時友達と泊りでキャンプも経験しているので、大丈夫ですよ。ただ、一週間近い長丁場と言うのは不安ですけどね。」


 「高校やキャンプてのがなんだかわからないけど、まぁ、頑張りな。」


 「しかし、茜さん達が迷宮に潜るとここも静かになっちまうな。」


 竜馬さんが、私達のやり取りを聞きながら、しみじみとそう言ってきた。


 「やだな、ちょっと迷宮に潜って、すぐに戻って来るから、そんなこと言わないでください。」


 「そうだよ鳳屋、元はあたしと二人だけだったろ。そん時はここは落ち着いてて、いいって言ってくれてたじゃないかい。」


 「そりゃ、そうだったけど、こうして賑やかなのもいいかなと。」


 「まぁ、いいさ。今日は精々楽しんで、明日からの迷宮探索に備えな。」 





 翌朝、荷物を持った私達を、店先でお政さんと竜馬さんが見送ってくれた。


 「それじゃ、気を付けて行っておいで。九重の旦那、後は頼みましたよ。」


 「「うん(はい)、行ってきます。」」


 「ああ、任せておけ、行ってくる。」


 「茜さんもお妙さんも探索者の若いのにいいのが居たら、唾つけとけよ。」


 「えー。」


 「いえ、もっと堅い仕事の人を選びますよ。」


 竜馬さんのいきなりな言葉に私は言葉にならない声で答え、お妙ちゃんは、以外にも現実的な回答で返したのでしたが、竜馬さんは、それを聞き揶揄い半分に九重さんに言葉を向けました。


 「ほれ、九重の旦那、なんか言われてますよ。」


 「あ、えっ、そんなつもりで言ったわけでは、ごめんなさい。」


 そうでした。普段は迷宮の話をしないのであまり意識してなかったのですが、九重さんは今は探索者として活動をしているのでした。お妙ちゃんもそれに気付き、しどろもどろで何か言ってますが、そこは毅然と流しといたほうがいいのに。


 「もう、竜馬さん、揶揄ってちゃいけませんよ。九重さんも、お妙ちゃんも行きましょう。約束の刻限に遅れますよ。」


 「そうだな。では行くか。」


 九重さんが、そう言って歩みを進めたので、私とお妙ちゃんは、お政さんと竜馬さんに手を振りながら、その後を追ったのでした。




 迷宮の前に着くと、既に『光陰星霜』の一門衆人達は到着していました。お互い簡単に自己紹介を済ませると、隊列などの割り振りを行い、迷宮に入ることになりました。

 と言っても、第3層までは、採集のための階層なので、お互い雑談をしながら、親睦を深めつつ進みました。


 『光陰星霜』の若ての徒党は、六人で男性が四人、女性が二人で、男性のうち一人が獣人。

 職業の振り分けは、男性三人がいわゆる前衛職、残り一人が弓と索敵、罠の解除などの担当、女性の一人は魔法使いで、もう一人は薬師兼魔法使いの護衛役とのことでした。


 六人は、故郷もばらばらで、村に居ても食い扶持がなく、店に奉公に出るよりは危険だが、実入りはよくなる探索者になるため、『光陰星霜』で下働きや訓練、実戦を積んできたそうです。

 九重さんの指導により、最近は剣や槍などの武器の扱いに自信もついたこともあり、九重さんを皆、師匠呼んで敬ってました。


 一応、今回の第十層を攻略すると一人前と認められ、やっと探索一本で食べて行けるようになるらしいです。

 間もなく第四層に辿り着く頃、九重さんから、『光陰星霜』の徒党の党員達は常に一緒に潜っているので、お互いの実力を把握しているし、九重さんも把握しているが、今回手伝いで潜ることになった私達の実力はわかっていないので、そこで第四層の魔物を何回か私とお妙ちゃんだけで倒してみないかと提案を受けました。


 一度に遭遇する魔物の数は、多くて三体との事です。私は、遠くから魔法でばーんだけど、お妙ちゃんは大丈夫かな?

 私は、心配で、お妙ちゃんに目を向けましたが、以外にもお妙ちゃんはやる気ですんなりと、九重さんの提案を受ける事になりました。もちろん、危なくなったら九重さんが助けてくれるとの事なので、取り合えず安心です。


 そして、第四層に辿り着くと今までの草原の風景からは一転して、魔法による明るさなのか、薄明るく光る石組みの通路になっていました。昔、お兄ちゃんが遊んでいたRPGゲームのような雰囲気だね。


 お妙ちゃんと軽く打ち合わせをして、敵が一匹なら、私が魔法で仕掛けて、仕留めきれなかったら、お妙ちゃんが仕留める。二匹以上なら、多重詠唱魔法で私が一体を確実に仕留める。その後間に合えばもう一度魔法を撃ち込む。無理ならお妙ちゃんに強化魔法を飛ばす。と言うと事で試しに動いてみることにしました。


 九重さんの試験の際の説明では、この辺りの魔物は、苦手な属性等ないとの事だったので、私は、魔力消費、発動速度に優れている無属性魔法で戦うことにした。

 私は、探査魔法を飛ばし、周囲の状況を探る。地図で反応のあった位置を確認し、第5層へ向かう途中の通路にいる敵に仕掛けることにする。


 この階層は、罠がないとの事なので、お妙ちゃんに、進む方向を伝え、敵の数が1体とその反応のあった大まかな位置を伝えた。

 しばらく、私の指示通り進んでいたお妙ちゃんが、歩みを止め、私に進行方向から何かが近づいて来たことを伝えて来た。


 私は、魔力弾と呼ばれる魔力を敵に撃ち込む魔法を準備し、敵がこちらに気付き向かってきた所にそれを叩き込んだ。相手の魔物は、私の腰の高さほどある猪型の魔物だ。それが、私達を見つけるなり、ものすごい勢いで真っすぐこちらに駆け出してきたため、私の魔力弾を避けることができず、正面から受けてくれた。

 しかも、一撃で仕留める事こそできなかったが、当たり所が良かったのか、意識を失って倒れたため、危なげなくお妙ちゃんが首元に一撃を入れ、止めを刺すことができた。


 「茜さん、やりましたよ。」


 相手の息の根が止まったのを確認し、お妙ちゃんが、嬉しそうに私にそう報告してきた。


 「うん、上手く決まったね。初めてにしては上出来だね。」


 相手と対峙した恐怖はあったが、魔法で長距離から攻撃を加えるだけの役割だった為、混乱したりといった取り乱すようなことはなかった。それでも、戦闘が終わるころには全身から変な汗が出ていた。

 その点、お妙ちゃんは、あんな大きいのが向かってくる中、動じずに槍を構えて立ち向かえてたし、倒れた瞬間には距離を詰めて的確に一撃で仕留められるなんて凄いよ。


 「よし、それは今日の夕飯に使うから、この人数だ後ろ足一本を削ぎ落して、魔石だけ回収しろ。」


 それを見ていた九重さんから、そう指示が飛んできた。うえ、死体に刃物を入れるのか。できるかな?でも、綺麗に解体して毛皮を取ったりしなくていいのかな?聞いてみよう。


 「わかりました。でも、解体を習ったのに毛皮を持ち帰らなくていいのです?」


 「ああ、第十層まで行って帰ってくる間に皮やこびりついている肉が腐って使い物にならなくなるからな。行きに仕留めたのは魔石の回収と迷宮内で食料として消費する分だけでいい。後足を削ぐ際、足の筋を切って血抜きを忘れるな。」


 なるほど、確かに、まだ一週間以上迷宮にいる予定だから、冷蔵庫もないし腐っちゃうね。


 「さて、お妙ちゃん、魔石を取り出そう。えーとお腹を割いて、心臓の辺りにある魔石を取り出すのだっけ?できるかな?」


 「大丈夫です?私がやりましょうか?」


 「いえ、ここで引き下がっちゃ、女が廃る。言い出しっぺの私がまっずはやらないと。」


 そう言って、九重さんに買って貰った解体用の刃物を取り出し、猪型の魔物のお腹に刃を当てる。解体の為、添えた手から、まだ温かみがあるうえ、柔らかく弾力のある感覚が伝わる。

 やっぱ抵抗があるよね。こういうの、でも、ええいままよ。

 覚悟を決め、刃を突き刺す。そして刃物に力を入れ切り開く。うわぁ、やっぱだめだ。内臓の重みで切り開かれた色鮮やかな内部を見て、吐き気を催し、思わず後ろに下がってしまった。


 「ごめん。やっぱ無理。」


 私が、そう言って、へこたれてしまった。


 「では、私がやります。」


 それを見ていた、お妙ちゃんが、そう言って、私に代わって刃物を動かし始めた。

 手つきはおぼつかないが、それでも順調に刃物を動かし、魔石を取り出した。


 「これが魔石ですよね?」


 「ああ、それが魔石だ。」


 九重さんは、そう言った後、お妙ちゃんの魔石と手に着いた血を浄化の魔法で綺麗にしてあげてました。


 「すごいね。でも、お妙ちゃんは平気なの?」


 私は、魔法で綺麗になった魔石を興味深げに覗き込んでいるお妙ちゃんにそう尋ねた。


 「うーん、平気と聞かれれば、あまり平気じゃないですけど、村で畑を荒らす猪や鹿が罠にかかった時、村総出で解体しますから、作業自体は初めてですけど、生き物の解体は、全く見たことないわけではないので、これくらいなら大丈夫です。」


 うん、私も田舎暮らしだったけど、害獣の駆除風景なんて見たことないよ。では、気を取り直して頑張って後ろ脚を解体をしてみるよ。いつまでもこの世界のお客さんでいるつもりはないからね。


 「そうなんだ。では、次は、後ろ足の削ぎ取りだね。今度こそ私が。」


 そう意気込んで足を切り落とすため、お妙ちゃんが使っていた私の刃物を返して貰おうとしたが、お妙ちゃんは、こう言って、刃物を返さずに踵を返しそのまま後足を関節に合わせて切り離す作業に取り掛かったのでした。


 「いえ、また気分を悪くされるといけないので私がやります。」


 先程は、見慣れない内臓を見たから、弱っちゃっただけで、脚の肉とかなら、多分大丈夫だと思うよ。

 でも、私を心配してくれて解体をしてくれているお妙ちゃんに、万が一、また気持ち悪うくなっちゃうと同行している『光陰星霜』の皆さんにも迷惑掛かっちゃうので、ここは大人しくありがたく任させたのでした。

 ありがとう、お妙ちゃん。


 その後も、数回、魔物と戦ったが、戦闘はすべて危なげなく対処出来ました。お妙ちゃんも本当に度胸があり、魔物の突進に臆することなく、向かっていき相手をかわしながら、舞を舞う様に綺麗な動いで礫を倒していました。

 また、あれ以降の魔石の回収も『光陰星霜』の方が手伝ってくださり、無事に私は解体に参加せずに済みました。 




次回のあらすじ


 茜は、錬金薬を造るための目的階層に辿り着き、なんとか目的の魔物を狩り、薬の作成に成功するのですが、思わぬ困難に巻き込まれるのでした。

 次回 第26話 茜の迷宮探検記 3、是非読んでください。

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