15 珍客騒動 4
翌日。お妙ちゃんは、店の留守番を、竜馬さんは、昨日の三人の様子を見に向かったのでした。
お政さんは、知り合いの一門衆に繋ぎを取り、私とお政さんで向かうのでした。
「ここが、知り合いの一門衆『光陰星霜』の拠点だよ。」
「随分、立派なお屋敷ですね。」
「迷宮攻略一門として、古くからある一門だからね。」
お政さんはそう言って、大きな門の横にある潜り戸を叩いた。
「ごめんよ。錬金屋のお政と言うもんだ。筆頭に会いに来た開けておくれ。」
「しばし待たれよ。」
そう言うと、恐らく正門の閂が外される音が中から聞こえ、正門が開いた。
「ようこそ、光陰星霜へ。お頭がお待ちです。どうぞこちらへ。」
正門が開くと中にいた二名の若者が頭を下げそう挨拶してきた。
「わざわざ正門を開かなくても、潜り戸から通して貰って構わないのに。」
お政さんは、普通に潜り戸から入るつもりだったようで、そう文句を言った。
すると、若者達の後ろから大柄な三十代手前くらいの燃えるような赤髪が目に付く大男が現れてこう言ってきた。
「いやぁ、客なんぞ滅多に来ぬし、うちの若集に格式ばったことをさせる機会が中々なくてな。」
「なんだい、筆頭自らお出迎えかい。」
どうやら、この人が一番偉い人のようだ。
「おうよ。ありがてぇだろ。で、後ろの狐ちゃんは、なんだい?」
「この子は、茜、あたしの弟子さね。で、漂着者だよ。」
「あ、茜と申します。よろしくお願いします。」
お政さんの紹介の後に、私も自らそう挨拶した。
「おう、俺は、仁藤新之助。ここ光陰星霜の筆頭、徒党『黄金の果実』の党首でもある。しかし、漂着者ねぇ、向こうでも狐人だったて訳ではないんだよな?」
「ああ、こっちの知識を得たのが、たまたま狐人だったらしい。それより、こんなところで、いつまで客を立たせる気だい。さっさと中に案内しな。」
「おう、すまんな。ついてこいや。」
案内された部屋は、何故か洋風の部屋でした。
仁藤さんは、そこの一人掛けソファーに体を沈めると、私達にも座るよう促した。
「若集に格式云々言ってたが、自分はいいのかい?」
お政さんは、その様子を見てそう言ってきた。
「はははっ、俺は、別にいいんだよ。やるときゃやるからよ。」
「本当にそうあって欲しい物ですね。こんにちはお政さんとお嬢さん。私は筆頭補佐の佐助言います。」
遅れて入って来た男は、筆頭に一言言うとそう挨拶をして名乗って来た。
「初めまして、茜と申します。」
佐助さんに私も挨拶をすると、佐助さんは、仁藤さん側でなく、私達と仁藤さんの間にコの字になるように座った。
そして、仁藤さんとお政さんは話し合いを始めた。
「で、お政さんが直接来てくれたってことは、何か用があるってことだよな。」
「ああ、他の一門に所属してる薬草採集の連中を、お前さんのとこに囲って欲しいのさ。」
「訳ありか?」
「ああ、ご禁制の薬を与えられてる連中さ。」
「まぁ、構わねぇが、佐助どうだやってくれるか。」
仁藤さんは、受け入れの意を示すと、佐助さんにその方法を一任するよう話しかけた。
「はい、それで交渉材料はあるのでしょうか?」
佐助さんは、あっさり了承すると、相手の一門から切り離すための、ネタがあるを聞いて来た。
「その子らの薬代は、この子が立て替えている。」
お政さんは、そう言って、私に目線を移した。
「なるほど。では、その債権を私どもが買い取るので渡していただきましょう。」
佐助さんは、それを見て、私にそう語り掛けてきた。
「え?でも、無理のない返済を約束してるので、その…。」
私が、佐助さんの提案に困って、受け答えをしていると、佐助さんは、にこやかにこう付け加えてきた。
「茜さん、安心してください。空証文ですよ。一門衆の移籍がなったら、破棄します。」
「いいのですか。そんなことして。」
「あっても、誰も困らない証文です。問題ないでしょう。」
うーん、確かにそうなのかな?でも、出るとこ出られたらまずいんじゃ?
「相手に訴えられたら、まずいのでは?」
私は、そう佐助さんに聞くと、佐助さんは、問題ないとばかりにこう言ってきた。
「相手も傷のある身です。公にはしてこないでしょう。それに空証文と言え、当事者同士正式に結びますので問題ないですよ。」
そうなのかなぁ。お政さんの知り合いだし悪いようにはしないか。おヨシさん達を救うと決めたんだ。
「わかりました。では、手続きお願いします。」
私は、そう言って頭を下げた。
「おう、話が早くて助かるな。佐助よ。」
そんな私を見て、仁藤さんが鷹揚にそう言うと、佐助さんを見やった。
「では、手続きの準備をしましょう。」
佐助さんは、それを受けてそう口にすると、部屋を出て行った。
そして、改めて、お政さんに仁藤さんは、報酬について口にしてきた。
「さて、俺達が動くんだ。相応の報酬はあるんだろうな?」
「あたしの頼みだよ。それに薬草採集の要員三人確保じゃだめかい?」
「構わないと言いてぇが、俺っちも大所帯を食わせてる身だ。もう少し色を付けて欲しいのさ。」
「なら、そっちで採集した薬草は全部買い取ろうか、それとそれを希望する薬剤に加工してやろうじゃないか。」
「悪くわねぇが、もうひと声は欲しいな。」
「なら、手練れを一人紹介するってのはどうだい?」
「どの程度の?」
「迷宮十五階層まで単独攻略中の男さ。田舎流派らしいがどこぞの小太刀流の免許皆伝だそうだよ。」
え?それって九重さんよね。この一門に紹介しようと言ってたけど、これじゃ、今回の件で差し出すって感じじゃない。いいのかな?
「小太刀か、いいな!俺が、使うのは馬上刀だ。迷宮じゃ、扱いが難しいうえ、教えるのも下手だし、他の手練れも自己流で教えるには、いまいちで、、若い連中の指導にに困っていたんだ。しかもそいつ、免許皆伝てことは、師範格か。丁度いい、会ってみようじゃないか。」
「そいつは二十層までの単独攻略を目指してる。それを手伝ってくれるなら、色々協力してくれるだろうよ。」
「むぅ、まぁ、二十層まで単独で行けるような奴なら、こっちも攻略するのに色々使えるか。いいだろう。では、佐助が準備出来次第、一門を脱退させたい奴らの所に案内してやってくれや。ちょっと、佐助を呼んでくるわ。」
そう言うと、仁藤さんは、私達を置いて出て行った。
うーん、九重さんに協力はしてくれるけど、こんな事勝手に約束して大丈夫なのかしら?
「あの、お政さん、九重さんのこと勝手に決めていいのですか?」
「茜、安心おし、九重殿とは元々話はついてるから、ただ、今回のことに絡めさせただけだよ。」
「それはそれで問題なんじゃ。元々お願いする話を報酬に絡めたのだから。」
「お互い納得したんだ。問題ないよ。で、茜は、おヨシさん達の家に案内できるかい?」
「う、自信ないです。」
「しょうがないね。店に戻って妙に頼むか。」
そうして、佐助さんが戻って来てから、私達は店に戻り、お妙ちゃんと私、佐助さんで、おヨシさん達に事情を説明しながら、証文に名前と血判を貰いに回ったのでした。
次回のあらすじ
茜達が、治療したサキちゃんのお母さんたちの様子を見に言っている間、一門衆光陰星霜の人達が動き出して、事態が大きく動き出していくのでした。 次回 第16話 珍客騒動 5、是非読んでください。
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