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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
22/77

22 星の細工は誰の物 5

 それから、暫くは平穏に店の手伝いと金剛石作成で体を忙しく動かしていました。


 「失礼します。茜さんにお客さんです。」


 店番をしていたお妙ちゃんがそう言って、錬金部屋に入って来ました。

 おや、私にお客さん?お妙ちゃんの他人行儀な口ぶりから、私の知っている人でないみたいだけど?


 「誰が訪ねてきたの?」


 「何でも、錬金座の方だそうです。一緒に錬金座に来て欲しいとのことです。」


 「ほう、もう動いて来たのかい。私と茜は錬金座にちょっと行ってくるから、留守を頼むよ、妙。それと鳳屋か九重の旦那が戻って、私らが錬金座から戻っていないようなら、こっちに来てもらうよう伝言を頼むよ。」


 一緒に隣で作業していたお政さんは、錬金座と聞いて、そうお妙さんに伝え、席を立ちました。


 「はい。」


 お妙ちゃんも、そう言って送り出す支度をするため、店の方に戻って行きました。

 まぁ、お政さんも付いて行ってくれるみたいだし、私も向かう準備をしますか。

 しかし、竜馬さんや九重さんも来る様に伝えるって、危ないことになるのかな?

 準備を整えると、私は出かける前にお妙ちゃんに一声掛けて、錬金座に向かったのでした。


 「では、行ってくるよ。お妙ちゃん。」


 「気を付けてくださいね。」


 お妙ちゃんはそう言って、私達が見えなくなるまで見送ってくれたのでした。

 道中に、錬金座の人に呼ばれた経緯を簡単に説明して貰った。まぁ予想通り金細工座の一件で呼ばれたのでした。





 錬金座の座敷に通されて、そこで私とお政さんは待つように言われた。

 私は、てっきり金細工座の人達がいるところに通されるんかと思っていたが、誰も居ない広間に取り残された。


 「金物細工座の人達は居ないのでしょうかね。」


 「多分、用件だけ聞いて帰って貰ってるはずだよ。」


 「そうなので?」


 「感情的なのが居たら、条件面の話し合いなんてできないよ。それに相手がいるところで、こっちの条件面の調整なんてできないだろ。」


 あー、確かに。こっちの条件面でどこを最終目標にするか意思統一をしとかないと、みんなが勝手にそれぞれの思惑で話しちゃまとまる話もまとまらないか。


 「なるほど。」


 そんな話をしていると、眼鏡を掛けた小柄な少し小太りで白髪の老人が入って来た。

 私は、その姿を見て、確かに見た目もいかにも狸親父っぽい人だね。多分この人がここの偉い人なんだろうな、などと感想を頭に浮かべていた。


 「わざわざ呼び出してすまないね。私はここを任されている。朱雀錬金堂の丹兵衛といいます。よろしくお願いしますよ、お嬢さん。」


 「私は、お政さんの所で働いている九重茜と申します。よろしくお願いします。」


 私も挨拶をそう返しました。へぇー、お政さんとこ以外にも錬金術のお店があったんだ。


 「茜さん言うのかい。お政もいい人材を見つけたな。お陰で錬金術師の羽振りも良くなったよ。」


 「ふん、そんなこと言うため呼び出したわけでないだろ、さっさと話をしなさいな。これだから年寄りは。」


 「相変わらず、厳しいなぁ。茜さんは、ああならないようにな。」


 「はぁ。」


 私は、相槌を求められたが、愛想笑いをしながら、そう返事をした。答えずらい話はやめて欲しいな。

 それから、丹兵衛さんは、金細工座の人達からの要求とその態度が気に入らないかったことなどを詳細に話してくれた。


 「それでだよ。気に入らないと突っぱねることは出来るが、茜さんはどうしたい?」


 うん?相手が気に入らない。なら、受けない方向でいいと思うのだけど、丹兵衛さんの聞き方からすると、そう単純に答えて欲しくないようだね。

 ちょっと熟考してみよう。まず、断ると、相手は儲け話を蹴られたので、頭にくる。下手したら暴走してここに嫌がらせをしたり、私のことを突き止めて金剛石を向こうにも売るように脅してきたりするかもしれない。


 では、どうする?相手を潰す。これは出来ないね。この街の金細工職人かなさいくしょくにんをすべて敵に回しかねない。それにそもそも街での刃傷沙汰は、厳禁だし。

 だとすると考えるとやっぱ単純に売りませんと言うのは無しになるのかな?

 そうすると、相手の要望は座を通して金剛石を売るようにと言う事だけど、それは私と惣弥さんの売買契約に反するからそれは無し。


 妥協するとしたら、私が作った分は惣弥さんに、他の錬金術師が作った分は、金細工座にと言う事だけど、私も何時までも金剛石ばかり作りたくないんだよね。どうしたものか?


 「茜さん、どうです?考えはまとまりましたか?」


 「うーん。断るというのが一番いいのだけど、その後の相手の暴発が怖いし、かと言って座を通して売り買いは惣弥さんとの信義に反する。

 妥協して、私の分は、惣弥さんに、他の錬金術師の分は金細工座にと言うのも考えました。

 ですが、私がこの街から居なくなったり、金剛石を作るのをやめたら、惣弥さんが今度は金剛石を手に入れられなくなってしまう。どれもあまりいい考えじゃない気がします。どうしましょう?」


 「ほう、中々考えていらっしゃる。」


 「でも、正解って感じの答えが浮かびません。」


 「いやね。茜さんだけで解決しようとするからいけないのですよ。この丹兵衛に任せて頂くのは、どうでしょう?」


 「いい考えがあるので?」


 「うーん、茜さんには、あまり旨味がないですが、錬金座として、新たに錬金術師を増やすのです。茜さんは、お政さんの師匠の空席分を埋める形で座に所属していただきましたが、取り合えず、新たに三人程他所から呼び入れるのですよ。」


 「今は、空席がもうないのです?」


 「ええ、ですが、今は茜さんが作った金剛石の需要があるので、新規の錬金術師を増やすのに座の仲間も反対はないでしょう。」


 「それだけ居れば、惣弥さんの所だけでなく金細工座にもある程度纏まって卸せそうだね。」


 「茜さんが金剛石を今ほど作らないようでしたら、更にあと二人くらい追加してもいいでしょう。」


 「そうして頂けると嬉しいですね。」


 「ただ、それだけ大きな商いとなると、茜さんが仕切るにはちょっと荷が重いと思うのですが。」


 成程、確かに座との調整や何やらもやるのは面倒臭そうだ。


 「確かに。」


 「そこで、金細工座との商いはこちらに任せて欲しいのです。」


 「ちょっと、丹兵衛、待ちな。話を黙って聞いていたら、茜の儲けを奪おうってのかい?」


 「いやいや、お政さん。そんなつもりは、ありません。勿論権利を買わせていただきます。

 金貨50枚と茜さんの替わりの錬金術師二名の金剛石は茜さんが買い付ける。と言うのでどうでしょう?」


 私は、金貨50枚即金で手に入る。それと錬金術師二人分の金剛石を買わせて貰い、それを惣弥さんに売る。仮にその錬金術師二人で月に40個前後、作ったとして、1割中抜きさせて貰えれば銀貨4枚くらいになる。生活費はそれで賄える。

 お政さんからの給金は錬金術の素材に回せる。いいかも。でも、この内容で適正なのかな?お政さんに聞いてみよう。


 「お政さん、どうしましょう?」


 「手間暇と錬金術師の手配や座に入れる根回しとか考えれば、妥当じゃないかい。ただ家じぁ、もう錬金術師は受け入れられないよ。」


 「そこは、この丹兵衛が受け入れますのでご安心を。」


 色々手間を考えると、この取引でも充分お徳のようだね。なら、任せちゃおうか、金細工座の連中は気に入らないけど。


 「では、惣弥さんに話を通して、了解が得られればお願いします。」


 「うん、惣弥さんの所に話を通しておく方がいいですね。流石です、茜さん。まぁ、惣弥さんにとっても腕を磨きあえるのですから、悪い話じゃないと思いますよ。」


 「そうだといいのですけど。」


 そうして、話し合いは、結局、惣弥さんの了解を貰ってから持ち越しとなったので、予定より早く終わったため、九重さんも竜馬さんもこちらに向かうことなく、私達は錬金屋に戻ったのでした。

 それから、丁度、私への返金に来ていた、サキちゃんとお母さんが来ていたので、借金の一部と相殺で惣弥さんへ明日伺いたいことを伝えて貰いました。



次回のあらすじ


 茜は、再び工房を訪れ、惣弥さんと話をし、その結果を持って錬金座に訪れるのでした。果たして今回の一件は、無事大団円を迎えられるのでしょうか。

次回 第23話 星の細工は誰の物 6、是非読んでください。

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