17 珍客騒動 6
「ヨシさん達、移籍できたのですか。」
私が、サキちゃんやヨシさん達の様子を見て、戻ってくると無事移籍できたと、お政さんが知らせてくれた。
「ああ、光陰星霜からさっき知らせが入ったよ。」
「よかったです。」
「まぁ、これからまだ一波乱あるかもだから、安心は出来なけどね。」
「一波乱ですか?」
私はお政さんの言葉がよく分からず、そう聞き返した。
「ああ、おヨシさん達の他に寝込んでるはずの獣人二人を、光陰星霜の連中にそれとなく探して貰っているのだけど、そこでおヨシさん達が前に居た一門が解散するという話が出てるみたいなんだよ。」
「解散ですか?」
「表向きは、採集の主力の五人のうち三人が移籍、二人が寝たきりで、一門としてうまく回らなくなったというのが理由だが、薬を使っているのが光陰星霜に知られてる可能性があるから、色々問題を起こした一門を消しちまおうってとこだろう。」
「でも、どうせ別の一門を作って、そこが、また、薬を使って採集をやるんでしょ。」
「多分、やるだろうね。」
「なんとか止められないかなぁ。」
「誰が徒党を組もうが、一門を作ろうが、迷宮探題は自由にやらせるという立場だからな、難しいだろうねぇ。まぁ、茜もサキちゃん達に会うなら、身の安全に注意しな。しばらくは、一人で行かないで誰かと一緒に会いに行くようにしなよ。」
「はい、気を付けます。」
次の日、私は、サキちゃん達の様子見と食べ物を届けるため、お妙ちゃんと連れ立って、出かけることにした。
「せっかく、私だけでもサキちゃん達の所に行けるようになったのにね。ごめんね、お妙ちゃん。」
「いいえ、こうして茜さんと外に出れるのも楽しいですから。」
「そう言ってくれると、嬉しいよ。」
そんなことを話しながら、まずは一番近い、サキちゃんの所へ向かう。
「ごめんください。いらっしゃいますか。茜です。」
私は、そう言って、木戸を叩く。
「あい。」
するとすぐに、そう声がして、木戸が開いた。
「茜お姉ちゃん達、こんにちは。どうぞ、今、お母さんは、出かけてるよ。」
「そうなの?お邪魔するね。お母さんは、お買い物か何か?」
「大分、動けるようになったので、明日から仕事をするから、そのお話に行ってくるって。」
「そうなの。じゃぁ、これ今日の分のご飯ね。」
サキちゃんと話をしながら、届けに来た食事を渡す。
「ありがとう。ねぇ、少し遊べる?お留守番暇なの。」
それを受け取るりながら、サキはそう上目遣いで話しかけてきた。
「うー、いいよ。遊ぼうね。」
「いいんですか。茜さん。」
「うん、大丈夫だって、妙ちゃん。少し遊んでも、お昼前には回れるから、平気平気。」
そう言って、サキちゃんを膝の上に乗せて構いながら、サキちゃんと話をしていると、突然、木戸が激しく叩かれた。
「ごめんよ。」
そう声がして、木戸が無造作に開かれた。
「誰です。」
私は、開かれた木戸から入って来た見ず知らずの男三人を見て、そう尋ねた。
「うるせえ、手前らのせいで、おまんまが食えなくなっちまったんだ。」
「そうだ。お前らさえ、居なければ。」
「ああ、やっちまえ。」
男達は、口々にそう言うと、武器を引き抜いて、私達に迫って来た。
私とお妙ちゃんは、咄嗟にその辺にある物を男達に投げつけ、怯ませると、その隙にサキちゃんを連れて、中庭に逃げ出した。
しかし、男達もすぐ態勢を整え、私達を追いかけて迫って来る。
「なにしやがんだ、手前ら、もう許さねえぞ。」
「ささっとやっちまおうぜ。」
「でもよ。こいつ犬の獣人か?なんか違うような気が。それとそこに一緒にいる人族もやっちまうのか?」
「そうか?獣人なんて毛の色も耳の形の、それぞれ違うじゃねぇか。そんなのわからねぇよ。」
「人族は、楽しませてもらってから、やっちまおうぜ。わははは。」
こいつら、好き勝手行って、なんなのよ。私は。辺りを見回し、落ちていた木の棒っ切れを拾い上げ、サキちゃんを背中に隠すようにして、連中に向けて構える。
お妙ちゃんも、それを見て、洗濯竿を、竹槍のように構える。
「なんだ?そんなもんで俺達と相手しようっていうのかよ。」
「笑わせるぜ。」
「もっと腰を入れて構えな。わはは。」
そう言いながら、男達は武器を構えなおし、こちらに向かってきた。
お妙ちゃんは、自分に一番近い男に竹竿を叩きつけるように打ち付ける。
「ひぃ。」
男は、鋭く打ち付けてきた竹竿に驚いて後ろに飛びのく。
躱された竹竿は、地面を叩きつけるが、それでもお構いなしに今度を横に振り抜く。
横にいた男二人は、避けることもできずに、竹を打ち付けられる。
「いてぇ。」
「ひぃ。」
男達は、変な叫びを上げ、そのまま倒れこむ。
「お妙ちゃん、お見事です。」
「お姉ちゃん、かっこいい。」
それを見て、私とサキちゃんが黄色い声援を飛ばす。
「は、恥ずかしいです。」
お妙ちゃんは、そんな声援を受け、恥ずかしいそうにしている。
お妙ちゃんも頑張ってるんだ。私も頑張ろう。そう思い、木の棒を握りしめ、相手を見据える。
そんな時に、木戸の方から声がした。
「大丈夫か。茜、妙。」
声の方を覗き見ると、竜馬さんと九重さんが、知らない若者達と雪崩れ込んできた。
「助けて、知らない人たちが襲ってきたの。」
私が、そう叫んでる間に、竜馬さんと九重さんが男達に迫り、剣を打ち付けて、あっという間に倒して、こちらに近づいて来た。
「大丈夫か?」
「うん、お妙ちゃんがあいつらが近づくのを防いでくれたから。」
私は、竜馬さんの問いかけにそう答える。
「お兄ちゃん達も強いね。すごい。」
サキちゃんは、一瞬の早業に驚いて、そう声を上げていた。
反応がない、お妙ちゃんの方を見ると、腰を落としてしゃがみ込み、大きなため息をついていた。やっぱりかなり無理をして、頑張っていたんだね。
「無事でよかった。竜馬殿に案内を受けて、光陰星霜の一門に顔を出していたら、薬理採里の一門の連中が何やら集まってどこかに散っていったと聞いて、ここに来たんだ。」
「じゃぁ、他の人達の所にも、あいつ等の仲間が?みんな大丈夫かな。」
「ああ、それは、安心しな。他の所にも光陰星霜の連中が向かっている。それに他の所は、ここより光陰星霜の拠点に近いし、多分間に合っているだろう。」
その後、襲ってきた男達は、光陰星霜の人達に連れていかれた。他の二人の所も光陰星霜の人達が間に合い、無事に怪我もなく救助されて、襲ってきた男達も捕縛された。
ただ、この襲撃は、襲撃者への聞き取りから、一門解散になって、行く当てがなくなった連中の暴発ということで処理された。
襲撃した人達は、いずれも末端の男達で、主要の構成員達は、殆ど解散と同時にこの佐加里の街を去っていたことも、今回の沙汰の決定に影響したらしい。
私的には、すっきりしない結末になったが、みんなは助けられなかったけど、サキちゃん達は、救われたし、私もちょっと危険な目にも合ったけど無事だったし、まずまずの結果になったという事で、納得することにした。
こうして、サキちゃんが尋ねてきたことによって始まった今回の一件は、一応の決着が付いたのでした。
次回のあらすじ
茜は、サキちゃんが訪れたことによって起こった騒動が一段落し、新たな錬金術による金策を考え、試してみることにし、それによってまた事件に巻き込まれることになるのでした。 次回 第18話 星の細工は誰の物 1、是非読んでください。
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