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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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寝坊

 それはゆめだったのか現実なのかはわからない。

 何しろ俺は記憶を失っている。

 ときおり思い出すものが本当のことかどうかは確証がない。

 その中でもこれはもっとあやふやな夢だ。

 現実と夢どころか妄想なのかもしれない。


 ・・・


 そのとき俺は寝坊して、部活に遅れそうで焦っていた。

 急いで自転車をこぐ。

 こういうときに限って連続で信号にひっかかる。

 ぐぅ、腹の虫が鳴る。

 朝ご飯を食べてこなかった。

 朝御飯は食べないという奴もいるが、俺は食べないと力が出ない。


「ん」


 ふいに横からカロリーメイトをさしだされる。メープル味だ。

 みればいつからいたのか幼馴染の姿があった。

 自転車ではない。徒歩だ。幼馴染とは別の高校に通っている。

 幼馴染の高校は俺の高校より遠く、駅まで徒歩で電車に乗るのだ。

 幼馴染とは小学生以来まともに話をしていない。どころかなんか中学生のころはずっと無視されてた気がする。

 唐突な申し出に困惑する。


「105円」


 カロリーメイトを受け取ると金を要求された。


「金とるのかよ?」


「・・・じゃあ、100円でいい」


 ものすごく不満顔で言われた。

 そうだった。こいつは例え電話代の10円ですらきっちり要求してくる奴だった。

 お祭りとかゲームセンターで金を貸してといっても、借りれたためしもない。

 そのくせ変なところでふとっぱらでレアカードを物欲しげにしてるとただでくれたりもした。

 基本的には良い奴なのだ。

 でも親に金は貸すな、借りるな、あげるなといわれていて、それを守ってるから金は絶対に貸さない。

 まぁ、それは普通のことか。幼馴染に金の貸し借りを教えなかったら大変なことになってたかもしれない。

 きっとあいつは「いいよ」といって金を渡しただろう。

 まるでレアカードをくれるみたいに簡単に。


「いいよ、105円やるよ」


 俺は105円渡した。

 幼馴染はほっとしたようにうけとった。


「おっ、お前も遅刻かよ!」


 友達が声をかけてきた。

 これで2人は他人に戻った。

 信号が変わると何も言わず幼馴染は行ってしまう。


「信号変わったぜ?」


 言われて俺たちは走り出す。すぐに幼馴染を追い抜いた。


 ・・・


 この世界には見えないルールがある。

 見えないルールは俺たちを束縛する。

 正しいことでもルールに従わなければ言ってはいけない。行ってはいけない。

 そのルールはいろんなものの集合体で、時と場合によって変化していく。

 嫌なルールのときもあれば、好ましいルールのときもある。

 それに従わなければ罰を受ける。逆らえばより強力な罰を・・・


 稀に、ごく稀にルールから外れた存在もいる。

 外れただけではなく、そのルールを強制的に従わせる存在がいる。

 そのルールが好ましいものであったとき、俺はそれにあこがれる。


 ・・・


 プレセぺはハルの髪をすいている。

「女の子はいつもきれいにしてないといけないんですよ?」

 ハルは大人しく髪をすかれている。持ちよさそうだ。

 タナカは指をくわえてそれを見ている。もしかしてお前もやってほしいのか?


 そういえばハルの髪をすいたことなんてなかった。

 というか髪を洗ったこともないような。

 ハルは半分人魚だからか髪はそんなに汚れてない。

 ハチは大抵犬形態だし、カルラは獣だし、気にならなかった。

 もしかして、一番やばいのは俺なんじゃないか?

 試しに髪を触ってみたらサラサラだった。俺も神様だから人間じゃないってことか?最近悪魔疑惑も出てきてるけどな!


 プレセぺにバジリスクを置いてきたことを謝ったら気にすることはないと言われた。

 ヒラキンはいつでも呼び出せるらしい。

 やけにあっさりとしたものだと思ったら、アルメリアにぼこられて半殺しになったところ放置してきたことを、説明していなかった。

 さすがにそれを教えたら心配するだろう。

 黙っとこ。


 ヒラキンについては心配しているようだが、無事を信じているようでもある。

「カラスなんかに負けません」と気丈に話していた。


「カラス?」ハルが反応したので必死に誤魔化す。

 そのカラスはカルラじゃないんだ。状況証拠的にまずカルラだろうけど、カルラの形をした別の何かなんだ。

 ハルは聡いのでカラスがカルラだとすぐに感づいたようだが、俺が黙っているように言うので何か考えがあると黙っていてくれることにしたようだ。

 考えなんてないけどね。


 プレセぺが使っている櫛。あれはみたことはない。プレセぺの荷物をあさった時あんなものはなかった。プレセぺが携帯していたということか。そういえば荷物はあさったけど手持ちの物はチェックしてなかった。


 プレセぺに髪をすかれるハルを見てなごんでいたが、こんなことしてる場合じゃない。

 一向にハチから出られる気配はない。

 いい加減こっちからアプローチしたほうがいいだろう。

 手持ちのアイテムを確認する。


「黄泉照らしの金貨」「記念銅貨」「超神聖水」「身分証明証」「祭壇の器」「忘れられた神様の服」「異世界の服」「ゴットナイフ」「不殺の弓」「生け捕りの竿」「神様のフライパン」「不思議な釜」「魔法の絨毯」「防水布団」「ジャックの皿」「無限灯篭」「グランガチの涙」「神獣の鎧」「超獣の兜」「霊獣の盾」「異世界の靴」「霊竹のやり」「霊木の盾」・・・こんなもんか


 用途がわかっているものを抜くと「黄泉照らしの金貨」「超神聖水」「ゴットナイフ」「霊竹のやり」の中でなんとかせねばなるまい。


 俺はゴットナイフを眺めて思う。そういいやこんなもんもあったな。攻撃力は霊竹のやりより上。???の棍棒とひかりの矢亡き今これが現在の最強武器ということになる。


 童話だとオオカミに食われた主人公が自力でナイフを使って腹から出てくる話もあったような・・・いやいや、ハチのお腹をかっさばいてどうする。

 俺は縫い合わせる針と糸なんか持ってないぞ。


 出口がわかってるなら魔法の絨毯でそこまで飛んでいくという方法もあるが、この不思議空間には出口らしいものはない。


 どうしたものかと考えてるとぼんやりと霊竹のやりが輝きだした。

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