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冒険、始めちゃいました。  作者: カイナベル
第二章 海の町編
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第二十八話 冒険者連合、ウミヘビと戦闘開始しました。

 いや、皆様申し訳ありません……。いろいろあって今日の分が七時までに仕上がりませんでした……。


 そんなことはさておき、今回はちょっと長めな上に私の技量の問題で情景が非常に想像しにくくなっています。どうかお許しくださいませ。


 「お、おい……、あいつ喰われちまったぞ……」


 無情にもユウキが食われる瞬間を見届けるしかなかった冒険者たちのうちの一人が呟く。その衝撃から立ち尽くすことしかできない。中でも精神的ダメージが大きかったのはオルトであり、膝をつき茫然としている。前提として彼らだって素人ではない。依頼の最中むごい瞬間は見た者は数知れず。中には目の前で仲間が死ぬ瞬間を見たものだっている。


 が、目の前で起こった出来事はそれとは違った方向性で衝撃的であった。その一番の要因は海中から現れた蛇であった。頭だけでも五メートルはあり、全体像すら掴むことが出来ない。普通では考えられないほどの大きさは未だかつてないほどの衝撃を冒険者たちに与えた。


 ユウキを飲み込んだ巨大蛇は海面を悠々と泳ぎながら、オルトたち冒険者の乗る船を睨みつけている。その鋭い眼光は歴戦の冒険者たちをすくみあがらせている。もちろんユウキが死んだとは限らない。まだ腹の中で生きている可能性だってある。しかし、このままでは荒れ狂う消化液の波に呑まれるのも時間の問題だろう。それまでに助けるか、それとも見捨ててこの場から撤退するかを決めなければならない。


 が、それを決めるオルトは全く別のことを考えていた。


「あの鱗の色と模様、まさか……」


 無意識のうちにオルトの手の中に握りこまれる父の形見を加工したペンダント。姿を見た瞬間、彼の頭の中はそのことでいっぱいになる。その生物の表皮は彼に唯一残された形見の鱗にそっくりであったのだ。しかし、普通に考えればその可能性は非常に低い。この広い海で偶然父を殺した張本人と遭遇するなど一体どれほどの奇跡だろうか。しかし、その考えにオルトが至ることはない。現在の彼の頭の中は復讐でいっぱいであり、他のことなどまるで目に入っていない。どうやって奴を討伐するかしかなかった。が、それも長くはもたない。というより持たせることが出来なかった。


「おい、オルト!どうすんだ!退くのか戦うのかの指示をくれ!」


 オルトは他の冒険者の声にハッとし現実に引き戻される。現実に戻って来たオルトは、これからどうするかを考え始める。レギーが戻ってきた以上、今回の依頼は達成されている。蛇の討伐は二の次であり、ユウキ救出なんて優先順位としてはそのさらに後である。指揮官としてはここで撤退するのが間違いのない選択だろう。しかしユウキを見捨てて帰還するのは指揮官云々ではなく友人として嫌だった。さらには目の前に仇がいる。それに対して背中を向けるというのは、オルト自身考えただけでも腹が立った。


 が、今のオルトの立場は全員の命を預かる指揮官である。自分のことを優先して全員の命を危険にさらすわけにはいかない。しかし、目の前の敵から逃げ出すのも嫌で仕方ない。二つの間で葛藤するオルトが十数秒ほど悩みに悩んでやっと結論を出す。それを言葉として絞り出し冒険者たちに指示を出す。


「……全員撤退だ。レギー殿を連れて帰るぞ……」


 指揮官の指示に従って甲板の全員が動き始めるようとする。しかし、オルトの指示はそれで終わらず後に続く。


「だが、奴がこちらを攻撃してきた場合は、全力で迎撃の体勢を取れ!」


 それを聞いて冒険者たちの間に一瞬ざわめきが起きる。船と蛇の距離はかなり詰まっており、近いうちに接触する。振り切ることが出来るほどのスピードが出ていない今の状態では、確実に戦闘に入ることになる。オルトの指示通りでは戦闘は免れなかった。彼だって素人ではない。そんな彼からもたらされたあまりにちぐはぐな指示に彼を知っている者は動揺が隠せない。


 本来であれば、早急に撤退の指示を出して保護した人物を最優先に船に乗る全員の安全を確保するべきだった。が、人間の感情というものはそう簡単なものではない。奴がそのまま追ってきたら戦い、背を向けたらそのまま撤退する。端から見れば折衷案のような指示。しかし、奴が突っかかってくると考えたオルトにとっては一択でしかない。レギーを無事に連れ帰ることさえできれば問題と考えているような作戦。


 だが、さすがは海の男たち、もとい冒険者集団。オルトの指示の本質を理解したわけではない。オルトの指示を噛みしめた男たちは武器を手に取り一斉に雄叫びを上げる。もともと血の気の多い冒険者たち。彼らはオルトの指示にノリノリで乗っかった。


「来るぞー!」


 冒険者の一人が大声でウミヘビの襲来を告げる。その直後、ウミヘビが空を見上げながら体を持ち上げ船に体を叩きつけた。しかし、オルトたちの乗る船の頑丈さはマリチアの船の中でも折り紙付き。船が軽く傾くだけで、甲板どころか船には傷はほとんどつかない。甲板に身を投げたウミヘビに向かって冒険者たちが雄たけびを上げながら、突進する。が、いきなり蛇が体を振るようにして暴れはじめる。それによって飛び掛かっていた冒険者たちは吹き飛ばされる。幸いなことに冒険者たちが負った怪我はせいぜいかすり傷程度で重傷を負ったものは一人もいない。


 甲板から体を持ち上げ直立するように体を持ち上げ暴れるウミヘビは力が抜けたように倒れこみながら海の中に消えていく。その姿を見届けた冒険者たちは蛇に備えて陣形を組み始める。陣形を組み終わった直後、再びウミヘビが姿を現す。今度は冒険者たちを殺気の籠った視線で睨みつけると、細く鋭い声で威嚇する。そして船に飛び掛かると船にその長い体を使って巻き付いた。その体で甲板を広く陣取るとともに。巻き付いた体でマストが締め付けていく。強靭であるはずのマストがその威力でミシミシと音を立てる。 


 しかし冒険者たちもそれを黙ってみているわけがない。巻き付いた体に跳びかかり手に持つ武器を突き付けていく。突き付けられた武器は蛇の身体に傷をつけていき、赤い血が甲板を染めていく。が、強力な筋肉が阻んでいるのか、内臓まで入っていかない。


「怯むな!どんどん攻撃しろ!深くまで行かなくても出血させればいい!」


 オルトの指示でさらに士気を挙げた冒険者たちは遮二無二攻めていく。ウミヘビの身体の傷が増えていき、ウミヘビの傷が遠目にもわかる程増えたころ、ウミヘビが群がる冒険者に耐え兼ねて、船の後方に陣取っていた尾を振り回す。冒険者たちはそれを躱すことが出来ず吹き飛ばされていく。吹き飛ばされた冒険者たちは甲板に転がる、船べりにぶつかる、海に落ちるなどのアクションを見せる。


 先ほどまでとは打って変わり、負傷した冒険者の救護等で甲板が慌ただしくなりウミヘビに気を向けることが出来なくなってしまう。その間、ウミヘビは先ほどまで振り回していた尻尾を甲板に一度叩きつけ再度威嚇する。が、大半の冒険者に構っている余裕はなく見ているのはオルト含めてせいぜい十名程度である。アドレナリンが出て気づかなかったその大きさに圧倒されている。


 しかしオルトは剣を構え切っ先を突き付ける。ウミヘビへの恨みか、冒険者たちを率いるリーダーとしての責任感か、何がそれをさせたのかはわからない。しかし、ウミヘビにとってはそれだけで彼に怒りを向けるに値する。構えた剣を見て牙をむき怒りの表情を見せる。目障りな冒険者たちを排除するため、ウミヘビは体をくねらせながら冒険者たちに迫る。足のすくんでいる冒険者たちは動くことが出来ない。それを見てオルトは彼らをかばうようにして冒険者たちの前に立つ。


 オルトとウミヘビの距離が五メートルもないほどに近づいたとき、ウミヘビに異変が起こる。ウミヘビがいきなり足を止めのけぞりながら暴れはじめる。唐突な行動に足がすくんでいた冒険者たちはハッとし、各々行動を再開する。その中でオルトはウミヘビを躱しながら疑問を口に上げる。


「なんでいきなり……」


 いきなり暴れはじめたウミヘビは何人かの冒険者たちを吹き飛ばしながら未だに暴れ続けている。その行動に疑問を持ったオルトは注意深く観察する。すると血とともに滴り落ちている液体が目に留まった。 


「もしかして……、海水、なのか?」


 海から上がってすぐのウミヘビの身体には表面張力で大量の海水がついている。それが傷口に入った痛みで暴れはじめたのだとオルトは推理した。そもそも海棲生物であっても水に強いのは外表だけ。内側も強い訳ではない。海水が傷口に入り込んでは痛いに決まっている。そう考えたオルトは手の空いている冒険者たちに指示を出す。


「何にでもいい!海水を汲んで準備しろ!奴は今海水に弱い!」


 その指示を聞いた冒険者たちは戸惑いながらもバケツを船内から持ってくる。オルトは暴れくるっているウミヘビの身体をよけながら近づいていくと手に持った二振りの剣をウミヘビに突き付ける。暴れているウミヘビの件を突き立てたまま暴れるために自身の力で自らの体を切り裂いていく。その最中、冒険者によって海水がウミヘビの身体にかけられる。海水をかけられると同時に再び暴れはじめたウミヘビは逃げるようにして海に飛び込んでいく。その様子を見て、冒険者たちは両手を上げて反撃できたことの喜びの声を上げる。が、ただ一人オルトだけ疑問を覚える。


(海水がきつい状況で普通海に逃げるか……?何か別の影響で……)


 オルトがそう考えているとそんな暇はないと言いたげに再びウミヘビが海から顔をだす。その顔は明らかに怒りに染まっており、喜びで騒いでいた冒険者たちはその圧倒的な殺気に息をのみ身をすくませる。


 ウミヘビは怒りに身を任せて、船上を暴れまわる。引き上げられた冒険者が再び落とされ、その巨大な体を叩きつけられた冒険者は衝撃で吐血、骨折等のけがを負うなど船上はパニックになる。そんな中自身もパニックになりそうな気持ちを抑えながらオルトは指示を大声でだす。


「落ちた者を引き上げる人数を最低限にして、縄や剣を使って動きを抑えろ!完全に止めなくていい!被害を最小限にするんだ!」


 オルトの指示で冒険者たちは動き始める。素早い行動でウミヘビの身体に鉤付きの縄が巻き付けられていく。ウミヘビが逃れようと暴れると余計に縄が絡み突き、ウミヘビの動きが鈍っていく。絡みついている縄を取ることを諦めたウミヘビは逆にそれを引く冒険者を振り払おうと身をよじるが、冒険者たちの意地で振り絞られた力で非常に強力。振り払うことが出来ずに逆に動きが止まっていく。


 が、冒険者の方も押さえつけるので精いっぱいで攻撃に転じることが出来ない。他の冒険者たちも治療等で手が回らない。肝心のオルトも押さえつける側に回っているため攻撃ができない。船上の誰も行動できない状況。ウミヘビに攻撃するものが一人もいない。


 オルトがその均衡をまずいと感じ、縄を離してでも攻撃するべきかと考えたその時、ウミヘビの行動が違和感あるものに変わる。いきなり口元に力を入れ食いしばるような表情に変わる。それに力を使っているのか体の力が弱まり、冒険者たちは戸惑いながらも完全に抑え込むことに成功する。口元を観察していたオルトは異変に気付く。横一文字に結んでいた蛇の口が徐々に持ち上がっていく。開き始めた隙間は大きくなりその奥が見え始める。その奥にはいたのは先ほど姿を消した人物。オルトはそれを見て声を上げる。


「ユウキ!」


 先ほどウミヘビに食われたはずのユウキが鬼の形相でウミヘビの顎を持ち上げていた。半分ほど持ち上げたあたりでユウキが船上の人間に聞こえるほどの雄たけびを上げ、ウミヘビの顎を完全に持ち上げた。


「ブグラッシャアラアああああ!!!」


 そして自分が抜け出ることが出来るほどの隙間が空いたところでそこに飛び込むようにしてウミヘビの体内から抜け出した。重力で甲板に叩きつけられたユウキは痛みで悶絶しながら、転がって移動しウミヘビから距離を取る。そんな彼にオルトは駆け寄っていき、体を起こす手助けをする。その最中自分の疑問を問い掛ける。


「お、お前、どうやって上がってきたんだ!?てっきりもう胃液で溶かされちまったかと……」


「手に持ってたナイフで無理やり上がってきたんだよ!暴れるもんだからしんどくて仕方なかったよ、くそっ!」


 ユウキは立ち上がりながらオルトの質問に答える。苛ついているのか若干荒い口調が荒い。肩にかかったオルトの手を乱暴に払うと、八つ当たりのように手に持ったナイフを投げつけた。


 手を払われたと同時に思考が纏まりウミヘビの暴れていた理由を理解する。ユウキが手に持っていたナイフには血がべっとりとついている。オルトはユウキがナイフを楔のように打ち込むようにして上がってきたのだと、ウミヘビが何度か暴れていたのは海水の痛みではなく体の中でナイフを刺されている痛みであることをはっきりと理解した。


 ユウキは忌々し気にウミヘビを睨みつけた。睨みつけられたウミヘビは痛みを与えた張本人であるオルトを殺気を込めた視線で睨みつける。お互いに睨みつけあう形になった二人。二人の内、先に視線を外したユウキは甲板に置きっぱなしにしていた大剣に駆け寄り手に取る。大剣を担ぐように持ったユウキはウミヘビに向かって突進していく。それを見たウミヘビは今までのことを思い出し激昂し、身体に全力を込める。その体を振るい拘束を振り払うとユウキに襲い掛かる。ユウキはその突進を剣を挟み衝撃を和らげることで受け止める。が勢いを低下させることはできない。ウミヘビは勢いに任せてユウキを押し続け、甲板に衝突させる。


 甲板とウミヘビに挟まれたユウキは肺から息を漏らし苦悶の表情を浮かべる。それを見たウミヘビは再びオルトを食らおうとゆっくりと口を開いていく。しかし口を開く過程で甲板に押し付けられていたユウキの身体が自由になる。その瞬間をユウキは見逃さなかった。大剣を逆手に持ち替えると自ら口の中に突進していく。ユウキが入ると同時に口が閉じられる。勝利を確信したウミヘビはユウキを飲み込むため、上を向こうとするが下顎が謎の力で押さえつけられ上を向くことが出来ない。


 ユウキの奇天烈な行動に戸惑いながら、縄などを持ってウミヘビの行動に備えていた冒険者たちの行動が一度止まったところでウミヘビの下あごが不自然に盛り上がっていく。その直後、ウミヘビの下あごから大剣が生える。その痛みで力が抜け甲板に横向きに倒れこんだウミヘビに追い打ちをかけるかのように下顎から生えた大剣が上下に動かされ切り裂かれていく。倒れこんだウミヘビは無理やり頭を動かそうとするがさらなる力で抑えこまれてしまい、完全に頭を動かすことが出来なくなる。


 動きの止まったウミヘビにいち早く行動したオルトは両手の剣で体を切りつけ始める。それを見たほかの冒険者たちも切りかかり、さらなる傷を作り上げていく。その痛みから逃れるために蛇は体をよじらせるが頭が押さえつけられている影響でまともに動くことが出来ず、体を小さくくねらせるだけに終わる。


 冒険者たちの怒涛の攻めでウミヘビの動きが小さくなってきたところでウミヘビが最後の抵抗に出る。最後の力を振り絞って全身を鞭のように振るい、纏わりついていた冒険者たちを振り払う。そしてそのまま海の中へ飛び込んだ。


「おい!奴が逃げるぞ!」


 体をくねらせて海に進むウミヘビここまで来て倒すことが出来ないのかとオルトは強く歯を食いしばる。だが、この時オルトは必死過ぎてもう一人の冒険者の存在を忘れていた。ウミヘビが頭を海に投げ出したところで、浮遊感にユウキは気が付いた。この浮遊感の正体が海に逃げ出したものだと判断したユウキはとどめを刺そうとする。下顎を斬りつけていた大剣を引き抜くと剣先を上に向ける。その先には生物の弱点、脳が存在している。このまま突き上げればウミヘビは一撃で死に至る。


「フンッ!」


 ユウキは全力で剣を上顎に突き立てる。剣先が上顎に軽く刺さったところで持ち手を強く蹴り上げ、さらに深くまで突き刺すとそれを鍵を捻るようにして九十度回転させる。。大剣が貫通したことを確認したユウキは急いで大剣を引き抜きもがくようにして口の中から脱出する。脱出したユウキが見たのは頭から血を流しながら海底へと沈んでいくウミヘビの姿だった。


 沈んでいくウミヘビを見送ったユウキは急いで浮上する。海面に顔を出すと船上の冒険者たちが覗き込むようにしてユウキの動向を伺っていた。その表情は不安半分、期待半分といったところだ。散々彼らを苦しめたウミヘビの動向を見ることのできたのはユウキのみ。彼の口からはっきりとした言葉で聞きたいのだろう。奴がどうなったのかを。


 ユウキは無言のまま自信たっぷりにサムズアップを見せつける。それがウミヘビの死を告げるものふぁというのはよほど空気の読めない人物でない限りすぐにわかる。ユウキのサムズアップを見た冒険者たちは一拍空けた後爆音の勝鬨があげる。勝鬨はユウキの引き上げを要請する声をかき消しながら水平線の向こうまで響き渡る。冒険者たちが勝利の余韻に酔いしれている間、ユウキは必死に冒険者たちに呼びかけ続けた。


「おぉーい!はやぁーく!俺を引き上げろー!」


 この後十分近くユウキは放置され続けた。


 いかがでしたでしょうか。ほんとにね、私の技量じゃここが限界なんです……。もっといろいろ読んで描写を勉強しなくちゃなりませんねほんと……。

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