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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
23/77

23 星の細工は誰の物 6

 翌日、丹兵衛さんとの話しの内容を惣弥さんに伝えるため、工房に向かいました。

 今日は、納品日でないので金剛石は数こそ用意出来ていないけどついでなので持っていくことにしました。

 それと今日の付き添いは、丹兵衛さんとの話し合いの結果を伝え、了承を貰うという事もあり、お政さんがその話し合いに参加するために、申し出てくれました。

 今回の話を昨日知った竜馬さんも同行を願い出てくれたのですが、まだ騒ぎにもなっていないし、余り大げさに動くのもあれなので、今回は丁重に断りました。


 でも、お政さんは、今でこそ店の店主ですが、迷宮にも潜っていただけあって、魔法だけでなく、無手での立ち回りもそれなりに出来るそうですので、竜馬さんも大人しく引き下がってくれました。

 まぁ、普段も付き添っていたのは、別に今までは金剛石を持ち歩く危険を考えていなかったので、お妙ちゃんだったので、それでも十分な護衛の強化なのですけど。

 街中という事もあり当然というか、問題なく惣弥さんの工房に着きました。サキちゃんのお母様に、訪れることを伝えて貰っていたので、すぐに惣弥さんに取次で貰えました。

 今回の金剛石を渡し、前回の分と合わせて、お金を頂いて、私とお政さんで、錬金座の一件について惣弥さんに話をしました。


 「こっちは、あれから何度か悶着があったが、鳴りを潜めたので、諦めたのかと思ってましたが、そちらに迷惑が掛かってましたのですね。すみません。」


 私達の話を聞いて、惣弥さんはそう言って謝って来た。


 「お前さんが謝ることじゃないから、気になさんな。」


 「そうですよ。」


 「それで、茜が金剛石を納めているのが判って、何かあっちゃまずいのでね。

 こっちの錬金座と相談して、金剛石を造るための人を新たに雇い入れ、今までの分については、惣弥さんに納めて、それ以外の分を金細工座の飾り問屋に納めようと考えたのだがね。」


 「そんな、茜さんとの覚書はどうなるんで?」


 「それなんだが、今の金剛石の覚書には、茜が作った分やそれ以外の取り決めが、そもそも茜が作るのだけを売るつもりだったので書いてない。だが、今はそちらも知ってのとおり、手の空いた錬金術師にも作って貰ってるのも渡しているから、こっちで決めた取り決めを一方的に伝えるのも不義理だと思って、話し合いに来たわけだよ。」


 「そう言う訳です。惣弥さんどうでしょう?」


 「どうも、こうもありますか。元々私と茜さんの間で交わした取引に、座の連中が割り込んできたのですよ。なんで、連中の顔を立てないといけない。」


 「そう言うがね。連中がもし暴発でもして茜が襲われでもしたら、あたしは使用人を守るためにも金剛石を金輪際作らせないよ。

 それにお前さんの所にも守らなきゃならない者もいるだろ。

 そっちにだって危害があるかもしれないんだよ。意固地になって、大切な者を失うのもどうかと思うよ。」


 「でも、それでも連中が、今回の件で味を占めて要求を釣り上げてきたらどうするのです。一歩引いて全部取られるなんてことになったら、最初に許した自分の判断を恨むことになりそうで。」


 「あー、そう言う事もあるのか。そんなことになったらどうしましょう?」


 「茜の為にあたしは話しているんだけどね。そのお前が、向こうの言い分に流されてどうするよ。」


 うん、そうでした私が当事者なのにここはびしっと説き伏せないといけないとこでした。よく考えて喋りましょう。反省です。お政さんに頼ってちゃいけないよね。私が頑張って話を引き継ぎます。


 「そうでした。えーと、金剛石を造るのは私達錬金術師です。そして、綺麗に磨いた物を作れるのは今のところ、この街の錬金術師だけです。なので、私達が優位に立っているのです。

 向こうが過ぎた要求をしてくれば、その時は、今度はこっちが強固な態度に出ますよ。

 あっちも一度金剛石を使って細工を作ってしまえば、今度はそれが手に入れられなくなるとなれば、金細工座の他の職人も座長の言葉に従わなくなるでしょうしね。どうです?」


 「それでも、他の職人も同じような飾りを作れるようになると今までのようには、売れなくなるという心配もありますし…。」


 「それは、甘えです。今までも他の細工物は他の職人と切磋琢磨して、良い物を作り上げて来ていたでしょ。金剛石の細工もそうやって他の職人と競って行けばいいのですよ。

 いえ、むしろそうするべきだと思いませんか。」


 「茜、いい事も言えるんだね。感心したよ。まぁ、錬金座も儲けになるから、今回は不承不承ふしょうぶしょうでも金細工座の話に乗ってる訳だ。無理な話をされれば、こっちだって黙っちゃいないよ。そこは信用して欲しいね。惣弥さん。」


 「確かに先程の言葉は職人らしくありませんでした。他の職人と同じ土俵で戦わないとですよね。実は親父、いや、工房長からも工房の他の者にも金剛石を触らせて作らせろと言われているのでした。まだ自分でも色々試したいと言って、それを断っていたのですが。そこにこれを独占したいと言った内向きな思いもあったのかもしれません。わかりました。その話、承諾しましょう。」


 「ありがとうございます。」


 「いえ、こちらこそ、座長の理不尽さに目が行き過ぎて、職人としての在り様まで考えが及びませんでした。もっと、この街の職人と競っていい物を作っていきたいと思います。」


 「いい心意気だね。いっそのこと惣弥さんが座長の座に収まっちゃえば。」


 「そんな器量はありませんて、本当に。」


 「話がまとまってよかったよ。惣弥さんも、茜も、悪いようにはしないから、あたしと錬金座の丹兵衛に任せておいて欲しい。とだけは、言っておくよ。」


 「うん?よくわからないけど任せますよ。」


 お政さんは、なんか悪いことでも考えてるのかな?まぁ、本当にいけないことはしないでしょ。よくわからないけどそう考え、にこやかに、そう相槌を打っておきましょう。


 「はぁ、茜は、話が見えてるのだか、見えてないのだか、わからないね。では、お邪魔したね。」


 お政さんは、私の言動が気に入らなかったのか、そうため息をつきながら、惣弥さんに挨拶を済まし、退席をしました。

 そうして、私達は、工房から出て、惣弥さんから即決を頂いたので、その足で再び錬金座に向かう事になりました。




 「昨日の今日で早速、気なすったのかい。その茜さんの表情を見ると上手く話がついたようだね。」


 「丹兵衛さん、わかりますか?えへへ。」


 「それでは、こっちも仕込みを始めるかね。その後、会合で承諾を得れて、王都であぶれている錬金術師見習いを連れて来る。そこで茜さんに指導をして貰って、何だかんだで、軌道に乗るまで三カ月は掛かるかな。」


 「王都には錬金術師があぶれてるのです?」


 「王都は人が多いという事もあって、雇入れる人には困らない所だよ。まぁ、弟子を取ったはいいが、独り立ちさせたくても座に空きがなく、見習い扱いの人があぶれているんだよ。だから声を掛ければすぐに人は集まる訳さ。」


 「へぇー、王都は栄えて居そうですね。私も何時は王都に行ってみたいな。」


 「行くのはいいが、住むには向かないよ。錬金術師の仕事ができないからね。ははっは。」


 「そうか。他のことをするにも座に入れて貰わないとだし、大変そうだね。」


 「そう言う事だ。お政も茜さんを止めるよう、話をしておきなさいな。」


 「あたしは、茜が望むとおりにさせてやるよ。こんな所の錬金術師で終わるのもいいし、新たな事をするのもいいしさ。」


 「おや、せっかく取った弟子がいなくなってもいいのかい?」


 「そしたら、また育てりゃいいんだしね。」


 「そうかい。話の分かる師匠でよかったな。そのつもりだから、見習いで留め置かず、お前の師匠の席をさっさと譲った訳かい。」


 「うるさいよ。金剛石のことをさっさと済ませようじゃないか。」


 「そうだな。まぁ立ち話もなんだ中でもう少し色々話そうか。」



 それから、金剛石の売買に関する細かい取り決め等細かなことを話し合いました。

 金細工座との交渉は、丹兵衛さんが独りで引き受けてくれることになりました。私が顔を出して、小娘が相手と侮られると面倒になるし、仲介者の丹兵衛さんだけの方が、向こうもごね難いので、すんなり話が進むのではないかという事でした。


 小娘と侮ったら、最後まで争ってやるくらいの気積もりで、相手の顔を見てやりたいので出席しようとも考えたのですが、顔を知られると色々怖そうなので、大人しく任せることにしました。

 荒事は出来るだけ避けたいしね。


 そんな訳で、交渉を買って出てくれた丹兵衛さん、ありがとうございます。

 後、肝心の私の錬金術師からの金剛石で得た利益から取り分は三割、丹兵衛さんが住込みで、錬金釜、材料等を暫く見るという事で二割を得ると言う事になりました。

 結構、取ってしまってやりがい搾取にならないかなと心配したのですが、お政さんに私のお給金とか考えれば十分破格な扱いなのだと言われ、まぁそう言われると納得するのでした。


 ただ、今後お金を貯めて、独立すれば丹兵衛さんへの払いはなくなるけど、自分で金銭管理や何やらしなければならなくなるので、お政さんは、どっちがいいかは悩ましいとこだねぇ、と言ってました。

 確かに、私も雇われの身で気楽だから、帳面付けや得意先との交渉も率先してやったりしてないし、家やお店の家賃とかいろいろ悩まずにすんでいるし、その時間を自分の儲けの為色々試めすのに使えると考えるとその言葉に納得するのでした。


 この話の最後に、金細工座の今の座長とその取り巻きについてですが、今回の件で色々と好き勝手に動き回ったせいで、この街の座を取り纏めている偉い人達に睨まれたらしく、別件で働いていた不正を色々暴かれて、座長は別の人に譲ることになったうえ、迷宮探題府の町方の裁判所に相当する問注所に差し出されたようです。


 そして、どうやらこの顛末は、お政さんと丹兵衛さんが裏で動いた結果らしいのですが、何をしたかまでは、私は気になりしつこく聞いたのですが、教えてくれませんでした。




次回のあらすじ


 茜は、金剛石造りを一段落させ、店で日常の一時を過ごしていたが、お政との話の中、仕事で迷宮に潜ることになるのでした。

次回 第24話 茜の迷宮探検記 1、是非読んでください。

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