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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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盗賊

 盗賊たちの作戦は紆余曲折あったものの、順調に進んでいた。


 情報屋からロレンスが街をでることを聞きつけ、その日時と護衛の人数についての情報を買い取った。

 ロレンスは奴隷売買で富を得て町に住めるようになった成り上がりだ。

 だがそれでも町においては中流かそれよりちょっと上というところだった。

 その程度と考えることもできたたが、町で暮らすということが町の外でしか暮らすことのできない者たちにとっては雲の上の存在かということでもあった。

 町で暮らせる者とそうでない者との間には生活、そして資金に決定的な差があった。

 ロレンスにどんな事情があったかは知らないが旅でまとまった金を持ってでかけるとなれば是が非でも仕留めなくてはならない。


 実際もっと早く仕掛けていれば3ヶ月分の物質が手に入ったのだ。


 それにケチがはいったのは護衛が天界落ちの魔法使いだったからだ。

 普通の魔法使いなら問題なかった。生まれつき強い魔力を有する人間は天界に連れて行かれるため、下界に残るのは必然的に魔力の乏しい人間達だけである。魔道具を使ってようやく魔法を使うことができるものの、その力は微妙そのもの。

 例えば魔法で炎の矢をはなってもその有効範囲からいうと実物の火矢をつかったほうがはるかに遠くまで飛ぶし火力も高い。補助的に使えば有効活用できなくもないが魔法使いとしてそれだけを売りにするには実力的に無理がある。

 それに比べて天界堕ちの魔法使いとは文字通り天界から下界に落とされた人間のことをさす。その理由は大きく分けて2通り、成人の際におこなわれる魔力査定の基準に満たなかったか、なんらかの罪を犯して下界に落とされたかだ。例え前者であってもその実力はまさに魔法使いと言ってさしつかえない強力なものだ。天界の査定により見込みなしとされたとはいってもそれまで天界で魔法を学んできた者たちであり、基本的な魔力要領からして下界の人間とは桁が違う。なにしろ一度は天界に連れて行かれたほどなのだから。

 さらに罪を犯して天界から追われた魔法使いにいたってはその力は想像を絶する。一人抱え込めれば他国を滅ぼすことも容易であり、そういった魔法使いをなんとかして時国に引き入れようと様々な裏工作が行われてるという。

 ロレンスが天界落ちの魔法使いを雇ったという情報をえて盗賊たちは腰が引けた。一度この計画は白紙になった。


 別の動きがでたのはつい最近だ。

 盗賊の頭目がかわった。いや、もっと大きな組織に吸収されたといったほうがいいか。


 それで盗賊達の構成が変わったわけではないが、上の組織から一人の女が派遣されてきた。

 自分は悪魔であると女は言っていた。頭目は完全に女の言いなりになってしまった。


 それから意味不明な仕事が増えるようになった。

 危険な最果ての地を縄張りにするようになったのもその一つだ。


 だが、不思議と危険はなく、収入も増えていった。

 最初は女を不審に思った盗賊達も今は誰も疑おうとしない。


 ロレンスの馬車を今更襲うことになったときも、反対はなかった。


 天界落ちの魔法使いだって、もともと都市伝説のようなものなのだ。実際に見た者はいない。

 それもそのはず、万が一天界落ちの魔法使いがいたとしても、どこかの国のお抱えになるのはずだ。

 おとぎ話では煩わしい権力抗争を嫌って普通に生活する者もいるというが、所詮はおとぎ話。

 手品程度しか使えない下界の魔法使いが天界落ちの魔法使いを名乗って箔をつけているのが関の山だ。

 実際珍しい話ではない。その可能性の方が高い。

 だいたい、昨今では強い魔法使いの素質を持つ者じたいいない。天界に連れていかれる話すら風化しつつある。


 とはいえ、長年の常識を疑うのも勇気がいる。まず護衛の魔法使いを隙をついて倒せるかが今回の作戦のきもだった。だが、あっさりうまくいった。やはりただのペテン師だったみたいだ。


 次に馬車の従者を倒した。ロレンスが馬車の魔道具に適正があることは想定外のことだったが、追い詰めるのも時間の問題だった。実際ロレンスも肩をやられ馬車は完全に制御を失った。後はじっくり馬が疲れるのをまてばいい。

 大金が手に入るのは目の前のはずだった。

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