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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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信頼関係

「ハルやプレセぺも悲しんでるし、俺はあくまでもこの男の魂がほしんだが?」


 サトミはそういって食い下がった。

 ロレンスの傍らの少女と女の子はそんなサトミを応援するように見つめている。

 面白い、アルメリアはそう思った。

 サトミがロレンスの魂にさほど執着してないのは見て取ることができる。

 ほしいものが手に入らないから、もっと上等なものを差し出せというつもりなのだろう。


 サトミの持つ蘇生術の価値を考えれば、ジェイドを含めて盗賊団全ての魂を差し出してもおつりがくる。

 ジェイドは気に入っているから差し出したくはないが、他の盗賊なら盗賊の村の全員をひっくるめてでも差し出して構わない。


 だが、アルメリアが面白いと思ったのは別の理由だ。

 次の条件でサトミ個人としてどういう人間かをおしはかることができるかもしれない・・・


 サトミはこれから銀の教団の仲間として働いてもらうつもりではあるが、本当にそうなるかは本人次第だ。

 サトミ自身に教団で働く意思がなければ、意味がない。

 彼にはそれを拒否する力が備わっている。


 サトミ自身の力は人間と大して変わらないようだが、だがだからこそそんな力の者ですらアルメリアの力の大半を封印できたのは恐るべき事実だ。

 そんな力をもった者が人と同じ力しか持っていないのもおかしい。おそらく力をコントロールして弱くして見せているのだろう。


 力や人質で従わせる手もあるが、通用しなければ決定的な決裂になってしまう。

 サトミはアルメリアの力の10分の1を簡単に封じる力を持っていた。能力的な条件はほぼ対等。それ以上の可能性もある。

 前回はアルメリアの力が封じられていることを隠していたため、こちらが上の立場として有利な条件をのませることができたが、今回はそうはいかない。


 条件面は最初からできるだけ好条件にしておいたし、この世界における亜人の扱いを考えたら仲間になった方がいいのは確実だ。

 けれど大きな力をもった者は時として独自の価値観で動くことがある。

 サトミはいったい何を大切と考え、何のために動くのか、推し量る絶好の機会と言える。


「プレセぺを俺にくれ」


 サトミはそういった、

 ・・・?ただの女好き?

 ではない。うっかりしていた。

 そういえばアルメリアは最初プレセぺを回収しに出かけたのだし、彼につけた好条件にもプレセぺの身柄は入っていなかった。

 サトミがアルメリアに対して行える最も大きな無理難題、それはプレセぺの安全の確保だと考えたのなら納得がいく。

 事実、ついさっきまで自分もプレセぺに固執していた。

 しかし・・・その主な原因は主にアルメリアの心の中にあった。


 プレセぺには運命の流れを変える力がある。それによって引き起こされる事象をアルメリアは恐れた。

 けれど、運命を変えられていったい何がいけないのだろう。

 自分の大切にしていたものは当に失っていた。もしかしたら最初からなかったのかもしれない。

 銀の教団だってただ、昔の仲間との絆を保っていたくて参加している過ぎない。

 失う物のない悪魔であるアルメリアに、その力を恐れる理由など初めからなかったのだ。


 迷いを捨てた今のアルメリアにはプレセぺはただの上質な魂でしかない。

 といっても天使の魂だ。価値は計り知れないが、これから先サトミをつなぎとめるための枷にできるのなら別に高くつくものでもないだろう。


 ふふ・・・っ


 アルメリアは内心笑う。プレセぺの能力は実際大したものだ。もう一人の天使の相棒と引き離されておきながら、サトミという次の庇護者を確保し、まんまと難を逃れているのだから。


 でも何か面白くはないわね。

 アルメリアも条件をだすことにした。


「プレセぺを確保するのが私の目的よ。彼女の身柄をあずけるのは無理よ・・・でも、他にそれに相当するものを差し出せばその条件を飲んでもいいわ。たとえば、そのコントンとか、半悪魔の子とかね」


 プレセぺ、コントン、半悪魔の子の顔がこわばる。そしてサトミの顔もこわばる。

 あらあら、わかりやすい。そんなんじゃ悪魔を出し抜くのは無理よ?


 サトミは苦し紛れに言う。


「プレセぺに相当するものをさしだせば、いいんだな。なら、さっき俺はハチを檻から出す際盗賊二人を捕まえている。そいつらの身柄を・・・」


「駄目よ。」


 即座に断る。そんなゴミが交渉の材料になるわけがないでしょう?

 むしろ勝手に仲間2人をとらえられてるわけだから交渉が不利になるわよ?

 このことを掘り下げれば、何の見返りも払うことなく、コントンを捕えたことをうやむやにできるかもしれない。

 まぁ、そうはしないけどね。

 あくまで私の慈悲によってみんな条件を飲んであげる。サトミにはこれから仲間として働いてもらわないといけないもの。せいぜい恩をうってあげることにするわ。

 アルメリアがそう思っていた時だった。


「ちょっと待てよ。その盗賊2人はおそらく俺の仲間だ。」


 いったのはジェイドだ。


「そのプレセぺって女がどれだけ価値があるのかは知らないが、俺にとっては仲間の方が大切だぜ?」


 何を言い出すつもりなの?

 ジェイドを見る。ジェイドはひょいと肩をすくめて見せた。


「なあ、アルメリア、俺は娘の魂がほしいとは聞いていたが、この男の魂まで奪うとは聞いてなかったぜ?これは重大な契約違反じゃないのか?」


「そんな、今更何を言って・・・」


「俺はあんたに魂を預けている。すぐに消されても文句は言えない立場だ。だからこそ、約束は守ってもらわないと困るんだよ」


 にらみ合う。


「わかった。こうしよう。」


 2人を眺めていたサトミが口を開く。


「俺は盗賊2人と引き換えにジェイドっていったな、あんた自信を要求する。そしてアルメリア、プレセぺの代わりにジェイドを差し出そう」


「そんなのいいわけないでしょ!」


 アルメリアは否定するが。


「いいぜ。」


 ジェイドはその条件をのんだ。


「アルメリア、これは俺とあんたの信頼関係の問題だぜ。俺の価値はプレセぺ以下なのか?そしてこれから契約するだろうサトミっていったな。彼への誠意でもある。お前は一度契約した相手を簡単に切り捨てるような誠意のない悪魔なのか?」


「・・・」


 ジェイドはアルメリアが是が非でもサトミを仲間に引き入れたいということがわかったようだ。

 だから、ここでジェイドを切るようならアルメリアは約束を守るような悪魔ではなく、信用できない、仲間になるべきではない、と言っている。

 そういうことでアルメリアにサトミの提案を断らせないようにしている。サトミを援護しているのだ。


 でも、なぜジェイドがそんなことを?


 ジェイドは魂を抜かれたロレンスをぼんやりと眺めている。


 ああ・・・

 そういえば、ジェイドの前で人の魂を奪うのは初めてだった。彼の性格からして感傷的になったのは間違いない。別のことに気を取られていてそこまで気が回らなかった。


 私のミスだ・・・。


 でもまぁいい。最初からプレセぺに固執などしていなかった。

 

 今回は負けにしておいてあげるわ。

 

 アルメリアは肩をすくめた。

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