アルメリア
「プレセぺは隠れていて」
そういってヒラキンは行ってしまった。
空で激しい戦いが続いている。
プレセぺには戦う力がない。それでずっと何もしないできた。
お姉さまが傷ついて帰ってきたときも、ヒラキンがお姉さまにけいこと称して痛めつけられていた時も。
プレセぺの生まれた国はとある呪いにかけられていた。
その呪いによってお母様しか子供を産むことができない。
お母様から生まれた娘たちは子供を産むことができない。
お母様はかつて「王の血族」の「母」という存在を殺したのだという。そしてその呪いをわが身に受け永遠の命と孫を残せぬ定めを受けた。
娘たちは娘たちの中で母と子を決め独自の生活をするようになった。
子供たちにも寿命はなく一つの国が出来上がった。
人々はそれを8都市の一つ「母の国」と呼ぶようになった。「王の血族」の呪いを受けた国は全部で8つあったから。
エキドナお姉様はプレセぺのお姉さまであると同時に母親でもあった。
優しいお姉さまだった。お母様に捨てられ誰にも受け入れられなかったプレセぺを同じ天使の子供だからというだけでうけいれてくれたのだ。
優しいお姉さまは優しいだけではなく特別な存在でもあった。
子供が産めない呪いにかかっていたはずなのに子供を産んだのだ。
正確には子供を持って帰ってきた、のだけれど。
本当にそれはお姉さまの子なのかと疑われ、妬まれ、迫害され、逃げ出すことになった。お姉さまが嘘なんかつくはずないのに。
プレセぺはそんなお姉さまといっしょに逃げることしかできなかった。
「ねぇ、あなたは戦わないの?」
聞かれて振り返ると見たことがない女が立っていた。
とても露出度が高い服を着ている。寒くないのかな?と場違いに思う。
「あなたは?」
「私はアルメリア、ちょっと忘れ物を取りに来たんだけど・・・」
墓を見て、それから上空を見る。
「それより面白いものを見つけちゃった」
そういって笑う。
なんだかよくない笑い方をすると、プレセぺは思う。何か背中がぞわぞわする。
「それにしてもあなた、綺麗な目をしてるのね?」
覗き込むように見るアルメリア。
「本当に面白いわ、最果ての地って。あなた達みたいな逸材がまだごろごろしているんだもの。」
「あなたは・・・」
怪しく笑うアルメリア。
「止めれるんですか?」
「は?」
「この争いを止めるんでしょうか?」
「はぁ?なんでそうなんるの。」
「だってこの戦いが面白いって・・・」
えーと、何言ってんのこの子?という目で見られる。
それは昔からそうだった。どうも物事を極端に好意的に解釈してしまう癖がある。こんなんだからお母様に捨てられたのかもしれない。
プレセぺの考えを詳しく説明するとこうだ。
戦っているのを見て面白いといっている→殺し合いの戦いが面白いはずはない→試合の戦いなら面白いかもしれない、痛いのは嫌だと思うけど→アルメリアはこの戦いを殺し合いと見ていない→きっと止めれるからに違いない。
「あなたって不思議ちゃん・・・?ああ、あなた、そうなんだ。危ない。危うくひっかかるところだった。近づいたのは間違いだったかな。」
何かに気づいて遠ざかるアルメリア。
「あんたみたいな子をジェイドに合わせるのは危険な気がする。もらっていくのはあっちだけにするわ」
そうして再び天を見上げる。
おかしなことが起こっていた。ヒラキンから翼が生えている。
いや、それは不思議なことではない。ヒラキンはお姉さまの子供なのだ。天使の力をうけついでいたって不思議ではない。でも何かおかしい。違和感がある。初めて見たから?違う。初めて見たはずなのに初めて見た気がしないから。どこかで見たことがある。そのときヒラキンはとても怒っていた。泣いていた。血のにおいがしていた。お姉さまは笑っていた。私のことをいとおしいといっていた。とられなくてよかったといっていた。私は何かを食べていた。私はずっとずっと食べさせられていた。私はそんなことしたくなたった。私は助かりたかった。私は自分によいことが起こりますように思った。私はお母様に捨てられた。私は私は私は私は・・・
「それでもいい。プレセぺを返せ!!!!」
あ・・・
プレセぺは気を失った。




