契約しようか
天使は銀色の甲冑に槍を手にしていた。
天界の騎士よりも露出度は多い。機能性より装飾性を重視しているようだ。
オブラートに包んで言っては見たが、ようはおっぱいアーマーだよ。天界のやつは変態だな。
「さてと、行くかな」
カルラはそういうと巨大なカラスの姿へと変わる。
「どこに行く気なの?」
アルメリアが冷ややかに問う。
「まさか天使と戦うとでもいうんじゃないでしょうね?」
絶対に無理だと、「あなたはこの間天使もどきと戦って負けたのよ」そのときは自分が助けてやったのだと、アルメリアは言った。
突き放してはいるが行かないでといっているのが見え見えだ。
「やっぱりお前が助けてくれたのか。ありがとよ」
だけど行くぜ、ハチは俺の一番弟子なんだ。
一体いつの間に弟子にしたのかそんなことを言い出す。
「それに、気にいいらねぇ弱っちい勇者を倒して、気に入らねえぇ強ええ奴から逃げ出したんじゃ、男がすたるってもんだろ?」
カルラはそういうと俺たちとは全く別の方向を見る。そこにあるのは大きな木だけだが……
「ヒラキン、いるんだろ。そういうわけで、アルメリアとサトミを頼むぜ」
木の陰から知らない男と、そしてプレセぺが現れた。
プレセぺがばつの悪そうな顔をしている。
男はぶぜんとした表情でカルラを見ている。プレセぺはヒラキンのことを俺に紹介しようとしているようだが、俺の頭には入ってこない。
そういえば、チウネがプレセぺに怪我させられたとか言ってた気がするけど。
なんかもう、どうでもいいかな……
ヒラキンという男は美男子だった。そうだね、お似合いだね。
だけど別にショックなんか受けてない。
プレセぺのことを好きになるほど近づいてなかったからね。大丈夫大丈夫。OKOK。
「じゃあ、いってくるぜ」
カルラはいろんなフラグをおったてて行ってしま……て、ちょっと待って!
「カルラ! お守りだ。持って行け! 」
一応身代わりの石は持たせておかねばなるまい。
「なんだこりゃ? 」とカルラは言っていたが、「友情の証」だといったら素直に持って行ってくれた。
……
「ちょっと、あんた、運命を操る力があるんでしょう? だったらこの状況なんとかしなさいよ」
アルメリアがプレセぺに食って掛かる。
「やめろ」
それを止めたのはヒラキンだ。
「お前も言っていただろう。人には皆運命を変える力がある。プレセぺの力は人より少しそれが大きいだけだ。強固な意志の前では無力だ」
プレセぺが申し訳なさそうな、悲しそうな、そしてどこか辛そうな顔をしている。
……なるほどね。好いているのは外面ではないということか。
俺はとりあえず割り切るとヒラキン達に支持をだすことにした。
「ヒラキンとプレセぺはハチとロレンス達を回収してくれ、俺は盗賊達を集めるから揃ったらアルメリアの瞬間移動で……」
「いやよ」
アルメリアには拒否られた。
「ごめんなさい、私はカルラの援護に行くわ」
「ジェイドのこと頼むわね」そう告げるとアルメリアもいってしまう。
見かけだとそんなにすごく思えないんだけど、あのおっぱいアーマーそんなにすごい奴なのか?
う~む……
「ヒラキン、プレセぺ、ハチとロレンス達を回収したら盗賊達をまとめておいてくれ」
「サトミ様はどうされるんですか?」
「俺は、戦うよ」
……
行ってしまったプレセぺ達を見送る。
空ではカルラと天使が激しい戦いを繰り広げている。
アルメリアの補助呪文を受けたカルラは天使を押しているように見えるが、再び天界から3体の天使が舞い降りる。
内、1体は背中に4枚の翼をもっている。
2対1で互角なのに、その上位互換みたいなやつが出てきた。
カルラは本当に強かった。
ハチよりも、ハチと戦っていたアルメリアよりも、そんな中で俺にできることと言ったら……
「なぁ、でてこいよ。いるんだろ? 」
あいつらと同じ勇者の使徒に助けを頼むくらいだ。
「お前がもし、勇者に詫びる気があるのなら、贖罪する気があるのなら、お前にチャンスをあたえようアンリウム」
俺はずっと考えていたのさ、なんで「アンリウムの護符」が俺の枕元に置いてあったのか。
勇者殺しの炎が俺のそばにあった理由を。
可能性としては3つ。
1つ目は俺が勇者だということ。俺が勇者ならアンリウムが俺のそばにいたのも頷ける。でもこれは違う。カルラも、アルメリアも俺を勇者と間違えたりはしなかった。だからこれは違う。
2つ目は偶然。物事に意味なんてない。すべては偶然。それならば、どんなによかったことか。
3つ目は誰かが俺に託した可能性。なんで託したんだろうな。憎かったら託さないよな。
誰が託したんだろうな。アンリウムは勇者にしかなついてなかった。だったら託したのは勇者か。
どうして俺なんだろうな。俺の事を知っていたからかな。俺がアンリウムをどうするのか、勇者を殺したアンリウムにどう接するのか知っていたってことかな。
だから、アンリウムを俺に託した奴は俺の知り合いで、勇者で、俺がアンリウムを拒絶して、でも許すことを知ってた人物ってことになる。
「私は悪くないよ」
アンリウムは答えた。感情のない声だ。怒っているようにも泣いているようにも聞こえる。
「俺はさ、勇者と知り合いだったんだ。だからわかるよ。あいつはお前のことを恨んじゃいない。でも許してもいない。でも許したいと思っている」
だから
「お前がもし勇者に謝りたい気持ちがあるのなら、手伝ってやるよアンリウム」




