契約しましょう
空を旋回するバジリスク。まっすぐに直進して逃げ回る俺。
狙いを避けるためにジグザグに走れ?
そんなん余裕のあるひとのできることですよ。俺にはできんのですよ。ちょくちょく後ろを振り返って攻撃を仕掛けたら横に飛びのいて無様によけるのが関の山ですよ。
もちろんただ逃げているわけではない。
石化したハルとハチからはなれるように逃げている。
石化して攻撃されたら砕かれて1撃でしぬゲームもあるしな。念のためだ。
本当はなんとか武器の置いてある場所まで戻りたいけど、バジリスクもそれをわかってるらしく先回りするので近づけない。悔しいけれど結構頭いいみたいだ。
それならあえて道具から遠ざかることでバジリスクの意表を突きつつ、ハルとハチから遠ざけてるってわけさ。
転んでもただでは起きぬならぬ、転んでもただでは逃げない、みたいな?
バジリスクを倒すという根本的な解決にはなってないけどな。
むしろ自分から追いつめられてるけどな。
逃げ回るのも限界にきている。一発逆転のなにかがほしい。
バジリスクを倒す方法
①アンリウムの炎を使う。
②荷物から1番強そうなアイテム・・・今だと「光の矢」かな?を取り寄せて使う。
③ハチの石化を解いてハチに倒してもらう。
④折れた「???の棍棒」が覚醒してすごい武器になる。
①は怖いから嫌。ていうか獲得可能スキルのところにあるだけで今使えるわけじゃないので無理。
②むしろ荷物からは遠ざかるばかりです。
③そんなアイテム持ってません。
④そんな都合の良いことは起きません。ていうか折れた棍棒なんて即捨てました。持って逃げるなんて疲れるだけです。
消去法で②しかない。②しかないが荷物の場所はかなり遠くまで離れてしまっている。
今ならバジリスクも荷物のことは頭にないだろうし、協力者でもいれば荷物を俺のとこにもってもらい一発逆転ができるのだが、そう都合よくは・・・いや、あった。
魔法の絨毯だ。奴なら気づかれず俺のところまで荷物を運んでくることが可能だ。
さぁ、来い。魔法の絨毯よ。光の矢と不殺の弓を俺のところまで運んで来い!
・・・魔法の絨毯は全く反応しない。
駄目か。まぁそうだろうな。
魔法の絨毯は近くによって浮けと念じなければ浮かないし、実際に乗って飛べと念じなければ飛ばない。おとぎ話に出てくる魔法の絨毯よりかなり性能が悪い。ハルが乗ってるときはかなり遠くからでも呼びかけに答えていた気がしたんだけど、ハルもあれで人ではないからな。俺にはできない芸当だ。
俺も人じゃないけどね。神だけどね。
クスクス、と頭の名でで笑い声がする。
俺の一人乗り突込みにうけている、わけではない。
「炎は森を燃やすよ。みんなの嫌われ者。森は炎を閉じ込めた。だけど勇者はいいました。それなら一緒に旅をしよう。炎でみんなを助けよう。だけど勇者は死んじゃって、私の旅も終わっちゃった。」
頭の中で声がする。歌うようなな女の声だ。
アンリウムの炎。かつて勇者が使っていた炎の力。そして勇者を殺した力。
はぁ・・・やっぱりこうなるしかないのか?
「私の旅は終わっちゃった。冒険は終わっちゃった。あなたは勇者じゃない。石はあなたが好き。私も勇者が好き。私はあなたじゃ遊べない。でももしも、あなたが私と契約してくれるなら・・・」
「契約、しないよ。」
俺はきっぱりと断った。
石はあなたのことが好き・・・ね、思い出した。俺には宿命がある。その宿命をはたすまでは死なない。俺もハチも。だからまだ大丈夫。打開策はあるはずだ。
「残念」
全然残念そうではない声。
断られるのはわかっていたようだ。
以前に護符という形で力を貸りた時、「今は」力を貸すだけと言っていた。
本格的に契約するとなると、それだけじゃ済まなくなるってことだろう。
俺だってそうとわかっていて契約する気にはなれない。
「私怖くないよ?」
白々しく声が言う。そんなもの信用できるわけあるかい!
「証拠見せるよ?あの砂の上、あそここまでいけば助かるよ?」
何を・・・言ってるんだ?
アンリウムの意外な提案。だが、考えても見ればこいつは俺と契約したいんだ。ここで助けて恩を売ろうという腹なのかもしれない。もしくはもっと窮地に陥れて契約しないといけない状態にする気かもしれないが。
だけどこのまま逃げててもじり貧になるのは確実だ。もう既になりかけている。
「考えてる暇はないか」
何度目かになるバジリスクの攻撃をまじかに受け地べたを転がりまわった後。
俺はアンリウムが指示した方向に走り出す。
・・・
「嘘つかないよ。アンリウムはいい子だよ。」
クスクス、クスクスと声が笑う。
嘘くせぇ・・・
やっぱり判断を間違ったかもしれない。
「嘘ついたら絶対契約しないからな?」
「つかなくても契約しないでしょ?」
小ばかにしたように声が答える。
こいつ・・・やっぱりはめられたのか?
「あなたは私と契約するよ」
きっぱりとアンリウムは言った。
「必ず、ね」
ふわりと、俺の体が浮く。
「大丈夫ですか?」
耳元で声がする。
今度は頭の中の声じゃなかった。小ばかにするような声でもなかった。
そこには天使がいた。比喩じゃなくて、翼が生えている。俺を背中から抱きかかえて飛んでいる。
顔が近い。なんかいいにおいがする。背中に胸が当たってる。それにとても・・・可愛い。
ええい、落ち着け、落ち着くのだ俺。
この世界に来て初めて年頃の女を見た。しかもとても可愛い。なんか助けてくれている。舞い上がるのはわかる。でもここで冷静さを失ってはならない。
とりあえずこの娘、どっから湧いてでた?




