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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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トート

 トート、かつての名を「姉の国」。

「王の血族」に守られし8つの国の一つ。

 国を治める女王エリザベートは彼女が「姉」を滅ぼしてから永遠とも思われる時を、国を守り愛し過ごしてきた。生きる伝説。


 8つの国の中でもそれは例外的なことだ。

「王の血族の呪い」は代々に引き継がれるものもあれば国中に広がるものもあった。

 1人で呪いを背負い続けた彼女は特別であり畏怖と尊敬をもって敬われている。

 例えいくら国が貧し、衰えようと、誰もが彼女を崇めることを辞めはしない・・・


 メーティスはトートにおける皇族の娘だった。

 トートはエリザベート一人がすべての権力を握っているが、その身の回りの世話をするものとして皇族は存在していた。その力はないに等しいが、労働の義務からは解放される。

 平民は休むことを許されず、ただエリザベートを愛することだけを幸せと教えられ、ただ働いて、子供を作り、育て、死んでゆく。

 それはとても立派なことだとメーティスは思っている。決して見下し見くびってはいない。

 あんなふうに働くことしかしないなんて決して自分にはできはしない。平民とはなんと素晴らしい生き物なのだろうと思っている。

 まるで皇族と平民は別の生き物のようだ。人間が蟻をみてよく働くなと感心している感覚に近い。


「メーティス、よく来たわ」


 エリザベートが見るものすべてを安心させる笑顔で彼女を迎える。

 女王様に声をかけていただけるなんて、名前を読んでいただけるなんて、なんという幸せ。メーティスは感動して涙が出そうになった。

 いくら皇族とはいえ、エリザベート様に声をかけてもらえるなんて1生に1度あるかないかなのだ。事実、エリザベートに呼ばれ会いに行った者達のほとんどはもう2度と姿を見せることはない。


「実はね、あなたの妹のことでお話があるのよ」


 妹のこと?

 メーティスは少しがっかりしたが、すぐに気を取り直す。妹が女王様に気に入られたのならそれ以上幸せなことがあるだろうか。


「実はね、盟友のデルピオネから予言を聞いたの。近いうちに、あなたの妹は魂を奪われると」


 デルピオネ、確かヤマタイト国の姫の名だ。かの国も8つの国の一つに挙げられている。

 そんな姫様がわざわざ自分の妹の予言を?

 しかも魂をうばわれるという・・・


「魔王の仕業なのですか?」


 振るえる声で聞く。


「なんともいえないわ。でも。デルピオネがわざわざ教えてくれたということは何かあるのでしょう。」

 あの子もうほとんど予言はできなかったはずなのに、ぽつりとつぶやく。


 そして女王様はデルピオネ姫様からの予言をメーティスに教えてくれた。


 妹の魂を奪うという存在は今はまだいないという。

 ここよりはるか遠く最果ての地の地のいずれかに現れる。

 そしてメーティスの妹の魂を奪う。防ぐ手段はない。


 防ぐ手段がないといわれた時、メーティスはあまりのショックに気を失いかけた。妹とは歳が10ほども離れている。自分によくなついている。それだけに可愛い。

 悪魔に魂を奪われたものは2度と転生することもできず悪魔の糧になるという。

 そんなひどいことは絶対に許されることではない。


「妹を助けたいの?」


 女王様が訪ねた。もちろんだと答える。


「魂を取られるのを避ける方法はないわ。でも、取り返す方法ならあるわ」


 それは本当ですか?

 さすが女王様だ。この方についていけば大丈夫。この方についていけば間違いはない。

 何千年も、何万年もずっとそうしてきたのだから。

 すがる気持ちのメーティスにエリザベートは告げた。


「そのためには一度死ぬことになるけれど」


 ・・・


 メーティスは今、2人の・・・いや、3人の悪魔の後ろを歩いている。

 1人は女、1人は男、もう1人は子供。

 他にも大きな狼を従えて歩いている。

 彼らは卑怯にも天使をとらえて帰る際中らしい。

 可哀そうな天使様。悪魔になにかしらされたのか気を失っている。

 でもこれはチャンスでもある。

 天使と言えば悪魔を撃つことが使命の大いなる存在。目を覚ましたなら、きっと自分の助けになってくれるだろう。メーティスはそう思っていた。


 エリザベートの教えてくれたことはこうだ。

 まずはジアント国に赴き、庇護下にあるソロモン国を尋ねる。その南方、最果ての地の近くにある町にいき最果ての地を目指す父と娘に出会い同行すること。

 その途中で自分は殺されるが、生き返るという。

 その場にいる悪魔こそが、妹の魂を奪う・・・いや、その時点ではすでに奪っている悪魔なのだという。


 ここまで来るまではつらかった。エリザベート様に言われた通り天界落ちの魔法使いと偽り、平民たちと3か月も過ごさねばならなかった。たまに見るだけなら良いが、実際に経験してみるとその暮らしの劣悪さはひどいものだった。

 よく我慢できたものだと思う。でも、それもこれもみな妹の魂を取り戻すためだ。


 この場にいる者達には自分は記憶がないといってある。これもエリザベート様に授けてもらった知恵だ。でももうここから先はそれもない。自分でなんとかしなくてはならない。

 3人を注意深く見つめる。いったい誰が妹の魂を奪う、いやもうこの時点では奪った、悪魔なのだろうか?

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