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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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虚構なのか真実なのか

 断っておくが俺の記憶は戻っちゃいない。

 幼馴染の記憶も完全に戻ったわけではない。

 でも最近よく思い出すようになっていた。

 いつごろからかと考えると、そう、プレセぺと出会ったあたりからだ。

 理由は……なんとなくわかるが認めるわけにはいかない。2つの意味で。


 俺と幼馴染が仲が良かったのは幼稚園から小学生の途中までくらいだったようだ。

 性別の差は大きく次第に遊ばなくなった。

 中学生のころは完全に無視されていた。

 気持ち悪いからとかそんな理由じゃないぞ? 俺はそれなりにもてたんだから。

 客観的に見ると大した仲じゃないかもしれない……あげく気が付いたら2年前に死んでいました、だ。

 いったい俺に幼馴染の何がわかるのか?

 ……でも、たぶん俺はあいつの考えてることがわかる。


 幼いころ強烈な思い出を共有した2人はシンパシーを感じるようになると聞いたことがある。

 それは刷り込みのようなものなのかもしれない。

 俺たちは子供のころ彼女の死という強烈な思い出を共有した……まぁ、死ななかったわけだが。

 だからだろうか、俺は彼女にとても身近なシンパシーを感じている。


 もしかしたらそれは俺だけのことで、彼女は違うのかもしれないとも思っていた。

 でも、そうじゃなかった。

 あいつはアンリウムを俺に託した。あいつも、俺に同じシンパシーを感じていた。

 だから、俺の感じてるあいつの思いは思い込みなんかじゃないはずだ。だからわかる。

 俺にアンリウムを託した理由……あいつはアンリウムを許したいと思っている。


 ……


 都合がいい。利用しようとしてる。アンリウムの力がほしい。あいつらを助けたいと思ってる。

 アンリウムから静かないらだちが伝わってくる。


「違うな。カルラ達を助けたいから妥協して、お前を助けやってもいいと言ってるんだ! 」


 偉そう。生意気。何様?

 アンリウムのいらだちが増す。そう思うのも無理はない。お前にその資格はないが。


「お前はそれだけのことをしたんだ。世界中の人がお前を許さない。お前が勇者を殺したのを知ったらカルラも、アルメリアも、お前を決して許さない」


 許される必要なんか、ない。アンリウムは悪くない。

 アンリウムは心を閉ざした。


 俺は今、アンリウムを説得しようとしている。でも何故か怒らしている。それはたぶん、俺も怒っているからだろう。

 アンリウムは勇者を殺したことを悪いと思っているはずだ。でも決してそれは認めようとしない。

 意固地になっている。

 俺は「その気持ちもわかるよ」と同調してやらねばいけないのかもしれない。そしたらアンリウムも心を開いて「実は私も」なんていいだすかもしれない。でもできない。できるわけがない。

 大事じゃないものならそうやって誤魔化すこともできたかもしれないけど、俺はこいつを託されている。

 責任がある。だから妥協はできない。意地でも認めさせる。


「でもお前は俺に力を貸した。俺なら、勇者のことを知らない俺なら、許してくれると思ったんじゃないか? 」


 許すも、許されるもない、そんなこと考えて助けてやったんじゃない。全部全部。忘れたかっただけ。


 アンリウムはますます心を閉ざす。

 俺はますます苛立つ。

 こいつの言ったことはたぶん本当だろう。人を殺しておいて、自分に心許している相手を殺しておいて、この責任転嫁。

 わかっている。人は弱い。そうやって自分を守ってる。同調してやるべきだ。可哀想なアンリウムと言ってやるべきだ。そうすればこいつは心を開く。

 でもそんなことできない。俺は許してやる立場だ。勇者を知る者として、勇者が生きていたとして、自分を殺したこいつを許してやるために、俺はこいつを託されたのだ。だから同調はできない。


「でも残念だったな。俺も勇者と知り合いだったんだ。それだけじゃない。あいつが元の世界に戻りたいと思っていたのは俺がいたからなんだぜ」


 !??

 初めて、アンリウムは動揺する。


「あいつは、俺に、惚れてたんだ! 」


 ドン!


 衝撃の事実……なわけはない。ただのはったりだ。勇者の事なんかどうでもいいとアンリウムが言うからかまをかけてやっただけだ。

 本当にどうでもいいとおもっていたら、いくら託されたって言っても限界がある。


 100人殺すような連続殺人犯に被害者の家族の一人の嘆きを訴えたとしても、きっとそいつは何とも思わないだろう。

 アンリウムにとって勇者がそんな存在なら、許すことなんできるわけがない。


「う、嘘だ! そんなの嘘! 勇者は好きな人いないよ! 一番はいないよ!?? 」


 アンリウムは激しく動揺していた。

 ちょっと話を盛りすぎたかと思ったが、信じてくれたようだ。


「勇者に一番はいない。だから私を一番にしてくれるかもしれない。帰るって言った。裏切った。でも初めから1番がいたなら、私が勇者を、奪ってしまった? 違う! 違う! 違う! 」 


 何か、変な方向に動揺している。

 他に1番がいたなら、ほしいと思わなかった?

 なんとなく。ヒラキンとプレセぺのことを思い出す。

 俺はヒラキンがいることがわかってたから好きにならないようにした。

 こいつも、同じだとしたら……


「勇者は俺のものだったんだ。でも、世界を救いたいというからお前らに貸したんだ。なのに、お前は勇者を殺してしまった」


 アンリウムの動揺がます。


「あいつは宿命を生まれた意味を、自分が死ななかった意味を考えていた。この世界で勇者になって自分の宿命を見つけれたら、そう思って俺はあいつをこの世界に貸したんだ」


 完全な嘘はぼろが出る。事実を織り交ぜ嘘をつくべきだ。そういう話を聞いたことがある。だから本当のことも織り交ぜた。

 でも、ふと思う。

 あいつはこの世界で自分の宿命を見つけて果たしたのだろうか?

 あいつは魔王を倒し世界を救ったらしい。

 宿命を果たした?いや、違う。


 じゃあなんであいつはここから帰ろうとしたんだ? ここがあいつの宿命を果たした場所なら帰る必要があったのか? 元の世界に残していた家族のためか?


 宿命というのは別に大それたことじゃなくてもいい。家族のもとに帰って安心させるのだって、そうやって生きるのだって、宿命じゃないのか?


 あいつは宿命を果たしたと思っていなかった……だから帰ろうとしたんじゃないか?


 俺は心の中で嫌な思いが広がっているのを感じた。


「宿命はね。果たせなかったよ」


「だって私の宿命は君と果す予定だったんだ。君が来てくれなかったから私の宿命は終わってしまったよ」


 いつかの夢を思い出す。

 何を考えてるんだ俺は……あんなものただの夢だ。

 俺がこの世界に来たって、俺が一緒にできたことなんて……


 幼馴染は夢を理想を見ていた。だからみんなと孤立した。そんなところで人は生きれない。


 俺は理想が好きだったけど現実を見ていた。そうしないと生きていけない。


 幼馴染は仲間になったアンリウムを無条件に信用した。悪魔とよばれた妖精の笑顔を信じた。本当に悪魔になる可能性を全く考えなかった。


 そして幼馴染は殺されてしまった。


 ……


「泣いているの?」


 アンリウムが聞いた。


「私はあなたの大切な人を奪ったの?」


 やっぱり俺は幼馴染と一緒に宿命を果たすべきだったのだと思う。

 夢と理想の綺麗な世界を同じように綺麗だと思える俺が、現実の世界につなぎとめておかないといけなかったのだと思う。でも


「アンリウムは悪魔なの?」


 でも、ひどいじゃないか。この世界でも死んでいるなんて。

 この世界でも宿命を果たさせてくれないなんて。

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