制御できない炎
新たに空から降りてきた3体の天使。
4枚翼の天使を中央に、それを警護するように2枚翼の天使が付き従っている。
天使は翼の多いほうが強い、と単純に言うことはできないが、より上位の存在であることは確かだろう。
今、戦ってる2枚翼の天使だけでも手一杯だというのに……アルメリアは絶望的な状況に焦る。
天使には下界の8属性の魔法どころか天界の7属性の魔法をも無力化してしまうようだ。
カルラには神格があるからそれを無視して攻撃を通すことができるが、アルメリアにはできない。
援護と称してやってきたが
出来ることと言ったらカルラの身体能力を上昇させることと、怪我を治すことぐらいだ。
その怪我を治すことも、8属性の魔法が封じられているため、もともとの治癒力を増幅させるて治すことしかできない。
もともと持つ治癒の能力を増幅させれば代償としてカルラの体力を著しく消費してしまう。
8属性の癒しの力をつかえればそのような制約もないのだが……
カルラの身体能力を上げた後のアルメリアはあまり役に立っているとは言えなかった。
「へへ、面白くなってきたぜ」
カルラは新たに降りてきた3体の天使をみて笑う。
「あんた、何馬鹿言ってんのよ。状況がわかってるの? 」
「わかってるさ。今度の天使は全員男だ。もう、手加減する必要はねぇ」
アルメリアは絶句する「手加減て、あんたもうとっくに全力で戦ってるじゃない! 」それは事実だ。カルラに余力などないはずだ。
「俺は女相手だと潜在的に手加減しちまうのさ。相手が男となりゃ、話は別だ。潜在的な手加減がなくなり強くなるぜ。通常の3倍くらいにな! 」
新たにやってきた天使も3体。「丁度いいじゃねーか」カルラは言った。
「何馬鹿なこと言ってんのよ」
「だから、お前も帰れ」足手まといなんだとカルラは言った。「だいたい、なんでお前も前に出てきてんだ? 後方支援がお前の担当じゃねーか。こういう戦闘だとお前は一番弱ぇんだ。前に出てきちゃ駄目だろ? 」
「一体いつの話をしてるのよ。今の私は銀の教会の幹部で魔王軍13人衆の1人なんだから」
「関係ねーよ」
カルラはサトミ達の様子を見る。サトミだけは少し離れているが、ヒラキンはこの場にいる人間たちを集めるのに成功したようだ。一か所に人が集まっている。
「お前はあいつらをどっか遠くにに逃がせ」
あのくらい離れていれば瞬間移動の魔法も使えるだろう。
「馬鹿なこと言わないで! あんたは一体どうするのよ! 」
「そんなの決まってるだろ。こいつら全員ぶったおすんだよ! 」
カルラは不満げなアルメリアを空間転移で強制的にヒラキンたちのもとに送る。
天使の内1体、最初に戦っていた女形のがアルメリアを追いかけて離脱するが、そこまで構う余裕はない。あっちにはヒラキンがいるしハチもいる。めったなことにはならないだろう。
「13人衆か。なついな。黒騎士とかまだいるのか? あいつは強かったな……」
カルラはかつての宿敵に思いをはせる。13人衆は魔王交代の基準をつかさどる機関だ。勇者が7つの国を回り集めた仲間が挑み、13人の内7人を倒せば魔王交代がなる。ただこれにはカラクリがあり絶対に勝てない13人衆も存在する。黒騎士はその一人だった。
「あいつに比べればこいつらなんてまだ弱ぇ! 」
カルラは中央の4枚翼にむかって直進した。
……
カルラの奴、一体どこまででたらめなんだ?
どうやらアルメリアを逃がしたらしい、その後4枚翼の天使に向かって勝負を挑んだカルラは、そのまま4枚翼の天使を圧倒しだした。
根性? 精神論? 戦闘経験の差? 理由は不明だが、アルメリアと2体1で戦っていたときよりなお強い。
天使も最初は4枚翼の天使だけが戦っていたが、押されているとみると慌てて残りの天使たちが援護しだした。
残りの2体の天使が光の鎖でカルラを拘束しようとする。
だがカルラは空間転移でそれらをかわし、なおも戦闘を優位に進めようとする。
もしかして、一人で全員倒せちゃうんじゃないか?
「それは無理だよ」
アンリウムが答える。
それが現実になるかのように、天使の放った光の鎖の一つがカルラを捕縛する。苦しそうに呻くカルラ。
「アンリウム、力を貸してくれるか? 」
「あいつを倒せば勇者のことは許されるの? 」
「そうじゃない」
贖罪しろというのは、別に卑屈になって俺の命令全てを受け入れろと言っているわけじゃない。
アンリウムはただ勇者と旅をしたように俺と旅をして、誰かを好きになって、受け入れられなかったとき、そのことを受け入れられるようになればいい。
勇者にやったことを2度とやらなければいい。
俺はそれ以上の反省を期待してはいるが、俺はそれだけじゃ足りないと思うが、でも、あいつならそれだけでこいつを許すだろう……
「アンリウムは天使を倒せないよ」
そう、アンリウムだけでは天使を倒せないかもしれないが……て、え?
今こいつなんてった?
「アンリウムの炎じゃ、天使には届かないよ?」
「マジで?」
「マジだよ」
うっそ~ん、今までの長い前ふりは何だったのか。
アンリウム的にはそれでよかったのかもしれないけど、カルラが、カルラの身の危険が……
俺が頭を抱えているとアンリウムは続ける。
「勇者は私に名前を与えた。アンリウム。人と仲良くなれるように。私の本当の名前。封じた」
……!?
それってつまり俺がハチにやったのと同じことをあいつがアンリウムにやったってことか?
ハチはコントンという悪い魔物だ。でも名犬ハチ公の名を得たことにより、その本性を封じられた。
「俺がお前の本当の名前を言い当てれば、天使たちを倒せるのか? 」
「そうだよ」とアンリウムは言った。そして「サトミはいろんな名前を知っている。私の名前も知ってる」とも
アンリウム、こいつの本当の名前。封印され、解放した人を焼き殺す、制御できない炎の名前。
なるほどそれは分かりやすいな。
「プロメテウスの炎、それがお前の名前か?」
アンリウムは何も答えなかった。だが、俺の中でその力が爆発的に上がったことを感じた。




