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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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最果ての森

 私の家系は代々魔力が強く、数代おきに天界の使いが来て子供を連れ去ってしまうのです。

 その中で「天界落ちの魔法使い」だった祖先の一人が、天界の技術を使って魔力の成長と発言を阻害するアミュレットを作り出しました。

 私自身はたいした魔力は持ちませんが、もし子供ができた時、その力が色濃く発現するかもしれません。


 美しい奴隷はそう告白し、自分の持つアミュレットを没収しないでほしいと懇願した。


 のちの妻である。

 話半分に聞いていたが、確かに娘にはたぐいまれなる魔法の力が備わっていた。

 可愛い娘を天界に連れ去られないため、すぐにアミュレットを持たせたが、娘の力はそのアミュレットをもってしても阻害することができなかった。

 たまに、簡単な魔法なら使うことがあった。

 娘に力を決して使わないように注意したが、それでも限界はやってきた。

 娘が14の誕生日を迎えた時、アミュレットに大きなひびが入った。


 ロレンスが奴隷商として一線を退いたのは最後に大きな仕事をこなしたからだ。

 仲間の一人が人魚を捕まえた。

 かつて人魚はその美しさから愛玩用の奴隷として重宝されていたが、今は絶滅の危機に瀕している。

 その理由は人魚の肉を食べれば不死の力がやどることがわかったからだ。

 そのためには特殊な加工が必要で、人魚を食べたからとってそれだけで不死になれるわあけではなかったが、その話を広めたのが勇者だったため、爆発的に噂は広まってしまった。

 人魚狩りが横行し、愛人の一人として人魚を囲っていた権力者もこぞってその肉をくらったという。


 人魚の価格は高騰しており一匹捕まえれば一族郎党一生遊んでくらせる金が手に入る。

 ロレンスは仲間を羨ましがったが、それでおこぼれにあずかれるわけはない。ただ羨ましがってみていることしかできないはずだった。

 ところが、その人魚は悪魔との混血だった。

 娘を奪われた悪魔は激怒し、仲間の奴隷商を皆殺しにしたという。

 悪魔は娘を連れて、最果ての地の向こうに消えた。


 普通なら、最果ての地の向こうに逃げた亜人を追うことはない。

 だが、人魚はあまりに貴重だ。捜索隊が組織され、人魚狩りが始まった。

 そのことごとくが悪魔に返り討ちにあった。

 けれど、悪魔にも限界がある。最後には捜索隊を巻き添えにして滅んだのだという。

 悪魔は消えたが、娘の居場所はようとしてわからなかった。


 いつまでも娘を探しているわけにはいかなかったので捜索は打ち切られた。

 捜索が打ち切られた後も人魚を探すものはいた。

 そんな者達の道案内をして小銭を稼ぐのがはやった時期もあった。

 娘は意外な形で見つかった。最果ての地にあるワーウルフの集落で姿を見たものがいるというのだ。

 秘密裏に捜索隊が組織され、その中にロレンスも参加した。


 残念ながら娘はワーウルフに食い殺された後だった。人魚の部分は食い尽くされ悪魔の部分だけが食べ残されていた。さすがにこれでは売り物にならない。

 人魚を見つけることはできなかったがかわりに、大量のワーウルフは生捕ることができた。人魚ほどではないがワーウルフも亜人だ。高く売れる。

 見つかったワーウルフ達の数はちょっとしたものだったのでロレンスたちは一生を遊んで暮らせる金を手に入れることができた。


 不思議だったのはワーウルフ達が暮らしていた森だ。最果ての地にありながら強力なモンスターがいない。とても穏やかな村だった。


 ・・・


 娘のアミュレットにひびがはいったとき、思い出したのはその森のことだ。

 天界の使いも最果ての地ならば追ってこれないのではないか。最果ての地の中でもあの森ならばなんとか生きていけるのではないか?


 ロレンスは私財をなげうって最果ての森に逃げることにした。

 そのさい、天界落ちの魔法使いを雇うことになった。

 天界落ちの魔法使いなど今では都市伝説になりつつあったが、妻の言葉があったので信用することにした。

 彼女が年端もいかない少女だったからというのもある。

 天界落ちの魔法使いは、16のとき天界の査定に引っかかり地上に落とされるという。彼女もちょううどそのくらいだった。

 もし嘘をついていたとしても、最果ての地で金を持ち逃げするなど自殺行為だ。女であれば娘を襲う心配もない。

 どこか人を見下した気にくわない少女だったが、天界の人間は地上の人を見下しているのかもしれない。

 そういうものなのかもしれないと思っていた。

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