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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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すーちゃん

 すーちゃんは、竜の体に少女の顔をもつ女の子でした。


 むかし、この世界に今よりも強く今よりも多くの理があった頃、人にとって生きにくい理をなくすため、お母様が喰らい、そして生み出したのがすーちゃんなのだとお姉さまが言っていいました。


 その理はもうなくなってしまったけれど今ある言葉で最も近いのは勧善懲悪なのだそうです。

 善い行いをしたものは良い目にあい、悪い行いをしたものは悪い目に合う。

 でも人間はよいことだけをして生きていくことができない存在。だから、お母様はその存在を食べてしまったのだとお姉さまは言っていいました。

 善い行いをしたものが報わず、悪いことをしたものが罰を受けないことがどうして駄目なのか、私には難しくてよくわかりませんでした。


 すーちゃんは理からつくられた存在。だから、意思など持たずただ、すべての罪を喰らい尽くす存在なのだとお姉様達はみな、恐れていました。

 でも私はそれは間違いだと知っていました。


 すーちゃんには意思があります。寂しがり屋で、とても優しい。私たちと同じお母様から生まれたお母様の娘なのです。


 私が、すーちゃんと初めて会ったのはお姉様たちのいいつけで森に薬草をとりにいったときです。

 始めてはいる森で道に迷ってしまいとほうにくれていたとき、すーちゃんに出会いました。

 すーちゃんは眠っていましたが、私が道を聞くと親切に森を出る道を指さしてくれました。

 森から戻るとお姉さま達はおどろきどうしてもどうして戻ってこれたのかと聞きました。

 私がすーちゃんのことを話すと、お姉様達は私のことを遠ざけるようになりました。


 私は一人になりました。エキドナお姉様は優しくしてくれたけど、いつも私に構ってくれるわけではありません。

 エキドナお姉様が自分だけのお姉様だったらと思うこともありましたが、それは願ってはいけないことです。


 私はときどき、すーちゃんのところに遊びに行くようになりました。

 すーちゃんは私の話を嫌な顔一つせずに聞いてくれました。

 私たちは少しづつ仲良くなっていきました。


 エキドナお姉さまがヘラクレスと名付けた男の人と旅立って落ち込んでいた時、慰めてくれたのもすーちゃんでした。

 ずっといっしょにいてくれて、忠告もしてくれました。


 すーちゃんはみんなと同じようにお話をすることはできませんでしたが、断片的に話をすることがありました。

 最初は何日も一緒にいてその言葉を拾わなければその意味がわからなかったけれど、今ではその一言ですーちゃんの言いたいことがわかりようになりました。


 すーちゃんは私に悲しまないようにいいました。

 私が悲しめば、お姉さまが帰ってくるように望めば、それはかなうかもしれない。でもそれではお姉さまを不幸にしてしまう。それだけは絶対にあってはならない。


 そしてそうなったら、私はすーちゃんともいっしょにいられなくなってしまう。


 ワカラ、ナク・・・ナル


 そう言ったすーちゃんはとても寂しそうでした。

 だから私は約束しました。私はいつまでも変わることない、すーちゃんが見つけられる私のままでい続けると。


 ・・・


 エキドナお姉さまが帰ってきました。


 美しかった体はずたぼろに引き裂かれ、つぎはぎだらけの蛇の体で、母の国の娘ではありえないはずの子供をその手に抱きかかえ・・・


「あの男のせいだ・・・あの男が私の体を蛇に変えた・・・子供を産めぬのなら埋める身体をくれてやる、そういって私の体をバラバラにして弄んだ!!!」


 帰ってきたエキドナお姉様の心は完全に壊れていました。


 介抱しようと近寄ったものをにらみつけ、殴り、罵倒しました。


「卑しい母の国の娘たちよ!お前はこの子をうばうつもりなのだろう!でもそうはいかない!この子はあの男を殺す!そのために生まれた!愛しい愛しい私の子なのだ!アハハハハハ!!!!」


 お姉様達は変わり果てたエキドナお姉様に戸惑い怒り、そしてヘラクレスを討とうとしました。

 でもそうやってヘラクレスに挑んだお姉様達は皆、帰ってくることはありませんでした。


 残ったお姉様も一人また一人とエキドナお姉様から離れていきました。

 最後に残ったのは私一人。


 私には運命を変える、力があります。

 私は罪を犯したのだと思いました。

 私がエキドナお姉様とずっと一緒に居たい。自分だけのお姉様であってほしい、そう思ったから。

 だからこんなことになったのだと・・・

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