檻の中
のどがかわいた・・・おみずがほしい
ハチはぼんやりと考えるが考えはまとまらない。
この感覚は昔、ハチがまだコントンの末裔として仲間たちと群れを成していたころと似ている。
ハチは何か考えていたような気もするし、何も考えていなかったような気もする。
ただ一つ覚えているのは怪我をして死にそうになった時のことだ。
定期的にハチたちはグランガチに戦いを挑んでいた。そしてユルルングルたちに返り討ちにあった。
それでも、許せない、という思いだけで挑み続けた。
どうして許せないのかは思い出せないけれど・・・
その日もユルルングルにこてんぱんにされた。
とどめを刺されそうになった。
「止めてください!」
誰かがそれを止めた。
「どくがいい、眷属の娘よ。そのものは邪悪な神の末裔。この程度で死ぬことはない。」
「でも」とその子はいった。
「なぜおまえはそのものを助けようとするのか?お前に交じっている悪魔の血がそうさせるのか」
その子はとても悲しそうな顔をしていた。
やめろ、違う、その子をいじめるな・・・そういいたかったけど、言えない。そのこはそう、友達なのだ。村のみんなはグランガチたちに内緒で俺たちと遊んでくれて、その中にこのこもいて。だから助けようとしてくれているだけだ。でも、声が出てこない。声が声が・・・
「違う!」
叫ぶと、ハチは人の姿に変わっていた。
喉は相変わらず乾いている。おなかもすいている。でも変身できるくらい力は戻ってきていたみたいだ。
今、ハチは檻に閉じ込められているようだ。
檻にはなにか不思議な力がかかっておりでることはできそうにない。
こんなとき主様はどうする?
主様は強いから、いろんな道具をもっているからハチみたいにピンチにはならない。
だから参考にならない。でも、あの女と戦った時、ハチが足を引っ張ったからピンチになった。
あのとき主様は・・・
「だれか!だれか!たすけて!」
ハチは檻の中で声を上げた。喉が渇いてうまく声が出ないけど。
声を聞きつけて人が2人助けにきた。
「どうしてこんなところに子供が?」
驚いている。
「いぬにえさをやろうとしたらにげられちゃったんだ!はやくたすけて!」
「お、おう待ってな!」
鍵を持った人が近づいてくる。チャンスだ。でも
「まて、ここは最果ての地だぞ。なんで子供がいるんだ?」
もう一人が止める。
「こいつ、あの犬が化けたんじゃないのか?」
あっさりと気づかれた。やはり主様のようにはいかない。
「ち、ちがうよ。ハチはいぬじゃないよ!」
「そういえば声がかすれてるな」
「危ないところだったぜ」
計画は完全に失敗したようだ。
そう思った時、どすんと、何かが2人の上に落ちてきた。
「主様!」
それは主様だった。やっぱり主様はすごい!ハチがピンチのときにいつも助けに来てくれる!
・・・
「ハチ、こいつを腹の中に戻せ」
サトミは霊竹のやりをチウネから奪い命令した。
「そ、そんな」
チウネが絶望した表情で俺を見る。
あたりまえじゃこのボケが!
疲弊していたハチに腹の中から祭壇の器を取り出して水だけでも飲ませる。
ここはアルメリアと仲間のアジトみたいだ。プレセぺとハルを出すのは危険と考えて俺とハチだけで脱出を試みることにする。
実力的にはむしろ俺もいない方がいいんじゃないかという気もしなくもないが、見張りの奴は人間だったし、ハチも疲弊しているので俺は残ることにした。
最強防具を装備すれば防御力だけならハチよりも強いしな。上から人が落っこちただけでのびるような人間相手ならおくれはとらないはずだ。
間違ってもハチに人殺しをさせるわけにはいかない。
今度こそ、今度こそ、俺も戦えるってところを、命を奪うことの虚しさ悲しさを、背中で教えてあげる所存である。みているがいいハチよ。
ご主人様はお前を戦わせて後は高みの見物したり、自分だけ逃げたり、後で文句だけグチグチ言うような屑じゃないんだ。それを証明するぞ!




