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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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善戦

 死者、行方不明者0、ただし怪我人多数。

 盗賊の町の被害者だ。死者が出なかったのは奇跡的と言っていい、とアルメリアが言っていた。


「勇者の奴、以外に気を使ってたんだな」


 カルラが意外そうに言った。「神父様とかいう奴はてっきり殺されたと思ってたぜ? 」

 いやいや……


「俺はお前が誰も殺してなかったことに安心したよ」


 サトミはカルラにつっこんだ。


「言っただろ、俺は人は殺さないって」


 それがダチとの約束だから。とカルラは付け加えた。


「でも半壊した建物は全部お前がやったんだろ? 」


「俺は神だぜ。いわば俺の起こした竜巻は自然現象のようなもんだ。台風が通り過ぎて人が死んだからって、台風が人を殺したことになるのか? 」


 なんかそれっぽいたとえ話を仕出した。カルラにそんなたとえ話をする脳みそはなさそうだから、きっと誰かの受け売りに違いない。


 この町に来てから人命救助で大忙しでろくにアイテムの仕入れもできていない。

 身代わりの石だけはいくつか作ったけど瀕死の人用につくっただけで、人命救助そっちのけでアイテムを作っていたわけではない。結果的に身代わりの石は一個も使わなかったからまるまる備蓄用になったけど。


 すぐ来てすぐ帰る予定だったけど、人命救助に時間を足られすぎて一泊することになった。

 明日アイテムを仕入れてみんなのところに帰ることにする。

 この様子じゃろくなアイテムを仕入れることもできそうにはないが、身代わりの石は調達できたので最低限の目的は果たせたといえよう。


 アルメリアは組織の本部とのやり取りで右往左往している。

 悪の組織も大変みたいだ。とっとと潰れたらいいのに。


「カルラってさ、アルメリアと知り合いなんだって? 」


「おおよ」


「じゃあアルメリアの弱点とかない? 」


「……」


 カルラがジト目で俺を見つめている。


「な、なんだよ」


「いやぁ、いきなり仲間の弱点を教えろって言われたもんだからよ。それはちょっと人としてどうかと思うぜ?」


 くっ……カルラに人として問われるだと?

 俺は痛く傷付いたが、俺の聞き方が悪かったのも事実、ぐっと怒りを抑える。


「アルメリアってどういう……仲間、だったのかな」


 なんだぁ、お前アルメリアに惚れたのか?

 カルラがにやりと笑っていった。

 ……もうなんでもいいからとにかく教えろ。


「アルメリアを一言でいうと、兎に角ほれっぽい奴だったな。旅先旅先で男に惚れて振られるんだ。ありゃもう特技と言っても過言じゃねぇな」


「とぅ! 」


 アルメリアの飛び蹴りがカルラの眉間にヒットした。


「あんたは、サトミに、一体何を、ふきこんでるのかしら? 」


「なんだよ本当のことじゃねぇえか。しかも惚れた男がことごとこしんだり、魔王の手先だったりするもんだから、仲間内じゃデスメリアと呼ばれて……」


「黙れ! 」


 アルメリアはカルラの喉にチョップをくらわせた。悶絶するカルラ。


「いいことカルラ、今の私は「ちょっぴり悪くてミステリアスな、綺麗なお姉さんキャラ」なのよ。くれぐれも変なこと吹いて回らないで! 」


 俺の前でそんなこと宣言していいのか?

 なんだかんだいってアルメリアとカルラは仲がいいみたいだ。こんなに生き生きしているアルメリアを見るのは初めてだ。


 なんだろうな。アルメリアは何の躊躇もなく人殺しできるような奴なんだよな?こんなやつとこんな風に打ち解けて行っていいものなのだろうか?


「そういえば」


 俺は何食わぬ顔で聞いた。


「カルラとアルメリアが一緒に旅したっていう勇者の名前はなんていうんだ? 」


「あれまだいってなかったっけ?」カルラはそういうと勇者の名前を告げた……と


 空間がゆがむ。


 現れたのは血まみれのチウネとハル。


「主様! 」


 ハルが飛びついてくる。カルラもいるのだが気が付いていない。それくらい切羽使っているみたいだ。


「早く来て! ハチが……ハチが死んじゃう!!! 」


 ハルのことも気になるがまずは血まみれのチウネだ。


「大丈夫か」


 慌てて抱き留める。


「大丈夫です。傷は塞がっています」それより気安く触らないでください。悪魔が移ります。チウネは俺に毒づいた。くそ、本当に助けがいのない奴だ。


「天界の使いがあらわれました。そしてもう一つ」


 自分にこの傷を負わせたのはプレセぺなのだとチウネは告げた。


 プレセぺのことは信じられないが天界の使いがやってきたのは確かで、今はハチが足止めしているらしい。

 まだ、身代わりの石しか調達してないってのに……

 だが、迷っている時間はない。

 ハチだけでは天界の使いに対抗できない。


「アルメリア! 」


 アルメリアはカルラをちらりとみる。

 カルラはよく事情は分からないみたいだが、ハチが天界の使い戦っているということはわかったようだ。

「ついにサトミ達に俺の本当の強さを見せるときが来たようだな」とかなんとかほざいている。

 ふっ……アルメリアは少しだけ笑って


「わかったわ」


 怪我をしているらしいチウネをハルに任せて、俺とカルラを瞬間移動させるアルメリア。


 あ、やっぱり1人以上を瞬間移動もできるんじゃないか。サトミは場違いにもそんなことを考えていた。


 ……


 瞬間移動によりオアシスに転送させられる。

 やはり天界の使いによる干渉がはいるらしく近くには移動できなかったようだ。

 ハチと天界の使いはそこから少し離れた場所で戦っていた。


「じ・ご・く・ぐ・る・ま!! 」


 ハチが謎の怪光線を発する。天界の使いに直撃するも天界の使いは攻撃を無効化……しない。衝撃をもろにくらい後方に弾き飛ばされる。


 追撃するように怪光線を連打するハチ。


 ……ちょ、ハチさん、勝ってるの?


 天界の使いは地上の8属性の魔法を無効化するという。ということはあのハチの怪光線はそれとは別の天界魔法かそれ以上の術だということか?


「あれは闇属性の衝撃派ね」


 アルメリアはそれを否定する。


「ハチも神の端くれだ。無効化を無視するくらいはできるだろ」


 カルラが軽く相槌をうつ。

 は?無効化を無視する?そんなことが可能なのか?全然全く聞いてないんですけど?

 だけどそれは俺にとっては悪い話ではない。成長したハチが1人で天界の使いを倒せればそれに越したことはない。俺だって戦はなくていい。


 そんな俺の喜びもむなしく、アルメリアが不吉なことをつぶやく。


「でも天界の使いの無効化は天界が定めたルール。魔王を倒すためにどこかの神が与えた勇者への戯れとはわけが違う。そのルールをやぶったら……」


 この世界を敵と回すことだと、アルメリアは言った。

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