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冒険、始めちゃいました。  作者: カイナベル
第四章 錬鉄の町編
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第五十八話 坑道、大事故が発生しました。

 また仲良く三人で依頼をこなしている仲良し三人組。とはいえ、あの連携を一切の相談なくこなしてしまう三人にとって、普通にしていて苦戦するような依頼などこのあたり一帯にあるはずがなく。その楽勝度合いは午前中に受注して町を出た依頼を日が昇り切る前に終わらせてしまえるほどであった。しかし、一日一回依頼をこなせば容易に生活が成り立つため、そう何回も依頼をこなす必要は無かった。


 惰性になりつつある依頼をこなし、帰宅するその道中。関係性が改善されつつあるアルピナとユウキの二人は雑談を繰り広げていた。   


「そういやなんでお前冒険者になったの?俺半年以上旅して一度もエルフと出会わなかったから珍しいんだろ?」


「単純に引きこもってるから。みんな里の外から出ようとせずにのほほんとしているだけ、それがつまんなかったから兄ぃに協力してもらって里から出てきたのよ」


「ふーん。それで?旅はどんな感じだったよ?」」


 ユウキがそう問いかけると彼女は視線を下げ表情に影を落とす。


「まあ、いろんなものは見てきたわよ。いいものも悪いものも、ね……」


 彼女はその旅路の中で目に焼き付けるべきものだけでなく視界に入れることすら躊躇われるようなものを見てしまっていた。純粋であったはずの彼女に突き付けられた人間の業。それが彼女の心にどれほど重くのしかかったかは想像もできない。それでも彼女は旅を続ける。面白いものは悪いものよりもよほど多く貴重である。それを見れるのであればそんなもの我慢のし甲斐があるというもの、らしい。


「まあ、それでもこっちにいるってことはそういうことなんだろ?だったらいいじゃねえか」


「そうね。カナタみたいに優しい人もいれば、アンタみたいな面白生物にも出会えるしね。やっぱり外のほうが面白いわ」


「次似たようなこと言いやがったらお前の鼻に唐辛子ぶち込むからな」


 軽口を叩きあっている二人を後ろから眺めているカナタ。以前のように口を開けば喧嘩腰が嘘のような親しさを見せているのを見てほっとする。この二人やはりどこか似ているのかもしれない。強気であると同時にどこか優しさを捨てきれないところがよく似ている。このまま喧嘩することなくいてくれるとありがたいなぁ、と心の中で思うのだった。


 続けて話し続ける二人。ふと依然思った疑問を思い出す。魔法に詳しい彼女であればもしかして知っているのではないだろうか。一縷の望みを抱きながらそれを彼女に聞いてみることにした。


「なあ」


「何よ?」


「マリュウって知ってるか?前にちらっと聞いたんだけどさ」


「魔龍のことかしら?まあ、それなりには、って感じかしら。魔龍っていうのは昔の魔法使いの脳か心臓を食らって自然界から逸脱した力を手に入れた生物のことを言うのよ。魔龍には共通して魔法みたいな特殊な力を持ってる上、こっちの魔法攻撃は一切効かないのよ。間違いなくこの世界の生態系の頂点ね」


 その生態にユウキは驚きを隠せない。特殊な力を持っていないにも関わらず身体能力で恐ろしいほどの力を誇っている生物がいるこの世界でさらに特殊な能力を加えたらまさに鬼に金棒である。それを聞いてユウキは出来れば会いたくないと同時に一度お目にかかってみたいとも思ってしまう。


「まあ世界に十二体しかいないらしいから普通に生きていて会うことはまずないでしょうね」


「ソウナンダネ。ナンダカイヤナヨカンガスルヨ」


 ユウキはその魔龍のものと考えられる宝石を拾っている。しかも深い雪の中で見つけられるほどに新しいものを。つまりユウキは魔龍の近くにいたということになる。偶然そんな場面に遭遇しているとは考えるすらしなかった。十二体というあまりに少ない数のうちの一匹と偶然会っていたという事実に一瞬志向が停止し、反射的かつ無意識的な応答しかできなくなる。


 棒読みで反応したユウキを流してアルピナはため息を吐いた。やっぱり面白生物である、彼女はそう思ったのだが、別にユウキの言っていることが適当ではなかったことがわかるのは後の話である。

















 依頼を終えて集会場でのんびりとしていた三人。このまま今日が終わるのかと思いながらぼーっとしていると、その空気をブチ壊すように重いものが引きずられるような鈍い音とともに地面が揺れる。突如として起こった災害に冒険者たちがパニックになる中、ユウキは状況を確認するために行動する。


 異変を感知したユウキはすぐさま立ち上がり集会場の外に出る。外に出た彼の目には採掘場へ続く道を行き来している多くの人が映った。彼彼女らの表情はとても喜楽の感情と言えたものではなく、全体的に纏っている感情は負。ほぼ全員が哀の感情を纏っている。目の端で人々の中にキャリィが走っているのを捉え、この現状を知っているかも知れない事に懸け、急いでいる彼の時間を買い、手を引き引き留めた。


「何があった?」


 そう問いかけると、いつもとは違う焦った様子でユウキの手を掴み返す。


「ちょうどいい。お前も一緒に来い!何かしらは出来るだろ!」


 無理やり彼に歩かされるユウキは状況を知ろうと歩きながら彼に問いかけ続ける。


「どうしたんだ。何があったか教えてくれ!」


「悪りいが今は喋ってる暇はねえ。採掘場で事故があったとだけ言っておく」


 腕を引かれたまま走っていると、すぐに採掘場に到着する。そこはいつものように活気あふれる男たち気配はなく、負傷者が野戦病院の患者のごとく転がされている。まともな状況ではない、ひどく混乱している。キャリイの指示で昇降機に乗り込み下に辿り着くと下の状況はさらにひどい。一本の通路の奥から運ばれてくる負傷者たちはみなひどい傷を負っている。中にはもう手遅れかと思えるほど大量の血を流しているものすらいる。その惨状にユウキは一瞬顔を顰め、不快感を露わにする。


「一体何があったんだ!」 

 

 その惨状にキャリィが怒り交じりの大声を上げると怪我人の救助をしていたドワーフのうちの一人が説明を始める。


「いつものように採掘していたら、突然通路の奥からどデカい化け物が現れて……、おそらくドラゴンだ。そいつがいきなり大暴れしだして巻き込まれた奴らが怪我を負っちまったんだ、クソッたれ!」


 男は悪態をつきながら負傷者を昇降機を使って残らず地上へとあげていく。男の証言は正しいようで通路の奥からは呻き声のようなものがうっすらと響いている。この声の主が件のドラゴンと呼ばれていた生物だろう。すぐにでも顔を拝みたいところであったが、今は他にやらなければならないことがある。自分の欲望は頭の隅に置いておき、やらなければならないことを優先する。


 キャリィや負傷の軽い者たちとともに怪我人たちの介抱に当たり始める。続々と集まってくる冒険者や鍛冶師たちの助けもあり、処理は極めて迅速に終了する。しかし、怪我人の介抱が終わった後ところで、根本的な原因は残ったままであった。




















 いつもの三人とキャリィは集会場で休憩を取りながらこれからのことを話している。主に話しているのは事情に詳しいキャリィで、残った三人は真剣な表情で耳を傾けている。


「ドラゴンが採掘場の壁面をぶち破って中で大暴れ。そのせいで負傷者多数。さらに洞窟内に負傷者が取り残されちまってる。悪い予感が的中しちまったな」 


「ドラゴンがいなくなるまで放置ってのが一番の安全策だろうが、洞窟内に負傷者が取り残されてる以上、誰かが乗り込んで負傷者の救出をせにゃならん。そのためにギルドは討伐チームを作るらしい」


 採掘場の中にまだ負傷者が取り残されてしまっているのである。負傷者たちの話によると負傷者の取り残された通路をドラゴンが塞ぐようにしているらしく、誰かが囮となってドラゴンを避ける必要がある。そのためには戦力が必要となる。ギルドはそのための討伐隊を編成しようとしていた。


「だが、この町の冒険者の三分の一はあれに巻き込まれちまって中には上位の冒険者も重傷を負っている者もいる。この分だとかなりランクが下の冒険者も駆り出されるだろうな」


 キャリィの言葉が集会場内に響き渡る。一体どれほどの冒険者に聞こえていたかは分からないが少なくともユウキはその言葉を重くとらえる。採掘場の労働力として冒険者を雇ってしまっていたため少なくない冒険者が巻き込まれることとなり、戦力が減ってしまっていた。中でもこの町随一の能力を持つBランク冒険者のパーティも全員負傷者運び出しの足止めの際、重傷を負ってしてしまっている。戦力の大幅低下は確実である。


「まあ、もうあるものでどうにかするしかないだろ。それにアルピナの魔法もあるし攻撃力が足りなくなるってことはないだろ。なぁ?」


 その問いかけにアルピナは肩をびくりと震わせた。意地でも見せようとしない弱気な様子にユウキが疑問を抱いていると、彼女は少し間を開けた後、戸惑いを隠せないといった口調で彼の言葉に答える。


「そ、そうね!私がいるからには百人力よ!」


 その不審な挙動を三人は訝しむが、なぜその挙動を取ったのかがわからない以上、考えても意味のないこと。頭の片隅に留めておき三人は一時的に流すことにする。四人が集会場で話していると奥から職員が姿を見せた。


「今から採掘場突入隊を編成します!希望する冒険者の方はこちらのほうへどうぞ!」


 その言葉を聞き、血気盛んな冒険者たちは伝説討伐の一助を担おうとカウンターに向かっていく。それに倣ってユウキ達も向かおうとするが、アルピナが立ち上がらない。


「どうしたよ?」


 少しの震えと怯えを見せ一向に立ち上がろうとしないアルピナ。その彼女の顔の前でおーいと手を振っていると少し経って正気に戻ったような反応を見せる。立ち上がった時には既に怯えた様子はなく、いつものような自(・)信(・)満(・)々(・)な(・)表(・)情(・)であった。


「わ、わかってるわよ。ほら行くわよ!」


 いつものような強気な口調でカウンターに向かって歩き始めるアルピナであるが、いつもとは様子が違うことにユウキは気づく。行動一つ一つのテンションが低い。一応何かあった時にはフォローに入ろう。そう頭の片隅で考えながら彼女の背を追い、ユウキもカウンターに向かうのであった。





あとがきなんて久しぶりィ

 さて今回は魔龍についてチラッと触れました。後々、彼らの前に立ちはだかるため、詳しい解説は後々行いますが、簡単に説明しておきます。特徴に関しては文中に書いてある通りですが、魔龍というのはドラゴンというよりカテゴリーの一種ですので、ドラゴンが進化した形というわけではございません。まんまドラゴン、肉食生物、草食生物、中には植物も魔龍になっています。そういうものなのです。共通しているのは

・魔法攻撃が効かない

・町一つを簡単に滅ぼせるほどに強い。

ということです。頭の片隅にでも置いておいてくだされば幸いです。

 では、今度はいつになるかわからないあとがきですが、書いてあったら目を通しておいていただきたいです。ではアディオス。


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