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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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救いを求める

「君は父親のことが好きかな?」


 勇者様は俺にそう聞いた。そのころの俺は親父が盗賊なんてやってるなんて知らなかった。

 優しくて頼りになって村のみんなのまとめ役。病気がちな俺の為、高額な薬代を身を粉にして働いている。尊敬できる父だった。


「俺は父親のことを好きだとか嫌いだとか思ったことはなかった。でも、この世界に来てみて思うんだ。俺は父親のことが好きだったって。」


 勇者の父親は「さらりーまん」という職業についていたらしい。で「もさらりーまん」には「テンキン」というものがあっていろんなところにいかなくちゃいけないらしい。


「子供のころ、俺は病気がちでさ、いろんなところにいくのは体にこたえたんだ。だからついていくことはできなかった。小さなころ、父親とはあまり会えなかったんだな。」


 ある日、勇者の父は「カイガイ」という遠くに「テンキン」を告げられた。


「栄転っだって親父は言ってたけどどうなんだろうな。断ったら昇給もなくなって干されたっていうからな。本当に有能ならそんなことされないはずだろ?」


 勇者の父親はそれを断ったらしい。そして「さらりーまん」を続けられなくなった。

「さらりーまん」をやめた勇者の父親は「たくしーのうんてんしゅ」やら「せいそういん」やら職を転々とした。


「父親はさ、俺と一緒にいなくちゃいけないから会社を辞めたんだ。そして職を転々とした。安定した職業じゃなかったけど家族をちゃんと養ってたんだから立派なもんさ。周りは父親のことを馬鹿にしていたけど、俺はそうじゃないって知ってた。親父のことを好きとか嫌いとか考えたこともないくらいそれは、当然のことだったんだ。」


 でも勇者はしんでしまったらしい。この世界に来る方法はいくつかあって事故を起こしたり、妙なゲートを通ったり、中にはゲームをやっている途中できてしまうこともあるらしい。

 そして、よりにもよって勇者は死んでこの世界にきた。


「俺はさ、生きなくちゃいけなかったんだ。生きて立派になって、親父が会社を辞めたのは間違いじゃなかったって示さないといけなかったんだ」


 でも、もうそれは叶わない。


「だからせめてこの世界で人助けして、証明しようとしてるわけさ。親父が俺のために会社を辞めて一緒にいてくれたのは間違いじゃなかったってな。」


 勇者はどうして俺にこの話をしたのか。思うにそれは俺の親父がほとんど家にいないで働いていたからだ。そして俺が病弱だったから。

 勇者は俺に自分を重ねて、親父のことを嫌いにならないでやってほしいと思ったのだろう。

 俺の親父は勇者の親父と違って盗賊だから、比べるべくもなかったわけだが・・・


 そんな親父の息子の俺が盗賊をやってるのも因果応報、蛙の子は蛙。仕方がないのかもしれない。

 ただ、あの元奴隷商の男は勇者と会っていたという。そしてアルメリアも勇者と面識があるようだ。

 俺を含めて勇者と出会ったものはろくなことになっていないのはどういうことだ?


『だからせめてこの世界で人助けして、証明しようとしてるわけさ。親父が俺のために会社を辞めて一緒にいてくれたのは間違いじゃなかったってな。』


 みんな悪党になってたんじゃ、勇者の証明したかったことは誰が証明するっていうんだ?


 ・・・


 サトミと会った時、勇者様と似た雰囲気を感じて、このことを話してみた。

 サトミは俺が勇者と知り合いだったことに驚いていた。


「勇者と出会ったのって何時ごろだ?どんな奴だったんだ?」


「10年くらい前かな。気のいい、大男だった。」


「男なのか?」


 意外そうにサトミが言った。


「いや、もしかしたら知り合いかもしれないと思っていたから、驚いたんだ。違ったみたいでほっとしたよ。あ、あとそういえば・・・」


 サトミは勇者が烏天狗とか炎の妖精を連れていたかと聞いた。


「炎の妖精?そんなものはつれてなかったが?」


「・・・もしかしたらなんだが」


 俺の勇者とサトミの心当たりのある勇者は別人なのではないかとサトミは言い出した。

 魔王が復活する時勇者が現れて魔王を撃つ。俺が勇者にあったのは10年くらい前。その間に魔王が討たれたという話は聞かない。


 俺のであった勇者はどうなったのだろう。今も、人助けをしながら世界を回っているのだろうか。そしていつか、俺と会って、俺と知らずけりをつけてくれるのだろうか。


 ・・・俺は勇者を待っているのか?


 初めてそのことに気軽く。いつか勇者と再びであったら戦うと思っていた。負けるつもりはなかった。俺には仲間がいるのだから。

 けど勝つつもりもなかった。当たり前だ。勇者は正しい思いを持っていて、そのために行動している。倒せるはずがないじゃないか。

 正しい心を持つ勇者が負けるわけはない。いつか正しくない俺を裁くために現れる。そのはずだったのに・・・


 もし勇者が志半ばで倒れていたら?


『俺はさ、生きなくちゃいけなかったんだ。生きて立派になって、親父が会社を辞めたのは間違いじゃなかったって示さないといけなかったんだ』


 勇者の思いはどうなる?

 勇者の父親が正しかったってことは誰が証明する?

 息子のために「さらりーまん」を辞めて、職を転々として、それでも息子を育て上げた一人の男は、ただな馬鹿な男になってしまうのだろうか?

 そんな父親の思いに答えたいと、死んでこの世界に来てまで人助けをしていた勇者は、勇者として名を残すこともなく消えてしまうのだろうか?


 それはとてもスケールの小さな話だ。でもジェイドにとってはそれ以上ない重要なことだ。

 ジェイドは父親のことを否定している。でも心のどこかで勇者の親父と重ねている。

 悪事に手を染めたことは許されないけど、そこまでして自分のことを思ってくれた父を認めたいと思っている。


 ・・・


 アルメリアからもらった魔道具「悟り見る心の女神」を眺める。

 彼女が言うには、かつてこの魔道具を使っていた存在は生命を自由に操る力を持っていたという。適性があるとはいっても、ジェイドにできるのは怪我を治すことぐらいだが,、サトミと出会ってから少し様子がおかしい。力を増して感じる。

 それだけではない。まるで、今ならあの亡くなった奴隷商すら生き返らせれる。そういう感覚すらある。


 先ほどサトミの前にきて啖呵を切っていた少女、自分たちが射殺した天界落ちの魔法使いに似ている。


 生き返らせた?誰が?


 たぶん、サトミだ。


 泣いていたリューネ。約束を守らなかったアルメリア。生き返らせる力。父親。勇者。正しいという証明。頭の中でぐるぐる回る。

 もし、俺が誰かを助けてやれるなら、勇者が俺を助けたことは間違いじゃないと証明できるかもしえない。勇者を育てた父親も間違いではなかったと俺が証明してやることができる子かもしれない。

 そして自分の命を救うために悪事に手を染めた父だって少しだけ、ほんの少しだけ・・・


 考えていても仕方がない。


 出来ると感じているなら試してみればいい。別にそれで、何か都合の悪いことが起きるわけではあるまい。


 ジェイドはロレンスの墓に向かった。

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