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冒険、始めちゃいました。  作者: カイナベル
第二章 海の町編
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第二十四話 リゾート地、なぜか寂れかけてました。

着々とツイッターのフォロワーが増えていく。皆様本当にどうもありがとうございます……。

それと同時にPVが500超えました。重ね重ね感謝の意を伝えさせていただきます。

皆様の期待に応えられるように(んなもんあるかは知りませんが)頑張りますので応援お願いいたします。


「ヴォオェェ……、ギボチワルヒ……」


「おい大丈夫か?おら水だ。これ飲んで吐いとけ」


「あ、あざっす……」


 ユウキがマリチアについてから数えて一か月ほど。彼はオルト達と別れてフィリウス行きの船に乗り込んでいた。目的は言わずともわかるだろう。温暖なリゾート地と聞いてとてもワクワクしているユウキは現在船酔いに苦しみ続けていた。一日目でグロッキーになっており、それが三日も続いている。買っておいた食料にほとんど手をつけられず、水を飲むのですら辛くて仕方ない。ユウキはげっそりとした表情で甲板に寄り掛かって潮風に当たっている


「もう少しで着くから間違っても甲板には吐き出すなよ」


 船員の一人の忠告にユウキは軽く手を振ることで答える。それをみた船員は大きく鼻息を吹き出しながらその場を離れた。ユウキは瓶の中の水を一気に飲み、その直後気持ち悪さですべて海に吐き出す。しかし、それが功を奏しだいぶすっきりとしたユウキは立ち上がり気を紛らせるためによたよたと甲板の上を歩き始める。


 航海自体に大きな問題はなかったため、フィリウスに着くのも時間の問題。今日中に着くだろうということをユウキは人づてに聞いていた。地獄のような三日間の航海。ずっと船酔いで苦しめられ続けていたが、楽しかったことが無かったわけではなかったためどうにか相殺できているだろう。まあ、どうやってもマイナスから変わることはないだろうが。


 潮風を浴びながら甲板を散歩すること一時間。船員達の動きが活発になり始め、甲板の上が慌ただしくなる。推進力を得るためにぴんと張られている帆から垂れ下がっている紐に船員がついていく。それをみたユウキは船員の一人を呼び止め問い掛ける。


「もうすぐ、着くのか?」


「ああ、今から着岸の準備だ。降りる準備をしておけよ」


 船員はユウキの返答を聞くことも無く急いで走り出す。それを見送ったユウキは海をのぞき込む。海の色はいつの間にか濃い青から淡い青に変わっており、うっすらと海底が確認できる。景色を見てテンションが上がったユウキは船員の言葉に従い、降りる準備のために自分の寝床へ向かった。













「着いたぞー!」


 海に向かって喜びの声をあげるユウキ(もちろん空元気である)。彼の体は水で濡れており、見ただけで彼が海に飛び込んだことが分かる。


 ユウキの初めてフィリウスを見た感想は『過去最高の自然』だった。


 島のあちこちに生えている木はどれも五十メートル以上の高さを誇っており、島の中心近くには一際高い百メートル以上の大木がそびえ立っている。さらにそれらには蔦やその他の植物が生えており天然のジャングルジムのようになっている。海は透明度の高い青と白い砂浜が絶妙なコントラストを生み出している。少し離れた所には森のようにサンゴが大量に生育しておりその周りを小魚達が優雅に泳いでいる。というより辺り一帯の海全体でまばらに小魚が泳いでおり、現に水につけているユウキの足には小魚たちが二、三匹群がっている。


 自然が作り出す雄大さに見とれていたユウキだったが、荷物を抱えた船員たちの喧騒でユウキは正気を取り戻す。


(まあ浮かれるのはここまでにしておいて。まずは寝床を確保しなきゃな)


 荷物を持ち、ふらついた足取りで砂浜から集落の方へ向かう。その道中、観光客向けらしい建物が多く見えたがそこに人の姿はなく辺りにはユウキの足音のみが響いている。リゾート地と聞いていたのに人がいないことに不可解さを覚える。


 そうしているとこの島の集落らしき場所に辿り着く。集落は砂浜から少し内陸に入ったところに存在しており木々と人工的な柵によって囲まれている。門を潜り、集落に入るとそこには木と葉っぱで作られた風通しのいい高床式の家が建っており、その間を人々が行き来している。その中でもひときわ大きく頑丈に作られた集会場に足を踏み入れる。しかし、そこにはマリチアのような活気はなくギルドの職員が数人カウンターで書類仕事をしている程度である。今まで賑わいのある集会場しか経験していないユウキには少々新鮮だった。


 ユウキが入ってきたことに気づいた職員はカウンターから移動し、カチューシャで抑え込まれた金髪のボブカットを揺らしながら、ユウキに軽く挨拶をする。


「ようこそギルド集会場フィリウス支店へ。私アリスが担当させていただきます」


「よろしく。早速だけど宿の場所を教えてもらえるか?」


「それはもちろん構いませんが、その前にこちらで受けてもらいたい依頼があるのです。緊急の依頼なので報酬は弾ませていただきます。よろしいですか?」


 頭を下げ懇願する少女を見るユウキの頭の中には緊急という文字が引っ掛かっていた。やってきたばかりの冒険者であるユウキにいきなり依頼を出すというのもおかしな話であるし、そもそもここまで冒険者がいないというのも珍しい話である。しかしユウキは冒険者だ。報酬を出すと言われれば検討しなければならない人間である。まずは依頼の全容を把握することにし、その旨をアリスに告げる。


「まずは内容聞かせてもらわないと。とりあえず聞かせてくれ。受けるかはその後だ」


 ユウキがそういうとアリスは表情を変えユウキの手を掴む。そのまま集会場の奥へと引っ張っていく。リュックなどを背負ったユウキの体重は相当のものだろうが、それを感じさせない力でユウキを引っ張っていく。来客用の部屋に案内されたユウキは対面に座った少女に問いかける。


「で、依頼内容は何だ?」


「はい、依頼内容は最近島の沖合に出没する巨大鮫の討伐です。一か月ほど前からでしょうか……、沖合に巨大サメが出没するようになり、それに島の漁師などが襲われるようになってしまい漁に出られず困っているのです。さらにサメの影響で観光客が激減しているんです」


「なるほど、さっさと終わらせたいから緊急の依頼ってことか。俺に頼んだのは頼む冒険者がいなかったせいなのか?」


「はいその通りです。この島に冒険者が来ることはあまりありませんので……。漁師たちも討伐しようとしたのですが、その際に犠牲者が出てしまい……それからは手を出さなくなってしまいました」


 遮るようにして本質を付いたユウキの言葉にアリスは無条件の肯定と補足をする。が、ユウキはアリスの依頼内容の説明に違和感を覚える。


「ん?ちょっと待て。漁(・)師(・)な(・)ど(・)?なんか変な言い方だな?」


 ユウキが疑問を呈するとアリスが思い出したように言葉を発する。


「ああ、そのことですか。この島の漁は少々特殊な方法を使って行うのです。人間と動物が協力して行うのですが……」


「動物? 鳥とかか?」


「いいえ、イルカです」


 予想の斜め上、しかしよくよく考えてみればありえそうな動物の名前にユウキは感嘆の声を発する。イルカという生き物は非常に賢く、人間に対しても非常に友好的な生き物である。イルカショーが非常にいい例だろう。友好関係を築くことができれば漁をすることも不可能ではないだろう。


「いかがでしょうか? 受けていただけますか?」


 ユウキの思考はアリスの問いかけで遮られる。今回の依頼内容をユウキは理解した。がサメという、水中戦を強いられるかもしれない相手に報酬が少額、というのはごめんこうむりたいというのがユウキの正直な感想だった。受けるかの決定は報酬を聞いてから、というふうに結論づいた。


「で、結局報酬は?あと依頼には関係ないけど宿の料金を教えてくれるか?」


「あ、はい。報酬は五万フェズになっています。宿の滞在費は、……確か一週間で五千フェズほどだった気がします」


「よし、乗った。その依頼受けさせてもらうよ」


「ありがとうございます!」


 アリスは立ち上がり深々と礼をすると書類を持ってくるために部屋から飛び出していく。それを見送ったユウキはポーチの中身を整理しながら待つ。少し経ち、帰ってきた彼女の持ってきた書類にサインしたユウキは立ち上がり、宿を取るためにアリスに場所を聞く。


 宿の場所を聞いたユウキは早速そこに向かおうとするが、その前に一つアリスに問いかける。


「あ、一つ聞いてもいいか? この森に生け捕りにできるような生き物って棲んでるか?」


「はあ。モスボアーやティニーラビットなどが生息していますが……。どうされたんですか?」


「依頼の下準備みたいなもんかな。必要なもんがあったらその都度聞いていくから、そん時はよろしくな」


 きょとんと立ち尽くす彼女を尻目にユウキは宿を目指して歩き始める。宿に荷物を下ろしたユウキはまずは休息を取るためにベットに寝転がる。船酔いで航海中はあまり寝付けてなかったユウキはベットに寝転がるとすぐに寝息を立て始めた。


















 翌日、荷物を整理したユウキは木材を買い、部屋の中で工作に励んでいた。木材を格子状に組み、長方形に組んでいく。その一面は可動するように組まれており、さらにその一面にはひもがつけられている。


「よし終わり!これでウサギ生け捕りにしてやるわ」


 手製のトラップの完成である。これにかかるかどうかはユウキ自身も不安であったが、毒を使わず生け捕りにする以上、下手でもこういうものを作った方が速い、というのがユウキの持論だった。


「一個で足りるかは不安だけど……、まあいい。最悪頭数そろうまで追い回そう」


 罠を片手にユウキは宿を出て森に向かう。森の適当な場所に罠を設置したユウキは森の中の散策を始めた。森の中は木々がうっそうと生い茂っており、その中を虫や小動物が生息している。木の幹に張り付いているヤモリ、足元を動くことなくユウキを見ているカエルなど。しかしそんな中でもやはり異世界だと感じさせるのは大きさだろう。ヤモリやカエルは三十センチほどほどある。これでもこの島ではまだ小さいサイズだとい。この島の生物は大体そうだと聞いてユウキは卒倒しそうになった。


 散策し始めて数分でウサギを見つけたユウキは、出来るだけ音をたてないように近づいていき間合いを潰す。ウサギの注意がそれた瞬間、見計らってウサギに飛び掛かった。いきなり飛び掛かったユウキに対応できなかったウサギは逃げることができずにユウキの腕と体で作られた檻の中に閉じ込められる。


 ウサギの足を掴んだユウキは、行動できなくなるようにナイフで足の筋肉を切断する。苦しそうに悲鳴を上げたウサギは脚が動かせなくなり、それに伴って逃れようとする力も弱まっていく。暴れる力の弱まったウサギの足を縛り、そこら辺に落ちていた木の棒に括り付けていく。ウサギは苦しそうに鳴き声を上げながら逃げ出そうとするが、武器である機動力が完全に失われているためもがくだけに終わっている。その光景を見たユウキは心が痛むが依頼をこなすため、と割り切りウサギを括り付け終わる。


 括り付け終わったユウキが顔を上げるとさらにもう一匹ウサギを見つける。ユウキの一連の行動を見ていたのか、ユウキが気付いたことに気付くと一目散にその場から逃げ出す。ユウキはウサギが括り付けられた棒を持ったまま、逃げ出したウサギを追い回し始めた。















 翌日、ユウキは生け捕りにしたウサギ四匹を持ち、砂浜に向かって歩いていた。その隣をアリスが心配そうな顔で歩いており、さらにその後ろには小舟の乗った荷車を引く男性職員がいた。


討伐のためのプランを頭の中で確認しながら歩いていたユウキは、確認を終えたところでアリスの問いかけに足を止める。


「あの……、大丈夫なんですか?確かに討伐のために沖に出なきゃ行けないというのはわかりますが、こんな小さな船では……」


「確かに不安っちゃ不安だけど早いとこ終わらせなきゃ行けないんだったら多少危ない橋も渡らなきゃ行かんでしょ。ダイジョブダイジョブ」


「……でしたらこれ以上止めはしません。ご武運を」


 そういったアリスはユウキに背を向け集落の方へ歩き始める。見届けてくれてもいいのに、と思ったユウキであったが、彼女にも用事というものがある。無理に引き留めることはできない。後ろにいたはずの男性職員はいつの間にかユウキを追い越している。依頼に出るはずの自分が遅れてはいけないとユウキは小走りで砂浜に向かった。

 

 砂浜に着いたユウキは降ろされた船に木の棒にナイフを括り付けた手製の投げ槍やウサギたちといった荷物を載せ、職員に礼をする。その礼を見た職員はユウキに忠告のようにつぶやく。


「今回のサメは相当大きいらしいから、気をつけろよ」


 彼はそういうとユウキを見ることなく集落の方へ戻っていく。彼の忠告を心に止めたユウキは、オールで漕ぎ出し大海原へと繰り出した。










「この辺でいいか……。よし、始めるぞ!」


 ユウキは舟をとめ討伐のための準備を始める。生け捕りにしていたうちの一匹を棒から外しその足を紐にくくりつけるその紐のもう一方の先には太い木の枝が括りつけられている。しっかりとウサギを括ったユウキは一度ウサギを置くと腕につけていた潜水用マスクの準備をする。準備の終わったマスクを付けたユウキは腰からナイフを抜くとそれを躊躇なくその刃を突きつけた。力なく息をするウサギは小さく悲鳴を上げる。その小さな体から赤い血が流れていくが、それを見てユウキに躊躇っている暇はない。ウサギが繋がった紐を振り回し始めると、いわゆるハンマー投げのように海へと投げ飛ばした。


 ウサギから流れ出た血はうっすらと海を赤く染め始める。その光景を見たユウキはもう片方についた枝を持ち上げると、ゆっくりと舟に腰を下ろした。


 ユウキが討伐のためにとった手段は単純明快。フィッシング。今回ウサギを生け捕りにしたのは新鮮な血をサメにかがせるためである。サメは血の臭いから獲物を位置を把握する。ユウキはこれを図鑑で読んだことがあり、今回の依頼を受けた時真っ先にこれが脳内に浮かんだ。そして即座にこれを作戦の鍵にすることを決めそのために行動していた。この性質を利用すればサメを誘導することができる。誘導ができればユウキの動きたいように行動しやすくなる。釣りではサメに力負けしてしまうのではないか、ともユウキは考えはしたが、さすがに海に潜って水中戦をするよりはましだと考え作戦のメインを釣りにした。


 海に投げ込んだウサギを観察していたユウキは、視界の端で海を切り裂きながら進む背びれを発見する。ものすごいスピードで進むそれを確認したユウキは綱をしっかりと握りしめたまま、槍を手に取る。そして綱の感触から食いついたのを確認したユウキは、その背びれに向かって槍を投げつけた。





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