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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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砂漠3日目

 砂漠を旅して3日目。

 モンスターに襲われたのは1日に10回くらい。多いように見えてそうでもない。

 何せ起きてる間はずっと移動し続けで気が滅入ってくる。モンスターとの遭遇はよいアクセントになっていた。


「見て見て!主様!ひっさつ、じごくぐるまぁ! 」


 ハチは無邪気な笑顔でモンスターを撲殺している。

 どこらへんが地獄車なのか謎だが、どうやら知ってる言葉を羅列しているだけのようだ。

 お気に入りは地獄車で、蹴っても地獄車、殴っても地獄車、謎のエネルギー波を放っても全部地獄車と連呼している。


 モンスターとはいえ、こんな躊躇なく命を奪うなんて……いったい誰が教えたのだろう?

 はいはい、俺ですよっと。


 犬形態なら違和感もなかったけれど、子供形態でやられると、本当にこれでよかったのかと不安になってくる。

 命を奪うということについて、大人である俺が責任を持って肩代わりすべきだったんじゃないだろうか?


 でも、いまさらだし。森にいるときから野鼠や野兎を狩って食べてたし。

 現実的にいってステイタスの上だけで考えても、俺の攻撃とハチの攻撃では5倍以上差がある。

 余裕こいて俺がしゃしゃりでて、みんなが危険な目にあっては目も当てられない。

 このままいくしかない。


 ただ、ハチの行動はどんどんエスカレートしていた。


 今回のモンスターは巨大なサソリのモンスターだった。ハチの地獄車(蹴り)によって尻尾の部分は引きちぎられ、遥か遠くにふっとばされてしまった。毒の心配はもうない。


 甲殻類は犬に悪いが、火を通せば大丈夫なはずなのでハチの腹も満たされる。

 人に変わってるときは体の構成そのものが変わってるため、あんまり気にしなくていいみたいだが。


 味はエビに近くタコよりも美味しい。子供の口にも合う。前回食べた時はハルも美味しそうに食べていた……様な気がする。今現在、一方的にモンスターをぼこったハチに若干おびえてる気がしなくもないけど、きっと気のせいに違いない。

 郷に入れば郷に従えという。きっとこれがこの世界の正しい在り方なのだ。


「主様ぁ? かおとれたよ? 」


 ハチがモザイクのかかるものを手にとってこっちによってきた。

 ハチが戦利品をもって褒めてもらいに来るのはいつものことだが……それ、あかんやつだ。


 人は自分が非日常の中にいるとそれが非日常とわから順応してしまうものらしい。

 大切なのは一線を越えぬよう自覚すること。

 その行動は俺の中の一線を越えた。

「死体で、遊ぶんじゃ、ない!」

 どすの利いた声で叱りつける。

 何で叱られたかわからない表情のハチ。


 カルラを見れば、モザイクのかかるものを手に取って「立派なもんじゃねェか」と呑気に言ってる。


 ……あれ?

 今回も間違えてしまったのだろうか?

 子供が虫の顔を捥いだからと言って、人殺しに育つわけじゃない。

 エビや魚を食べるとき顔なんかいくらでもとって食べてるじゃないか。

 そんなに目くじら立てることじゃないのかもしれない。


 でも、俺的にはやっぱりアウトだ。


 ……やっぱり俺も戦った方がいいのかも。

 最初のころはハチもみんなを守るために戦ってただけだったのだ。でもそれがどんどんエスカレートしていった。

 モンスターとハチの力の差がそうさせた。

 強力だと聞いていた最果ての地のモンスター達でさえ、今のハチの前では全くの無力だった。

 例え俺とモンスターとの戦いが悪い結果をうんだとしても、それによって遊び半分でやっていいことじゃないってわかってくれたなら、それは必要なことなのかもしれない。


 太陽の位置から方角を定め、今日も黙々と歩く。


 よし、決めた! 次は俺が戦おう。戦って戦いの厳しさ辛さ哀愁をおしえてやろう。

 命を奪うことの意味を、おえっぷ!


 駄目だ。酔った。吐きそう。


 ……


「主様。顔色がお悪いです」


 言ったのはハルだった。

 ハチが俺のことを主様と呼ぶから真似して主様と呼ぶようになった。

 ハチが話ができるようになる前の呼び方は・・・そういえばあんまり話しかけられなかったな。ハチを通して俺たちとの距離が近づいたということだろう。よい傾向だ。


「主様ぁ~、かおいろがわるいって、なに? 」


 当のハチは見当はずれなことを聞いてくる。

 俺は今ハチの背に乗って移動しているのだが、駄目だ。説明する気も起きない……吐きそう。


「本当だ。真っ青じゃねぇか。大丈夫か? 」


 カルラも珍しく心配している。

 ……

 でもな、俺がこんなふうに酔ってるのは……お前のせいなんだよ! カルラ!

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