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冒険、始めちゃいました。  作者: カイナベル
第三章 雪の町編
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第三十話 転生者、マリチアを離れました。

さて新章突入です。今章の舞台は雪の街。さらに新しい登場人物の参入!物語はさらに加速する!


 

 ウミヘビを討伐してから二週間。青々とした空が人々の気持ちを晴らしていたころ。ユウキはオルトの家で荷物をまとめていた。理由は単純。これから新天地へ向かうためである。


「おーい、進んでるか?」


 ユウキが荷造りを進めていると手にコップを持ったオルトが入ってくる。ユウキは差し出されたそれを受け取り、それを口につけながら答える。


「もうほとんど終わったから……、明日あたりには出発できそうかな」


「だったら前に言ってた……、商人に伝えに行ったほうがいいな。あっちの予定もあるだろうからな」


 オルトはコップの中身でのどを潤しながらユウキに提案する。ユウキはコップに口をつけながら頷く。ユウキは新しい場所に向かうためにその方向に向かう商人に話しをつけ、その街についでに連れて行ってもらえるように話をつけておいた。 


「お前が来てから大体二か月くらいだっけか。いろいろあった気がするけど宴会の時のそれで全部忘れちまったよ」


 オルトは苦笑いを浮かべながら、思い出すように天井を仰ぐ。それを見たユウキも目をつぶりながらあの日のことを思い出す。レンゾに二人がかりでかかっていったオルトとユウキであったが、二人は完膚なきまでに叩き潰された。その戦いを見て周りは大盛り上がりであったがギルドとしては大問題である。レンゾ本人は気にしてはいないようだったが、やはり組織として目を逸らすことはできない出来事である。


 翌日、二人はレンゾに土下座をしウミヘビの件の報酬無しとギルドでの一週間の無給労働で手打ちにしてもらうことに成功した。本来酒に酔っているといえ、追放物の大問題である。海の男の豪快さに二人は心から感謝する。この一件で問題児の名と出来事はマリチアギルドに笑い話として深く刻まれたのである。


「もう二度とあんなことはしないようにしよう」


「おかげさまでおふくろにおもいっきり怒られたからな」


 ユウキはもともと無給でウミヘビ討伐に向かったため、報酬なしは問題ではなかったがオルトにとっては大問題である。町を震わせるようなオルト母の怒号は今でもユウキの耳に焼き付いている。あの時のことを思い出し、二人は体を震わせる。顔はどことなくひきつっている。気を取り直して二人はいつものように語り合う。


「しかしまあ……、来た時とは大分変わったな……。主に見た目が」


 オルトはユウキをつま先から頭の先まで見回す。コップの水を飲み干したユウキは立ち上がると、腕を広げ、くるりと回転する。


「おうよ!レギーからもらったやつで小規模改装したからな!」


 ユウキの手には今までのグローブとは違う薄手のグローブがつけられている。細かな作業が可能になった上に蒸れないグローブにユウキはご満悦。さらに、腰のポーチも新たにもらい受け、ポケットの数も増加しさらにがっちりとした作りになっている。が、一番ユウキが気に入っているのが、レギーからもらったリュックである。艶消しの黒で塗られた革で作られた直方体の底には金属製の留め金がついており、肩にかけるためのベルトにはクッション性の高い素材が使われている。わかりやすく言えば、ランドセルである。


「このリュックが頑丈で雨にも強い、背負いやすくて疲れにくい、何より物が多く入る!こいつをもらっておいて正解だった!」


 ユウキが自慢すると、俺も欲しいといわんばかりの表情でオルトはユウキの持つリュックを見つめる。それから庇うようにして自身の体でユウキは覆い隠す。しかし、一番の変化はランドセルの傍らに置かれた分厚いコートだろう。気温の高いこの地域では無用なものであるが、ユウキがこれから旅立つ地域には必要なものだ。他にも髪が伸びた、今までボロボロだった服の交換等の細かな変更もあって、結構見た目の変化を遂げていた。


「さて……」


 ユウキはコップの中身を飲み干し、すれ違いざまにオルトにコップを手渡す。


「おっさんと御者のところ行ってくるわ」


「いってらー」


 オルトは出ていくユウキの背中に手を振り送り出した。最後になるかもしれない町の光景を横目に捉えながらユウキは町の中を駆けだした。






















 翌日、マリチアの門に付近に馬車とユウキ、それからオルトとレンゾが立っていた。


「てか、見送られるほど盛大なことはしてないんだけど。ひっそりと出ようと思ったのに」


「いやいや、やっぱりどう言いつくろってもあの時は君がいなければあれほどの戦果は出せなかった。謙遜する必要はない」


「もう聞き飽きてきたぞ。ともかく俺はそろそろ出るぞ。御者のおっさんの話によると、そろそろ出ないと街につかないらしいからな」


 ユウキは後ろの馬車を指さしながら、告げる。それを聞いたオルトは小さく頷きながらユウキに向かって手を差し出す。


「そうか。じゃあな」


「ああ、また会おう」


 ユウキは差し出された手をがっちりと掴み、再開の願いを込め握りしめる。続いて同じように差し出されたレンゾの手を握る。


「ギルドマスターとして、君の活躍をを祈っている。達者でな」


「どうも」


 ユウキは小さく会釈する。手を放し、二人の顔を改めて見直すと、背を向け馬車に向かい歩き出す。荷台に乗り込むと、そこから身を乗り出して、二人に手を振る。


「ほんじゃーねー!」


 ユウキがそういうと御者はそれが出発の合図だと判断し、馬車を走らせ始める。二人の姿が小さくなっていき、やがて見えなくなる。ユウキは荷台の奥に戻り、横になる。次の街に胸を高鳴らせながらユウキは体力を温存するためにゆっくりと目をつぶった。


 





















「おいあんちゃん。ここらへんでいったん休憩とるぞ。起きろ」


 体が揺さぶられる感覚でユウキは目を覚ます。馬車は途中の小さな街の端で止まっており、御者は馬に飲ませる用の水をくむために桶を持ち、近くの井戸に向かっている。


 ユウキは馬車から荷台から降り適当に歩き始める。時間を確認するために上を向くと、太陽は少し傾き始めている。出発したのが昼少し前であることを考えると、現在時刻は昼過ぎ。


 一応確認をとるために、馬車の近くに跪いている御者に尋ねる。 


「なあなあ、俺が寝てる間に太陽っててっぺんに来たか?」


「ああ、来てからそれなりに時間が経ってるよ」


 確認をとったユウキは小さく片手をあげ、感謝を伝えると再び歩き始める。


 ユウキがふらふらと歩き回っているとよさそうな店を発見する。中を覗いてみると時間が時間なためか、客の入りはよくない。


「ここにしよ」


 ユウキは店に入り、案内された席に着く。案内されたのはカウンター席。目の前で店主が調理している。否応なしに料理のにおいがユウキの鼻腔をくすぐり、食欲を促進させる。空腹のユウキはさっそく注文する。


「んーと、適当にスープとパンなんか頂戴。あと何でもいいから軽く食べられる何か」 


 カウンター越しの料理人は小さく頷くとすぐに調理に入る。三分もしないうちにスープとパンが出てくる。パン自体は何の特色もないものだが、スープの中身は野菜がたっぷりである。


「あんた冒険者だろ?どっから来たんだい?」


 ユウキがスープをすすっていると料理人の男が話しかけ始める。ユウキは食事を続けながら、その質問に答える。


「マリチアから来たんだよ。今からさらに西に向かうんだよ」


「へえ、マリチアってと最近騒ぎになったらしいな。巨大なウミヘビを冒険者の連合が討伐したとか」


 店主がマリチアの出来事を剣を振る動きを見せながら話す。明らかにユウキ達のことであったが、別に自分のことであると明かす理由もないため、ユウキは自分であることを伏せたまま応答する。


「ああ。俺も討伐隊に加わって船にいたけど食われそうになったし」


 嘘は言っていない。


「間近で見てたのか!どんな感じだったんだ」


 好奇心につられて店主があの時の出来事を詳しく聞こうと問い掛ける。彼の好奇心に応えるためにユウキは目の前の男にウミヘビ討伐の出来事を説明し始めた。

























 ユウキは男に説明を終えると、残ったパンをスープで流し込む。


「んじゃ、俺はこの辺で。会計してくれ」


「面白い話が聞けたから五百フェズで構わんよ。あと、さっき頼まれたやつだ。サンドイッチにしておいたよ。これ込みで五百フェズだ」


 ユウキは銀貨を渡すと同時ににサンドイッチを受け取り、店を後にした。














「おう、遅かったな。そろそろ出発するぞ」


「悪い悪い。ほれ」


 ユウキは謝罪の意思を見せるために片手を上げた後、サンドイッチの入った紙袋を御者に手渡した。御者はその中身を見て一瞬驚いた表情をし、すぐに顔を綻ばせる。


「すまんな。感謝する」


 御者がそのうちの手を取り食べ始めると思い出したように口を開いた。


「ああ、そういえば伝えておくことがある。同じ方向へ向かうって言ってる他の冒険者が相乗りしたいって言っているんだが構わないか?」


「別に構わんよ。好きにしてくれたまえ」


「それならよかった。事後報告になっちまったから心配してたんだ」 


 ユウキに報告を終えた商人の男は残りのサンドイッチを頬張り始める。ユウキが荷台に乗り少しの間待っていると荷台に男が乗り込んでくる。


「いやー、乗せてもらってありがとうな!多少はお礼はさせてもらうから、……ん?どうかしたか」


 ユウキは一瞬フリーズし、男はその変化に気付き首を傾ける。ユウキとその男はお互いに初対面である。が、ユウキはその男を知っていた。三か月以上前のことであったが、彼のことを知ったユウキの衝撃は大きく、今でもあの時のことを容易に思い出せる。その男が目の前に立っているのだから驚かずにはいられなかった。


 男の体格はユウキよりも少し身長が高く、筋力は同じくらい。少し大きめのズボンとハーネスを装着し、大きなリュックを背負っている。しかし、一番目に付くのは背中を覆い隠すように背負われた、中心が空洞になっている二本の棒。明らかに剣などの武器の類ではなく、さらに自然物ですらない。


 転生者であろう男との出会いは想像していたよりも早かった。



 今章、転生者との遭遇です。彼の特典はいったいどういうものなのか、実力はいかようなものなのか?

次第に明らかにされていくことでしょう。彼とユウキの絡みもお楽しみに!

では、失礼いたします。チャオ。

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