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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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予言

 夜眠っていると妹のすすり泣く声で目が覚めました。

 どうして泣いているのか、お腹でも痛いのかと聞くと「死ぬのが怖い」と妹は言いました。

 それはまだエリザベート様から妹の魂が奪われると聞く前の事です。


 妹はまだ5歳にも満たない。それなのに死を怖いと認識するのかと、私は驚き、妹の聡明さを誇らしく思いました。

 私は死ぬのは怖いことではないと妹に説明することにしました。


「この世界は魂の修行の場所なのです。正しい行いをして魂をより輝かせるために精進しなくてはならりません」


 死んでも魂は転生してまた生きることになる。

 そう、エリザベート様はおっしゃっていました。実際に天界の作った仕組みもそうなっているといいます。

 本当に怖いとしたら悪魔にかどわかされることだけです。悪魔に奪われた魂はもう2度と転生することは叶いません。道具として消費されるだけなのです。


「でも、お姉様とわかれるのは嫌」


 妹はそういって泣きました。

 なんということでしょう。

 妹は死ぬことより、死んで自分たち家族と離れなくてはいけないことの方を恐れていたのです。

 なんと優しい子なのだろう。


「大丈夫。私はどこにもいかないわ」


 私は妹をだきしめそう言いました。


 ……


 目を覚ますと、ハルが心配そうにチウネを覗き込んでいた。

 意識が戻ったのを確認すると嬉しそうに抱き付いた。


 なんだか気安いですね。


 少し違和感を覚えたが、そんなことにいちいち目くじらを立てるほど心が狭いわけではない。


「大丈夫ですよ」


 チウネはハルの頭をなでてやった。

 それにしてもここはどこだろう。どうやら森の中らしいが見覚えがない。

 最後に霊竹のやりをつかったとき、力を使い果たしていた。その影響で、どこか変な場所に移動してしまったのだろうか?


「目が覚めましたか?」


 頭の中で声がした。

 ハルの声ではないようだが……


「こちらですよ」


 見れば、巨大な岩が目の前にあった。


「初めまして、チウネさん。私は予言の岩といいます」


 唖然とするチウネに、予言の岩は自分がサトミに作られたこと。チウネが霊竹のやりを使いそこなってここに来たこと。サトミの忘れていった万能薬で回復させたことを説明された。

 ついでにサトミに理想の女性と言われたことも自慢げに教えてもらった。


 岩に欲情するなんてとんだ変態だ。チウネはサトミにドン引きした。


 ……


 万能薬とやらのおかげでチウネの体力は完全に回復していた。

 回復したのならこうしてはいられない。

 速くサトミ達の元の戻らなければ。

 予言の岩に礼を言ってすぐさまサトミ達のもとに帰ろうとする。


「ちょっと待ってください」


 予言の岩は呼び止めて「身代わりの石」のストックがあるので持って行くように言ってきた。

 何から何まで親切で、あのサトミから作られたとは思えなかった。


「こうして出会えたのも運命です。あなたに一つ予言を授けましょう」


 帰り際に予言の岩は言った。ハルにもなにか予言を与えたらしい。さっきからハルが妙になれなれしいのはそのためなのかもしれない。


「いずれあなたは元の名前を取り戻すかどうかの選択を迫られる。取り戻さなければ何も起こらない。取り戻せばあなたは人の体を失うことになる」


 チウネはずっとチウネという名前を名乗り続ける気はなかった。いつか自分の名前を取り返すつもりでいた。しかしそれはサトミと決別することも意味する。


 もし、サトミを強制するためにサトミから離れないならチウネのままい続けるかもしれない。

 つまり、サトミと共に行くなら元の名は取り戻せないし、決別するなら元の名を取り戻すはずだ。

 サトミから離れたら私は人ではなくなるということなのだろうか?


 メーティスの名前はただの人には強すぎる名前だという。その名を名乗り続ければしぬことになるということなのかもしれない。


 一応予言をくれたことに感謝して予言の岩と別れた。


「さようならチウネ。また会えてうれしかった」


 予言の岩は別れぎわにぽつりとそういったが、チウネが気づくことはなかった。


 ……


 空では天使と悪魔が熾烈な戦いを繰り広げている。

 見守る盗賊たちの顔色は一様に青い。

 それはそうだろう、自分たちのやってきたことを考えれば天使に裁かれる立場なのは明白なのだから。

 それでも実際に天使なんて見なければそんな実感など湧かなかっただろう。

 でも天使はこうして戦っている。

 子供のころは誰だって無邪気に自分は天使に加護される善良な人間だと思っていたはずだ。

 それが今やこの様だ。それを改めて思い知らされる。

 中には懺悔しだすものもいる。今更手遅れだろうに……ガプスは嘆息した。


「皆さん、こちらに集合してください。まとまって離れないで! 」


 しかし救いの天使は現れた。

 プレセぺといったか、サトミとともに現れた少女。彼女は狼たちを連れて戻ってくると皆を集めようとした。だが、動揺した盗賊たちは言うことを聞かない。

 プレセぺは自ら天使の翼を皆の前にさらした。

 盗賊たちは色めき立ちプレセぺの前に集まり懺悔しだした。

 プレセぺは困ったように彼らを見つめている。

 その横ではバジリスクにまたがった初めて見る青年が憮然とした顔で立っている。


 ぐにゃり


 空間が歪む。その向こうからやってきたのはチウネとかいう少女だった。

 チウネは無事にオアシスに戻れたことを安堵するが、すぐにプレセぺを見つけて身を固くする。

 プレセぺは盗賊達に囲まれて懺悔を聞かされている最中だった。


「悪魔」


 チウネはプレセぺを見てそうつぶやいた。

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