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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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契約なんてしませんよ

 アンリウムはなんだかんだ言って俺を助けてくれている。

 ハチの命が危ない。

 他に方法がないのなら契約するのも仕方ないのかもしれない。だけど・・・


「一つ聞いてもいいか?」


 俺はアンリウムに問いかける。


「お前はどうして勇者を殺したんだ?」


 一番気になるのはそこだ。

 やむにやまれぬ理由があったのか?

 例えば勇者が暗黒の力に飲み込まれようとして仕方なく殺さないといけなかったとか。あるいはそもその殺してないとか。

 理由があるなら契約してもいい。そう思いかけていた。


「勇者はね、私をおいていくっていったんだよ」


 しかしアンリウムはそう答えた。

 クスクス、と笑うアンリウムの声がやんでいる。かわりに怒りの感情が伝わってくる。


「私をつれだしたくせに、私には勇者しかいなかったのに、勇者にはほかにたくさんがいた」


「勇者はもとの世界に戻ろうとして、お前が嫌がったってことでいいのか?」


「仕方ないよ?勇者は人気者。愛されてる。でも勇者だけは見捨てないと思っていたのに」


「お前は勇者が好きだったんじゃないのか?」


「好きだよ。私には勇者だけ。私に名前をくれた。私は私になった」


「だいたいわかったよ・・・アンリウム」


 アンリウムはみんなに疎まれて閉じ込められていた。もしかしたら世界を恨んでいたのかもしれない。

 そんなとき勇者があらわれアンリウムを外の世界に連れ出した。

 アンリウムにとってそのときがもっとも愛しく、楽しかった時間。


 アンリウムは勇者が好きだった。勇者もアンリウムを仲間だと思っていた。でもそれはほかのたくさんの仲間の中の一人だ。アンリウムはそれが寂しかった。


 別れの時はやってくる。勇者はもとの世界に戻らないといけなくなった。

 アンリウムにとってそれは裏切りだった。


 それは俺がアンリウムの力を借りた最初に見た後景。そのままの事実。

 何も誤解などはない。全て事実だったのだ。


 俺はアンリウムにつげた。


「お前は悪魔だ」


「アンリウムは悪魔じゃないよ?炎の妖精だよ?よい子だよ?」


 アンリウムの言葉から戸惑いの感情が伝わってきた。


 一番最初に見た光景は事実だったけど、そこには見た光景とは別に感情があった。

 閉じ込められて、嫌われていて、寂しかった感情。

 勇者につれだされて、冒険してうれしい感情。

 勇者においていかれると分かって絶望した感情。

 それ自体は普通の感情だろう。でも


「それは勇者を殺していい理由にはならない。自分が嫌だという感情をぶつけて勇者を殺してしまったお前は、力を持つお前は、お前を表すに一番ふさわしいのは、悪魔なんだよ」


 だからといって殺してしまっていいわけはない。

 そもそも勇者のことが好きならどうして殺せたのか。

 アンリウムが好きだったのは勇者ではなく、ただ自分を救ってくれる存在。だから裏切られたと思って殺せた。アンリウムは勇者なんか見ていなかった。

 そのことを告げてやってもいいが、いわないでおく。

 アンリウムにはそれしかすがるものがない。

 俺はアンリウムに助けてもらった。そこまで残酷にはなれない。


「悪魔じゃ・・・ないよ。なんでそんなこと言うの?勇者は言った。一緒に旅してみんなを助けれようって、君は悪魔じゃないって、たくさん悪い奴を倒したよ。言うとおりにしたよ」


「でもお前はそんな勇者を殺したんじゃないか」


「悪魔じゃないよ?アンリウムはアンリウムだよ?お前、違う。勇者とはは勇者とは違う。せっかく助けてやろうと思ったのに、勇者に似てるって思ったのに」


「こんどは逆切れか。どうしようもない奴だな。罪を償おうという気すらないのか」


「罪なんかない。勇者が悪いんだ。おいていくっていうから、待っているっていうから、私より大切なものがあるっていうから、だから私は焼いた。私ごともやしつくした。勇者も、冒険も、私も、みんな終わって私は私でなくなった」


「なぁ、アンリウムよ、お前は本当に勇者を殺した自分が全く悪くないと思っているのか?」


「・・・」


 アンリウムは答えない。


「俺はお前と契約しない」


 アンリウムの声はもう聞こえない。


 ・・・


 アンリウムには頼らないと決めたが自体が好転したわけじゃない。

 ハチを助けなくてはならない。

 戦いではアルメリアに勝つのは絶望的だ。でもあんな力でハチを助けたらそれこそ宿命通りの運命が待っていそうな気がする。

 なんだかとてもやるせない。そんなときじゃないってわかってるのに、アンリウムのせいでとても、とてもやるせないよ。


 だからだろうか、俺はバカな行動をとった。


「ふっふっふっ」


 俺はできるだけ余裕がある風をよそおって拍手をする。声がちょっと震えてるのは・・・伝わってないといいな。


「さすがだな、アルメリア、実は今までの行動は全てお前を試してのことだったのだ。お前の力はわかった。協力しよう。だからその狼を話してはくれないか?」


「それはいったい何の冗談かしら?」


 アルメリアは一笑にふした。

 ですよね・・・


「まぁちょっとまってよ、今のはなしでお願いします。とりあえずハチを離してもらえませんか?」


 いきなり下手に出る俺。

 アルメリアは「まさか命乞いでも始める気なの?馬鹿な男ね?」とでも思ってるだろうか、ああそうですよ。そのまさかですよ。だってハチの攻撃が通じない相手だ。俺が戦って難になるっていうんだ。ハチを助けるのは戦うのと別の方法をとらなくてはならない。


「いきなり攻撃を仕掛けてきたのはあなたではなくて?」


 アルメリアは敵意と侮蔑と警戒心をもって俺を見つめている。

 油断は全然してない。不意を衝こうと思っても無駄だろう。そんな実力ないから安心するがいい。


「あなたが強そうだからですよ。不意打ちじゃなければ勝てないと思ったのです。」


「勝とうと・・・私を倒そうと思っていたのね。」


 アルメリアの瞳がすっと細くなる。刺激してしまったか?そんなの今更だ。こっちは不意打ちを慣行してるのだ。これ以上心象が悪くなることなどあるものか。

 それより、アルメリアは俺とまだ話をしてくれている。

 最初、アルメリアは俺を同じ悪魔として好意的に見ていた。そのときの感情がまだ少しでも残っていてくれるのなら。


「だってあなたはその人を殺して、人さらいまでしようとしてたんですよ警戒するのは当たり前でしょう。」


「だからといっていきなり襲い掛かっていい理由にはならないと思うけど?」


「そうですね、すみません。お詫びに一つ、俺の能力を御覧に入れましょう」


 俺は正直に嘘をつかず謝りつつ、彼女の興味を他につなげる糸口を探す。


「能力?」


 どうやら、くいついてくれたようだ。


「そう警戒しないでください。ただ人を生き返らせるだけです」


「生き返らせる?」


 アルメリアは魂を能力を上げることに使わせるつもりで俺に渡した。

 俺が蘇生術を使えることには気が付いてなかった。ならこれは糸口になる。

 これが駄目なら神様パワーのこともしゃべるつもりだ。でもできるなら蘇生術のほうでかたをつけたい。


「試しにそこの娘を生き返らせましょう」


 アルメリアはしばらく考えていたが


「いいわ、やってみなさい。できるものならね」


 そういうとハチを離した。

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