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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
16/77

16 珍客騒動 5

 そして、向こうの一門との交渉は、光陰星霜の面々に任せることとなり、私は、竜馬さんに付き添って、おヨシさん達の様子を見に回ることとしました。




 「ごめんよ。ここは、『薬理採里』の一門で間違いないか?」


 「なんでぇ、お前らは?」


 「ここの一門衆が縁あって、うちの一門『光陰星霜』に病気の治療を求めてきた。それで治療したんだが、思ったより薬代がかかってしまいましてね。その薬代をそちらが立て替えるか、それが無理ならその一門衆をこっちに渡して貰えないか、話し合いに来たのですよ。」


 「『光陰星霜』だと…。おい、お頭を呼んで来い。」


 「へい。」


 「じゃぁ、俺らは持たせてもらうとするか。」

 




 「し、失礼しやす。」


 男は、お頭のいる部屋にいきなり飛び込んで、そう叫んだ。


 「どうした?そんな慌てやがって。こっちは、手前らの尻拭いで忙しいんだ。」


 薬理採里一門筆頭は、筆頭補佐ら数名を交えて、落ち込んだ薬草の採集量をどう回復させるか、頭を悩ませている最中だったため、いきなり入って来た男に怒鳴りつけてしまった。


 「それが、門前に光陰星霜の連中が、来やして、うちの一門衆を治療したので、その治療代を払うか、払えないならその一門衆を差し出せと言ってきてやす。」


 「光陰星霜だと。この迷宮都市で一、二争う一門じゃねぇか。なんでそんな連中がうちに。まぁ、いい向かうぞ。手の空いているもん、全員集めろ。」


 くっそ、薬で迷宮に来なくなっちまった連中か。新入りの馬鹿のせいで、糞っ垂れが。


 今回、薬が多く盛られた原因は、新入りの男が、料理に薬を入れるのを任され、そんなすごい薬ならもっとたくさん入れればと勝手に一包入れていた薬を十包入れていたのが原因だった。

 それに気付いたのが二日目で、次の日には毎日来ていたやつ五人が来ておらず、他に職を持って売奴も幾人か体調不良を訴えて、仕事にならない奴もいたため、その日以降は、採集実績が大幅に落ちでしまっていた。

  この仕組みを作った薬種問屋には、その報告をしてその対応に次いで指示を仰ぐべく伺ったが、そんな不手際の対応はそっちで行え、とにかく納期までに必要量を納めろと言われ、突き放されていた。


 これ以上下手を打ったら、俺ら一門なんて、さっさと切られちまう。

 しかし、よりよってなんで光陰星霜なんて一門が出てくんだ、畜生め!





 「こんな一門に天下の光陰星霜がいらっしゃるとは、私は薬理採里の筆頭の安兵衛と申します。」


 「おう、邪魔して悪いな。俺は、光陰星霜の筆頭、仁藤新之助と言うもんだよろしく頼むわ。早速で悪いが、この件で来たんだ。どうするかさっさと決めてくれ。」


 仁藤は、そう言うと証文を取り出し、安兵衛に渡した。


 「一人当たり、金貨30枚ですか…。」


 安兵衛は、証文を見て思わずつぶやいてしまった。


 「そうだ。これをおめえさん達が、立て替えるか、一門衆を俺達に渡すか、決めてくれや。」


 仁藤は、そう言って睨みつけた。


 「わ、わかりました。一門衆の移籍で勘弁してください。」


 とても今、あいつらの為に、一門で金貨90枚は払えない、かと言って、今この件で揉め事を起こす訳にはいかない。ここは、大人しく引き下がるしかないか。

 そう考えをめぐらし、やがて、諦めたような表情で、安兵衛はそう口にした。


 「しゃぁねぁ、それで手を打つか、佐助よ手続きは任せたぞ。そっちも筆頭か筆頭補佐を用意してくれ、迷宮探題で手続きをするぞ。」


 仁藤は、そう言って、佐助と薬理採里から誰か出して、すぐ手続きをするように迫った。


 「おい、勘八。おめえが行って、手続きしてこい。」


 安兵衛は、筆頭補佐の勘八と言う男にそう命じた。


 「はい。」


 勘八と呼ばれた男は、そう返事して、迷宮探題に向かうべく、佐助に付いて行った。


 「おう、じゃぁ、これでこの一件は、終わりだ。邪魔したな。」


 仁藤は、それを見届けると、そう言うと、他の連中を連れて去って行った。

 




 「どうしやす。毎日迷宮に採集に来ている三人がこれで確実に抜けちまちゃぁ、完全に採集物の納品に間に合わなくなりまっせ。」


 「わかってらぁ、こっちだって、そんなことは。」


 「なら、もう一度、上に事情を説明しに行っては?」


 「仕方ねぇか。お前、護衛三人程用意しろ、俺とお前で事情の説明に伺うぞ。」


 安兵衛は、そう言うと、護衛を伴って、薬種問屋「蓬莱屋」に向かった。






 蓬莱屋に安兵衛達は付くと、目立たぬように勝手口から入って行った。


 「これは、安兵衛様、本日はどのような要件で?」


 勝手口から入ると、裏で荷物の差配をしていた番頭が気付き、そう声を掛けてきた。


 「すまないが、旦那に会いたいんだ。約束はしてないんだが、ちょっと、急ぎの用が出来でな。取り次いでもらえるかい。」


 「はい。少々お待ちください。」

 

 そう言って、手代の一人に行くとか指示を出すと奥に下がっていった。



 暫くして、番頭は戻ってくると安兵衛達にこう言って、ついてくるように命じた。


 「お待たせしました。旦那様はお会いしてくれるそうです。こちらにどうぞ。」


 そして、案内された部屋に、番頭が声を掛け入室の許可を貰うと、部屋の中に帳簿に目を通している男が居た。

 蓬莱屋光悦、薬種問屋「蓬莱屋」の主人だ。


 「安兵衛さん、今日は急いでどうしたんだい。」


 光悦は、帳簿を仕舞いながら、そう安兵衛に語り掛けた。 


 「実は、先程うちの一門に光陰星霜の連中が来て、それで借金の証文を立てに薬で寝込んでいた三名の身柄を取られまして、このままでは、期日までに香露玉の数が揃えられなくなるので、その相談をしに来た次第でして。」


 「事前に相談に来たのは、良しとしましょう。ただ、自分で考えた策も無しに、私に伺うのは良くありませんね。」


 「申しわけありません。あっしの足りないおつむでは、いい案も浮かびませんもので。」


 そう言って、安兵衛は頭を下げた。


 「それで、思考停止されても困るのですがね。まぁいいでしょう。光陰星霜が相手では、あなた達では役不足もいいとこですし、素直に引き下がったことは褒めてあげます。」


 「ありがとうございます。」


 「予定が狂うのは、致し方ありません。あなた達の一門は恐らく目を付けられているでしょうから、いったん解散してください。」


 「解散ですか。」


 「ええ、そうですねぇ、あなた達は、他の迷宮で仕事をしてもらいましょう。」


 「へぇ、ご命令なら喜んで従います。」


 「安兵衛の所の獣人どもは、あたしが新しく連れてくる一門、後でその一門名は伝えますので、そこに入るように言い含めておいてください。それと安兵衛さんと一緒に別の迷宮に連れてく以外の連中は、うまく解散の不満を今回身柄を引き渡した獣人に向けさせて、念のため口を封じて貰いましょう。出来ますか?安兵衛さん。」


 「ご命令とあれば、獣人どもは金を多少握らせれば大丈夫です。それに、抱えてる破落戸ごろつきもこういう仕事があった時の為に抱えてる訳ですし、お任せ下さい。」


 「頼みましたよ。ただ、万が一そいつ等がとらえられても、不満の爆発が原因となるよううまく誘導してくださいね。」


 「任せて下さい。では失礼します。お邪魔しました。」

 次回のあらすじ


 サキちゃんのお母さんたちの移籍が無事済み、喜んでいる中、茜は、そんな平穏を打ち破る騒動に巻き込まれるのでした。 次回 第17話 珍客騒動 6、是非読んでください。

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