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冒険、始めちゃいました。  作者: カイナベル
第二章 海の町編
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第十七話 道中、トラブったけど解決しました。

ブックマークが初めてついた!つけてくれた方ありがとうございます!

これだけでも非常に励みになります。これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします!

 ユウキが商人の依頼を受けて早三日が経過した。もちろん道中でトラブルが起こらないなどということはなく、二、三度ゴブリンやニンビルウルフの襲撃を受けることとなった。しかし今のユウキがすべきことは依頼者を守ること。やるべきこととやりたいことを分けなければならない。討伐したい気持ちをぐっとこらえ、依頼優先、護衛優先。商人の安全第一に逃げと守りと優先しての行動。これが功を奏し、ユウキも商人も無駄な傷を負うことなく道中を進むことができた。

 

 この仕事ぶりに商人もにっこり。感嘆の声を上げ、報酬の増額を計ろうとする始末。が、ユウキとしては普通に依頼をこなしているだけであり、特に増やしてもらおうという気もなくまして素晴らしい働きをしたとも思っていないため、その申し出は拒否することにした。

 

「しっかし、あんちゃん。本当に二か月のキャリアかい? 冒険者になる前は傭兵でもやってたのか?」

 

 馬を操る商人はユウキを見ることなくユウキの出自を問いかける。しかし、別に話したところでいいことがあるわけでなし、おかしなことになりかねないため、適当に誤魔化す。が、今回は嘘をつく必要はない。この世界にも教育機関というものがある。サリーナとの世間話でそれをつかんでいるユウキは特に難しい設定を組み込むことなくすべてを明かすことなく、答えを口に出す。

 

「冒険者になる前は普通に学校に行って、勉強してたよ」

 

「ほおん。戦いとは無縁で勘定ばっかりしてたわけだ。それでこの働きだとセンスがあるんだな」

 

「うれしいことに、よく言われるよ。」

 

 ユウキと商人が暇つぶしの世間話をしていると、馬車の荷台に小鳥が飛び込んでくる。三日経ちさらに食事をとった小鳥は大きくなり、今ではユウキの顔程まで成長している。その小鳥はユウキの隣に止まると、嘴で三度近くの箱を叩くと大きく一度ピーと鳴く。

 

「何人?」

 

 小鳥はユウキの足元に散らばる数字番の内の三をくちばしでつつく。それを見たユウキは置いていた大剣を肩にかけ、ポーチにしまっていたナイフを取り出しやすいようにベルトに挟み込む。

 

 ユウキがこの小鳥と過ごして気づいたのは知能の高さだった。鳥の中には知能が高い種類がおり、例えばカラスは人間の六歳児程度の知能は持っているというのが俗説だ。この小鳥はそれと同等、あるいはそれ以上の知能を持っており、飛んでいったかと思えば敵を発見、その数を認識しユウキに伝えるところまでを実行するという恐ろしいまでの知能を誇っていた。

 

 なぜここまで付き従ってくるのかはユウキにはわからない。しかし好意的に協力してくれている。これを使わない手はなかった。 

 

「適当に速度を落としておけ。この先に敵がいるみたいなので対応してくる。」

 

「わかった。気をつけてな」

 

 ユウキは馬車を飛び出し走り始める。そして馬車から二百メートルほどの距離が取れたのを確認したユウキはさも一人で旅をしているかのように振る舞いながら道を歩き始めた。大根過ぎる演技であったがそれでも引っかかる人物というものはいるものである。五十メートルも歩かないうちに道の脇から悪人面の二人組がのこのこと姿を現し、ユウキの進路を塞いでしまう。しかしこれでは小鳥の人数報告とのつじつまが合わない。どこかに潜んでいるのだろうかと考えていると、悪人面の一人が口を開き、しゃべり始める。

 

「そこの若いの。ちと悪いんだが、金を貸してもらえねえか」

 

 男の提案にユウキは薄ら笑みを浮かべて、質問する。

 

「逆に聞くけど、貸したとしてとして返ってくるの?」

 

 ユウキの薄ら笑いと質問が癇に障ったのか、男たちは途端に不機嫌そうに睨みつけるが、すぐににやにやとした表情に変わり腰に手を当てる。

 

「さらに質問で返すようで悪いが、返ってくると思ってんのか?」

 

 男二人は同時に腰につけた剣を引き抜き、ユウキに突き着ける。それを細めた目で見ていたユウキは突如として後頭部に衝撃を受ける。不意に訪れた衝撃に意識が朦朧とするが、倒れこむ前に足を前に出し体勢を整えると、背中の大剣に手をかける。そしてそれを全力で抜き放ちながら軸足を中心に一回転する。

 

「どぅるうあ!!!」


「グボァ!」


 すると大剣の腹に先ほどまではいなかった男が直撃しその衝撃で吹き飛ばされる。乱雑に振るわれた大剣であってもその衝撃は凄まじく、男は腹部を抑えながらのたうっている。


「お前ら、こういうの初めてだろ」


「な、なんで」


 男たちは大剣片手に下を向き頭をさすっているユウキをうろたえながら見つめている。今、彼らが思っているのは二つ。なぜ倒れないのか、そしてなぜ初めてだと分かったのか。後者に関しては別にどうでもよかったが、後頭部を全力で殴ったにもかかわらず意識が飛ばないというのは疑問でしかなかった。しかし、ユウキとしてはどちらも一つのことで易々説明できる。


「……人の身体ってのは意外と頑丈でな。後頭部ぶん殴られて気絶ってのはあり得ないんだよ。普通だったら何も言わずに後ろから刃物でグッサリのほうが早い。さて……」


 説明を終えたユウキは頭を上げると倒れている男のもとに向かい、彼の腹部を抑えている手の上から踏みつける。


「一つ提案なんだが、ここに金鍍金貨がある。こいつと俺たちの安全を交換だ」


「……もし断ったら?」


「こいつの位置がほんのちょっとだけずれることになる」


 ユウキは無言のまま大剣を男の顔の横に突き刺す。暗に彼を殺すといっているのだ。確証はないが、まず間違いなく断れば彼は無残な死を迎えることになるだろう。彼が殺されたあと、二人掛かりでかかってもまず無傷ではすまない。ユウキの指摘通り彼らは素人であり二か月といえど冒険者として実践に身を置いたユウキを制することなどできない。彼らに断るという選択肢はない。


「……わかった」

 

 十数秒ほど経ち返答が返ってきて交渉が成立する。交渉が成立したのを確認したユウキはすぐさま行動に移る。彼らを道から十分に離れたところまで誘導すると金鍍金貨が二枚入った袋をナイフで木の幹に差し込む。その際に両手を上げながら離れ、何もしていないことをアピールすることを忘れない。そして馬車が近づいてきたところで馬車に駆け寄り飛び乗ると速度を上げるように指示を出す。彼らの動向を注意深く観察しながら完全に見えなくなったところで安心したようにほっと息を吐く。


「しかし、急に全速力でなんて言うから驚いちまったよ。なんかあったのか?」


 馬車を操る商人はユウキのほうを振り返りながら心配そうな表情で問い掛ける。事の顛末を説明すると商人は驚いたように表情を変え声を上げる。

 

「てことは二十万フェズくれてやったってのか!?ずいぶん気前がいいというかなんというか……」

 

「金で解決できるんだったら金で解決したほうがいい。安全を買って無駄に人を殺さずに済んだんだから安いもんでしょ」


「まあたしかにそうだが……」


 商人である彼にはユウキの言い分がよく理解できた。金で面倒を解決できるのならばそれは一番いい解決法と言えるし、賢い金の使い方である。商人である彼はそれを理解していた。商人は頷きながらユウキから前方へ視線を移すと、口を開いた。


「それよりとりあえず頭の傷は治療したほうがいいかもしれんな」


 ユウキはリュックから清潔な布を取り出すと殴られた患部を抑える。ジワリと血が染み込み白っぽい色をしていた布が赤く染まっていく。流れていた血が首筋で固まっており不快な感情を与えている。


「本当は縫いたいんだけど、そんなことできんからとりあえずは包帯とかで処置かな……。回復薬なんかもあるからどうにかできるでしょ」


 傷のことを楽観的に言ったユウキは頭の傷を抑えながら、視線を下に落とす。そこには何も知らずに数字板で遊んでいる小鳥がいた。そのあまりに無垢な姿にユウキは思わず笑っている。それに反応した小鳥は首をかしげている。そんな彼にユウキは干し肉を取り出し、丸ごと与える。それを嬉しそうに啄む小鳥を見て心を落ち着かせたユウキは頭の傷の応急処置に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、おい! あんた着いたぜ。ここが終着点だ」

 

 応急処置を終え眠り込んでいたユウキが寝ぼけながら荷台から降りると、そこは既に馬小屋の中であり、商人は馬に水をやりながらユウキの意識がはっきりとするのを待っている。寝ぼけたユウキを起こしたのは小鳥のくちばしであり、ユウキは叩き込まれた嘴に額を抑えることとなる。ユウキの意識がはっきりしたのを伺い、商人は話し始める。

 

「ここで終わり?」

 

「そうだ。今までありがとな。若いのにずいぶんとよく働いてくれた。報酬を渡すからちょっと待ってな」

 

 ユウキが地面に落ちていた干し草を馬に上げながら待っていると建物の中に入っていった商人が袋を持って外に出てくる。

 

「今回の報酬だ。受け取ってくれ」

 

 ユウキは保険として持っていた袋の代わりに報酬を受け取る。が、不自然に重い。ユウキは袋の口を開いて中身を確認すると、その中には金鍍金貨が一枚と銀貨が十枚程度が入っており、護衛の依頼にしては明らかに多い。それを不可解に思ったユウキは馬の世話に取り掛かっていた商人に問いかける。

 

「……なんか多くないか?」

 

「あんたの働きプラス信頼を買ったんだ。こんなんで済むなら安いものだろ?」

 

 自分の言ったことを返されたユウキは照れ臭そうに苦笑いを浮かべながら袋をポーチにしまい商人に一礼してから馬小屋を後にした。依頼は完了し金を手に入れたが今度は宿を失った。とりあえずは今日の宿の確保をするため街の中を歩き始めるが、いかんせん腹が減った。まずは腹ごしらえだと決めたユウキは手ごろな店に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

 ユウキは店内に入るとカウンターに座ると飲み物を注文する。店内はビギルマとは違い、窓が多く陽の光を多く取り込む形となっている。店内の客は二、三人しかいないが、昼過ぎであるため仕方がない。ダイニング型となっているキッチンでは料理人が腕を振るっており、調理光景によっても客の食欲を引き立てる。カウンターに背を向ける形で掛けられたメニュー表を見て、ユウキは料理を注文する。

 

「パスタ一つね。あとパンも一つちょうだい」

 

 カウンターでフライパンをふるっていた店主から威勢のいい声を聴きながら、ユウキはジョッキの液体で喉を潤す。

 

 一足先に来たパンを持ちリュックを置いたまま店外に出て小鳥にパンを与えようとするが、ユウキはすぐに店内に戻ることとなる。小鳥が自らの力でネズミを捕まえその肉をついばんでいたからだ。その光景をみたユウキは野生だと実感する。店内に戻った席に着きパスタの到着を待つ。

 

 少し経ち、パスタが到着したところで歓迎を知らせる店員の声が店内に鳴り響く。扉の方に視線を向けるとそこには槍を背負った細身の青年が立っており店内を物色するように見まわしている。青年が店内を一通り見終わった後、ユウキは彼と目が合ってしまう。獲物を定めたようににこやかに微笑んだ青年はユウキにそばに近づいていき、人当たりのいい表情で声をかける。

 

「隣よろしいでしょうか?」

 

 逆光で顔が確認できていなかったユウキはそこで初めて青年の顔を確認する。青年は白い肌に青い目をしており、後ろでポニーテールのようにひとまとめにした銀髪は覗き込むようにして問いかけた際に小さく揺れる。

 

 現在、店内は二、三人の客しかおらず他に座る場所はたくさんある。その中でなぜ自分の隣なのかと思ってしまうが青年の妙に迫力のある笑顔に押されてしまい、首を縦に振り了承する。青年は席に着くと、ユウキの口にしているパスタと同じものを頼み、背負っていた槍を下ろす。無骨でありながら装飾の施された槍は地面に置かれるとゴトリと鈍い音を立てる。


 パスタを待つ間、青年は手持ち無沙汰になったのか隣に座るユウキに話しかけ始める。

 

「隣に座られるのはお嫌でしたか?」 

 

「そりゃ何でとは思ったよ?」

 

 明らかに嫌悪しているのが表情に出てしまっていた。本来であれば隣に座られても文句なかったのだが、青年の纏っている雰囲気があまりにも胡散臭く、それに付随するように面倒ごとの臭いを嗅ぎつけてしまったため嫌だったのだ。そのせいか青年の問いかけをさらに問いかけで上塗りすることになる。それに対し青年の答えは

 

「貴方が随分と大きな大剣を背負っているものですから。気になってしまいまして」

 

 至極まっとうな意見だった。そもそも身長と同じほどの大剣を所持しているというのは、前衛職、その中でも盾となる人物でない限り、本来おかしな話である。攻撃に走るものは好んで片手剣や短剣のような軽い武器を使い、敵を翻弄しながら攻めるというのがセオリー。大剣はその振りの遅さから、スピードを生かして戦うものからは忌避される傾向があった。ユウキは防具が籠手とブーツの軽装備。スピードタイプであるが大剣を扱っている。それを見ぬいたうえで問い掛けたのだ。

 

「俺は冒険者だ。そもそも武器の一つや二つ持っててもおかしくはないだろ?」

 

「でも、その装備から推察するにスピードタイプの攻撃手ではありませんか?その大剣は適しているとは思えませんが」

 

「別にいいだろ。意外と使い勝手がいいんだから。そういうあんたは冒険者じゃないのか?立派な槍を背負ってるが」

 

 一通りやり取りが終わった後は今度はユウキが質問を始める。男は隣に立てかけた槍を撫でながら答える。

 

「私は冒険者などという御大層なものではありませんよ」

 

「あそ」

 

 ユウキは残っていたパスタをのどに流すと銀貨を四枚置き足早に店を後にした。店外で待つ小鳥が肩に乗ってくるのを見てユウキは小鳥の羽を撫でると小鳥を抱き上げ、肩から降ろす。 

 

「悪いがここまでだな。あんまり住処から離しちまってもお前のためにならん気がするし、俺もお前の安全を保障は出来ない」

 

 ユウキは小鳥の目を見て話す。傍から見れば滑稽な光景だったがユウキは真剣そのもの。この小鳥がいなければ待ち伏せをあの傷だけで撃退することはできなかった。この小鳥はユウキの恩人もとい、恩鳥なのである。そんな彼と別れるのはユウキとしてもつらかったが、ユウキも小鳥をこのまま連れ歩くことはできなかった。

 

 小鳥はユウキの言葉に答えるように一声大きく鳴くと羽を広げ大空を羽ばたき始めた。そしてユウキの頭上を二、三度旋回すると来た道を引き返すように飛び始めた。

  

 「小鳥と会話ですか……。面白い人ですね」

 

 声のほうに振り替えるとそこには先ほどの青年が立っており顎に手をあてながら微笑を浮かべている。先ほどのユウキの行動を見ていたのだろう。


「なんか文句でもあるか?」


「いいえ、ただ珍しい光景だと思ってみていただけですので。それでは私はこれで。また会える日を楽しみにしています」

 

 青年はそういって一礼すると走り始める。槍や鎧の重さを微塵も感じさせずに風のように走り去る姿を見送ったユウキは自身も歩き始めるが、今度は彼が走っていった方向とは逆方向からプレートアーマーをつけた女性が駆けてくる。そしてユウキの前で急ブレーキをかける。

 

「すみません!先ほど槍を背負った男が来ませんでしたか?どっちに行きましたか?」


「……あっち」


 ユウキは青年の言ったほうを指さしながら端的に答える。それを聞いた女性は一礼するとその後を追うようにその方向に駆け出す。台風のように過ぎ去った女性も見送ったユウキは今度こそ宿を探すために歩き始めた。



https://twitter.com/the_cainabel 

ツイッターを本格的にやり始めたので一応リンク貼り付けておきます。

ところでなろうの作家さんはどこにツイッターのリンクを常設させてるんですか?おせーてエロい人

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