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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
19/77

19 星の細工は誰の物 2

 夕食時、私は、金剛石を使って装飾品を作ってくれるような職人に心当たりがないか、聞いてみた。


 「そう言った細工物だと、金細工職人だねぇ。悪いが生憎とその辺と付き合いはなくてねぇ。」


 「お政さん、小間物問屋辺りとの付き合いで紹介してくれそうなとこもダメかい?」


 「そっちは、商売抜きでそう言った話を聞いてくれる店なんてないしね。それに商売に絡めた連中を最初から入れると面倒事になりそうなので、紹介したくないねぇ。鳳屋の顧客では、そう言った職人は居ないのかい?」


 「生憎とそう言った奴は居ねぇなぁ。」


 「そっか。九重さんもそう言った人は、知らないよね。」


 「うむ、茜と同じでこの街に来たばかりだしな。妻の生前に髪飾りを作って貰った職人の親方工房がこの街にあるという位しか、知らぬな。」


 「その工房ってわかる?」


 「ああ、職人にしては、話好きの奴でな、色々話を聞かされているから覚えているが、その程度の情報で尋ねるつもりか?」


 「まぁ、心当たりもないからダメもとで当たってみようかと。」


 「工房の名前は伴造とものみやつこという変わった名前のだったな。」


 「ああ、あそこかい。」


 「知ってるの?お政さん?」


 「かなり昔からの工房だよ。腕もまぁ確かだろうけど、お高い物を作ってるところだよ。まぁ、そこで弟子の工房とか紹介して貰えたらいいかねぇ。」


 「なるほど。参考になります。それじゃぁ、錬金書庫の結果が出たら、行ってみようかな。」


 「それなら、お妙と一緒にいってきな。」


 「いいのですか。私も一緒で?」


 「構わないさ。むしろ茜一人より安心できるってもんさ。まだ、茜は、いまいちこっちの常識と掛け離れているからね。」


 うーん、そう言われると悔しいが何も言えないよ。確かに地球と言うか現代日本の常識に、どうしても引っ張られちゃうからね。


 「それなら、その職人、善吉と言うのだが、それが作った髪留めを持っていくといいだろう。話の取っ掛かりくらいにはなるだろう。あとで貸してやる。」


 「でも、今もそれを持っているという事は、奥さんの形見なのでしょ?」


 「茜に貸すだけだ。構わんよ。」


 「ありがとう。大事に扱います。」


 そうして、三日後、錬金書庫への登録は無事終了した。

 どうやら、錬金で作った金剛石は、鑑定すると金剛石(錬金術にて錬成)と鑑定結果が出るようだ。


 地球と違って、鑑定技能や鑑定の魔道具があれば、完璧な鑑定結果が出るというのは、考えてみるとすごいよね。鑑定ミスで偽物つかされるなんてことがないんだよ。

 あと、問題はどれくらいの価値で取引されるかよね?これも鑑定で、平均的な価値が出てしまうので、便利と言えば便利だけど、価格については、相場があるので、目安にしかならないから、その辺の勉強はしないと腕の良い鑑定士になれないそうです。

 まぁ、今回は、実売価格でなく、おおよその金額が知りたいので、お政さんが持っている鑑定魔道具を借りて、金剛石の価値を確認しましょう。

 


 「魔力消費に以上の価値になりますように。」


 そう言って、鑑定魔道具で一番最初に造った金剛石を覗いてみる。


 名称:金剛石(別名:ダイヤモンド)、(錬金術にて錬成) 区分:模倣宝石、価値:銀貨1枚 品質:優


 うん、銀貨1枚なら十分すぎるわね。というか一個でこんな高くちゃ、細工品に加工したら一般向けに売れる値段になるのかな?


 「どうでした?茜さん?」


 「えへへ、見てください。どうぞです。」


 鑑定アイテムを覗いている私がいつまでも覗いたままだったので、お妙ちゃんが痺れを切らして聞いて来たので、お妙ちゃんに金剛石と鑑定アイテムをそう言って、渡しました。

 お妙ちゃんは、興味深げに鑑定魔道具で覗いてみる。


 「うわぁ、すごいですね。こんなちっちゃな石が銀貨1枚ですよ。」


 「だよね。しかもその気になれば一日で十個は作れるんだよ。」


 「毎日作るとすごいことになりますね。」


 「いや、流石に毎日は、作らないかな?いくら儲かろうが、こればっか作るのは流石飽きるでしょ。」


 「でも、一カ月作り続ければ、金貨30枚。お大尽様ですよ。」


 「いや、だから、丸々一月なんて作りませんからね。それより、無事登録もできたし、買ってくれる所を探そうと思うのだけど、お妙ちゃん。仕事が一息つきそうなのは、何時?私は、今日明日なら、平気なんだけど?」


 「私も、帳場の仕事を片付ければ急ぎの仕事はありませんから、今日の午後からなら、構いませんよ。」


 「じゃぁ、午後から、出かけてみようか?」


 「はい、では、おかみさんに承諾を貰っておきます。」


 お妙さんは、そう言うとお政さんの所に向かった。

 では、私も準備をしますか。




 そうして、午後職人町へと向かう。途中、お土産を買って、サキちゃんの家に顔を出す。

 ヨシさんは、もう既に働いていて、サキちゃんは、近所の子と遊んだりしているはず。家の前の路地には、誰もおらず、サキちゃんは、今日は、どこか遠出しているのかな?

 そんなこと思いながら、一応、サキちゃんの家を訪ねる。

 木戸を叩いてみると、声がして、中からサキちゃんが顔を出した。


 「あ、お姉ちゃん達、こんにちは。」


 「こんにちは、サキちゃん。」「こんにちは。」


 「どうしたの?」


 「近くまで来たから、サキちゃん元気かなと見に来たんだ。はい。お土産。」


 そう言って、お土産のお団子の包みを渡す。


 「ありがとう。お姉ちゃん、遊べる?」


 「ごめんね。今日はちょっと職人さんのとこに行くんだ。」


 「そうか。」


 サキちゃんは、残念そうに耳と尻尾を垂らす。


 「それじゃぁ、サキちゃんも一緒に行く?」


 「いいの?」


 「うん、いいよ。それじゃぁ、ちょっとお隣さんに声を掛けておくから、お土産を仕舞って来てね。」


 「わかった。」


 そう言うと、サキちゃんは、奥に戻って行った。

 その間に私は、お隣さんにサキちゃんを連れ出すと一声かけておいた。


 「サキちゃんに甘いですね。でも、平気ですか?子供を連れて職人さんのとこなんかに?」


 「うーん、ダメかな?まぁ、何とかなるでしょう。」


 サキちゃんが、出てきたので、私は、サキちゃんと手をつなぎ、お話しながら、お妙さんに連れられて、伴造とものみやつこという工房に向かったのでした。


 「思ってた以上に大きいんだけど、私なんか相手してくれるかな?」


 「ここなの?」


 「そうだよ。」


 「綾ちゃんのお父さんの工房だね。」


 「知ってるの?」


 「うん、綾ちゃんと何度か遊びに来てる。その時これ貰ったの~。」


 サキちゃんは、そう言って頭の髪飾りを見せてくれた。


 「そうか。サキちゃんが入ったりできるという事は、そんな頑固な職人じゃないのかな?よし、行こう!」


 そう言って、表の木戸を叩いて、声を掛けた。


 「ごめんください。」


 暫くすると、木戸が開いた。


 「お待たせしました。どのような御用でしょうか。」


 中から出てきたのは、三十代前後の女性だった。若い女性2人と子供が立っていたので、一瞬面を食らったようだが、すぐに平静を装いそう訪ねてきた。


 「急にお邪魔して申し訳ありません。実は飾り用の宝飾品を作ったのですが、それで飾り物を作ってくれる職人さんを探してまして、訪れました。

 私の知り合いが住んでいた土地に、ここの工房から独り立ちした善吉さんという腕の良い職人が居た聞いたもので、ここでどなたか紹介いただければと思いお尋ねさせていただきました。

 私は、九重茜と言います。で、こちらは、お妙とサキです。」


 「あら、サキちゃんじゃない、久しぶりね。元気だった?綾は今日は、習い事に行ってて居ないの。ごめんなさいね。あ、すみません。私は、小夜と言います。ええと善吉さんの伝手ですね。では、どうぞ中にお入りください。」


 おや、この人が、さっきちゃんの友達のお母さんですか、優しそうな人ですね。


 「綾ちゃんのお母さん、こんにちは。そう、綾ちゃんいない。」


 綾ちゃんがいれば、一緒に遊んでもらうこともできましたが、居ないなら一緒に話を聞けるように承諾を取りましょう。


 「あの、この子は知り合いの子でして、偶々会いまして一緒来たのですが、中でお話してもいいでしょうか?」


 「そうしますと、お父さんでなく、私の主人が相手いいですね。それで構わないかしら。」


 「ええ、話を聞いて貰えれば、結構ですので、よろしくお願いします。」


 私も、頑固そうなおじいさんより、話の分かるおじさまの方がいいので、それで大歓迎です。


次回のあらすじ


 茜は、飾り職人を紹介して貰うため、工房に向かいました。そこで金剛石を見せて紹介をお願いするのですが。

 次回 第20話 星の細工は誰の物 3、是非読んでください。

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