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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
21/77

21 星の細工は誰の物 4  

 それから、暫くは私は、店の手伝いで今まで通りの薬の素材、『光陰星霜』から持ち込まれた薬材の加工を行いながら、合間を見て金剛石の作成を続けた。

 惣弥さんも、意欲的に作品を作っているようで、私への髪留め五個の販売も僅か一週間で納品を終え、小間物問屋にも髪留めと髪飾りを五個ずつ卸したそうです。

 なので、わざわざ納品にここまで来てくださり、金剛石はあるだけ欲しいと納品の時言って、持って行ったのでした。もちろん、その後も一週間置きに作れるだけ納めて欲しいと言われました。


 私の買った髪飾りは、自分用、後は、お政さん、お妙ちゃんに贈りました。二人とも金剛石の値段を知っていたため、最初は遠慮していましたが、そこは無理を言って納めて貰いました。

 後の二つは、龍馬さんと九重さんにいい人が出来たら、贈るように渡そうとしたのですが、お政さんに無粋な真似するんじゃない、そういった物は自分の甲斐性で買うんだと怒られましたので、持っています。

 まぁ、確かに貰い物を贈られても、嬉しくないか?私は貰えれば何でも言い気がするけどね。


 しかし、惣弥さんの作る細工物は、結構高い物なのに、そんなに作って売れるのかな?まぁ、納品の時、売れ具合も聞いて、調節しましょう。

 これ以上作れないくらい作ってるけど、こればっか作っているのも飽きちゃうしね。


 他のことも試してみたいし、宝石も他の物や、カラーダイヤモンドも試しに造ってみたいしね。そう言った物を試す時間と魔力も欲しいんだよね。

 結局、物珍しさなのか、高額商品にもかかわらず、貴族や士族、大店の商人などに人気を博し、この佐加里の街だけでも入荷してすぐ品切れになる程売れて、そんなことをしている余裕は、暫くありませんでした。


 それでも、その間もお政さんやその知り合いの錬金術師に作成をお願いしたのですが、元々錬金術師の数が少ないこともあり、皆それぞれ持っている仕事もあるため、数はそれ程集まらないうえ、惣弥さんがあるだけ持ってかれてしまうので、私の仕事は減りませんでした。


 「しかし、稼げるだろうけど忙しそうだね。茜。大変なら、店の仕事は、あたしに任せて、金剛石作りに励んでも構わないよ。」


 「お政さん、やめてくださいよ。金剛石だけ作ってたら、寝てる間も夢で出てくるようになっちゃいますよ。いろいろな薬剤を作ったりするのは、いい息抜きなのですから。」


 「そうだろうねぇ。」


 「そうですよ。」


 「しかし、金剛石の需要も減らないねぇ?この街だけで、そんな大尽が居るとも思えないけど。」


 「惣弥さんの話によると、買える人は色々な装飾品を揃えたりして、数を買っているようですし、人気を聞きつけて、近郊の街からも引き合いがあるみたいですよ。」


 「それなら、ここに買い付けに来なくても、錬金術師や細工職人だって、他の街にいるだろうに。この街の錬金術師もいい小遣い稼ぎが出来て喜んでるから今はいいがね。」


 「それは、金剛石を作るだけなら、どこの錬金術師でも出来るけど、石の加工技術が…。」


 「ああ、そうだったね。茜に教えて貰ったけど、苦労したよ。あれは。」


 ブリリアンカット(私も正確な形はわからないのでそれらしい輝きになった物をそう言っているだけだけど。)の形を初見の錬金術師が再現するのは難しかったようで、平面に描いたカット石の図を見せても最初はダメで、実物も小さすぎて形がよくわからなかったりで上手くいかなかったのよね。


 それで、結局、水晶を使って大きなカット模型を作って見せ、この形に仕上げる意味を説明をしてようやく、ある程度物になる物が出来てくるようになった。

 売り物になったのは結局、私が身近に助言出来るお政さんでさえ、一週間掛かったからね。

 そのカットを失敗して無駄になった金剛石は私が買い取り、少ない魔力で再加工したので、全くの無駄にはならなかったけど、これを現物だけある状態で、無駄なく作ると大変だろうなぁ。


 「それでは、今日は納品日なので、惣弥さんの所に行ってきます。」


 「一人で大丈夫かい?店番してるお妙を連れて行くかい?」


 「私だて、子供じゃないんですから、もう何度も行っているので大丈夫ですよ。」


 「なら、気を付けて行ってきな。」





 最初の数回は、お妙ちゃんに付き添ってもらってたけど、前回からは、私だけで出かけるようになったんだよね。お妙ちゃんが居ないのは寂しいけど、何時までも付き添わせちゃ悪いからね。

 こっちの世界に来てしばらくたったけど、私のいた世界から結構こっちに来ているだけあって、意外と住みやすいのは助かるわ。


 謎の向こうの世界とこっちの世界で一部再現性がないため、科学がいまいち発達していなくても、錬金術や魔道具がそれをある程度補っているから、お金さえ払えば、結構向こうの世界のような暮らしに近い生活ができる。

 そのお金さえと言うのが曲者だけど、錬金術も魔道具も万人が使えるわけじゃないから、量産品が無いのでどうしても高くなっちゃう。

 そこは、今の私の金剛石作りで、結構買い揃えちゃってるけど、むふふ。


 ただ、食生活がちょっと不満よね。調味料とかは、最近大分普及してきたみたいだけど、日本の物がほとんどだし、一番の問題は食材、これが結構種類がないんだな。

 確かに、日本で生活してた時は、元は海外の野菜や果物だった物が大量にあったからね。品種改良も進んでいたし、その辺も、何とかできないかしらね。

 そんなことを考えながら、工房に辿り着こうとしたところで、工房の方が騒がしいのに気づいた。


 「あれ、どうしたんだろ?」


 私は、工房の方から聞こえる喧噪に、そう独り言を言って立ち止まっていると、私に気付いた惣弥さんの奥さんは、慌てた様子でこちらに駆け寄ってきた。


 「あ、茜さん。ちょっとこっちに来てください。」


 そして、そのまま私の腕をつかむと、そのまま脇道に引っ張っていった。


 「え、ちょっと、どうしたのです?」


 「すみませんね。乱暴に引っ張ってしまって、実は、工房に座長さんが見えてましてね。」


 旅芸人一座でも来ているのかな?なんて考えたが、話の辻褄が合わない。それで、ああ、私もお政さんに言われて入った錬金座のような組合や権利調整をする工房の団体かと、思い至った。


 「工房の所属してる座のですか?」


 「そうです。金細工座かなざいくざの座長です。」


 「それがどうして?」


 「座外から宝飾の素材を買ったから、その抗議だそうです。でも、茜さんは、錬金術師だから錬金座に所属してますよね?」


 「ええ、させられましたよ。」


 座に所属するのにお金まで取られましたよ。そのくせ、何もしてくれませんですよ。


 「それなら、同じ佐加里の座から購入しているので、全くの座外からの購入ではないので問題はないのですけどね。」


 そうなのね。座に入ってないと商売をしちゃいけないのね。良かった入ってて、さっきは何もしてくれないなんて言って、ごめんなさい。知らないと所で役に立ってました。

 もう、過去の漂着者は、楽市楽座くらい提唱して、そんな物取っ払って欲しかったけど、色々と知識どおり行かないようだから、権力者に取り入れなかったのね。私も権力者なんかに近づきたくないです。はい。

 でも、それなら。


 「だったら、私がそこに行って話をつければいいのでは?」


 「いえ、恐らく座長の狙いは、茜さんでしょうから、近づかない方がいいでしょう。」


 「へ、私ですか?」


 「ええ、うちの夫の細工物が評判になった辺りで、仕入れ先を探していたのでしょうが、茜さん達は、サキちゃんを仕入れの度に連れてきて、遊んで帰っているから、気付かなくて、今回の騒ぎに出たのだと思います。」


 「ああ、何気なく今までしてきたことが、いい目眩ましになっていたと。」


 「ですので、今日はお帰りください。」


 「わかりました。でも、せっかく来たのだから石だけ置いていきますね。お代は今度で構いませんので。」


 「ありがとうごいます。中も確かめられませんので、お互いの信用と言うことで預からせて貰います。」


 そうよね。こんなとこで金剛石を渡されても、品質や数を確認できるわけないよね。


 「こちらも信用しますので、失礼します。」


 工房のやり取りも気になったけど、今日は私一人なので、何かあると対処できないので大人しく帰ることにしました。





 私は、工房から戻って、お政さんに工房での一部始終を話しました。


 「へぇ、そんなことがあったのかい。あと、忘れてたけど茜は、金目のもん持って出歩いてるのだから、誰か一緒に付けるべきだったね。」


 「そうでしたね。うっかりしてました。今度から工房に行くときは、誰かと一緒に行きます。」


 「そうしな。それと金細工座か。一悶着ありそうだね。こっちも錬金座の方に話を通しておいた方がいいね。」


 「へ?」


 「金剛石鑑定にかければ、錬金術で作ったのが丸わかりだろ。工房の方で座の人間にから買ったって答えたのなら、今度は錬金座の方に言いがかりを付けに来るよ。」


 「なるほど、お願いします。」


 「なに、こう言った時の為、高い金払ってやってるんだ。今使わないでどうするよ。」


 ほう、早速ムダ金払ったと思ってたところに、早速、二度目のお役立ちの機会が、錬金座にはもう足を向けて眠れませんよ。ただ、お政さんにお金を出して、この街での錬金術師の権利を買って来て貰ったので、私はそこに行っていないからどこにあるか知らないけどね。


 「いやぁ、錬金術師を守るための団体様様ですね。」


 「別に錬金術師を守るという訳でもないけどね。自分たちの商売を上手く回わせるようにする団体さ。」


 「そうなのですか。でも、あまり変わらないような?」


 「傍から見ればそうかもだが、中を知ってると色々とね。まぁ、ちょっとおしゃべりが過ぎたね。そんな訳で、ちょっと錬金座の狸親父の所に行ってくるよ。」


 「狸親父?狸の獣人なのです?」


 「いや、この場合は、文字通り喰えない親父と言う意味の方さ。なんでも狸の獣人は居ないらしいよ。獣人連中も狸は、ここに来て初めて見たと言っていたしね。」


 狸の獣人、居ないんだ。そう言えば私のいた世界でも、狸は日本と中国周辺にしか居なかったんだっけ?


次回のあらすじ


 茜は、工房での騒ぎの数日後、錬金座に呼ばれるのでした。そして、そこで待ち受ける出来事とは…。

次回 第22話 星の細工は誰の物 5、是非読んでください。

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