謎の友情が芽生える
アルメリアとの圧迫面接終了後、プレセぺは奴隷商の男を埋葬した。
いま彼女は墓の前で何かに祈ってる。
ハルとチウネもそれにならっている。
「主様、いきかえらせないの?」
ハチが問う。
「死んだらもう、取り返しがつかないんだよ、本当はね」
俺はハチの頭をなでてやる。
しんみりしたワンシーンだが、俺は全く別のことを考えている。
俺があの男を生き返らせなかったのはたんに条件が合わなかったからだ。
生き返らせれるなら別に生き返らせてもよかった。
ただ、こんなことを考えている俺は明らかに異常だ。
蘇生術を使い始めて、実際に使ったのは2人だけだが、明らかに考え方がおかしい。
こんな俺のそばにいたら、いずれハチが人を襲うようになるのも道理なのかもしれない。
ハチにとって死とはなんだろう。
ハチは「いきかえらせないの?」って聞いた。ハチの中では死はとりかえしのつかないものではないのだ。この力はあまりむやみに使わないほうがいいのかもしれない。
「墓を作ってやったんだな。」
ふいに声をかけられた。ジェイドだ。彼はさっきのアルメリアとの対談で、なぜか助けてもらった。この盗賊の頭目らしいが・・・
「そう身構えるなよ。サトミはアルメリアの仲間になったんだろ。なら俺たちとも仲間ってことじゃないか。いつか、手を貸してもらうこともあるかもしれない。お互いにな。」
いきなり呼び捨てかい。
盗賊にしてはやけにいい奴っぽいけど、マフィアだってやくざだって身内には優しいという話も聞くし、そういうものなのかもしれない。
あんまり親しくなりたくないけど殊更に無視して反感をかうのもよろしくない。
そのときはよろしく、と簡潔に答える。
「いい女だな」
プレセぺをながめてつぶやくジェイド。
「サトミが惚れているのもわかる」
て・・・は?
「違うのか?」
「違うぞ全然」
俺はきっぱりと否定した。
考えてみれば、アルメリアに向かってプレセぺを渡すよう要求したのを見られている。誤解されたのは仕方ないかもしれない。
ただそれはアルメリアと行動を共にするにあたっての最大の懸案事項を排除しようと思っただけだ。
アルメリアが最初にプレセぺを渡すように迫ってこなければこんなややこしいことにはならなかった。逆に言えばそこをクリアできれば当面はついて行っても構わないということでもある。
もちろん、俺はもうアルメリアが悪魔で人の魂を奪う存在だと知ってしまっているから、いつかは決別することになるだろうが・・・
「自分では気が付かないことって、本当にあるもんなんだな」
「いや、本当に違うってば」
むきになる俺ににやりと笑うジェイド。
なにこれ?なんか俺が本当にプレセぺが好きでいいあてられて悔しいみたいな感じになってるんだけど?
「なんだか、サトミとはうまくやっていけそうな気がする」
俺はあんまり盗賊とうまくやっていきたくはないが・・・
なんかすっかり打ち解けましたみたいな空気が流れてる。
好かれる分にはいい・・・のか?
でもこの先ジェイドが罪のない人間をざくざく殺したりしてるのを目の当たりにしたら、俺はどう反応すればいいのか。
止めるのか?距離を取るのか?気にしないのか?
なんか考えてたら憂鬱になってきた。
「お父さん!」
墓に近寄る少女。墓までたどり着くと泣きながら素手で墓を掘り起こし始める。
これは・・・
「ガプス!」
ジェイドが娘を連れてきたらしい盗賊を呼ぶ。
「お前がつれてきたのか?」
「すいません、父親の死を聞いた娘があまりにとりみだしたもので」
「そうか・・・」
ジェイドは物憂げな視線を娘に向ける。
て・・・何この盗賊達。やけにゆるくね?こんなもんなの盗賊って?
それともジェイドが頭目だからこんなにゆるいのか?
ジェイドはゆっくり娘に近づくと何事か告げる。娘はジェイドにすがりつき泣き始める。
傍にいたプレセぺ達もそれを見つめている。
さすがに空気を読んだのかチウネもそれをながめている。
チウネ・・・か。
ここでひとつ関係ない話をしようか。
アルメリアにプレセぺに代わる誰かを要求された時、チウネを差し出せばよかったんじゃね?ていう話だ。
さすがの俺もそんな非道な真似はしない、などと思ったら大間違いだ。
あのときの俺はおいつめられていた。フェーズ2どころかフェーズ3くらいに移行していた。
まず最初に2人の盗賊の捕虜について持ち出したのはそれでなんとかなってくれればと思っていたからでもあるが、前ふりのためでもある。
いきなり「じゃあチウネをあげる」とかいったら相手は納得しないだろうけど・・・
盗賊2人の条件を拒否された俺が泣く泣く「じゃあチウネをあげる」といったら納得すするかもしれない、的な?
本当にやっていたかどうかはわからない。でもやってた可能性はある。行きつく先はそれで行動していた・・・
俺の胸でなくがいい。みたいに娘を抱き留めているジェイドを横目に、ああ・・・俺の方が盗賊よりよっぽど非道だな。などと考えていた。




