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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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かませ犬疑惑

 石は…石はないのか…


 俺は砂浜で石を探してる。

 小石でもなんでもいいんだけどなぁ。


 理由は身代わりの石を作るためだ。

 石さえあえば、5回に1回くらいは神様パワーで作ることが可能だ。大きさはあまり関係ない。


 神様パワー。それは、そこらへんにころがってる物でも神様が触ることによって神様が触ったありがたいものということになり特殊な力を授かる現象のことをいう。

 実は理由はよくわからないのだが、変わるもんは仕方ない。


 洞穴から廃村に引っ越すさい、廃村で作ればいいと思って作り置きしてあった身代わりの石のほとんどを洞穴においてきてしまった。

 その後いろいろあって手持ちはゼロ。


 今俺のいるところは強力なモンスターがうようよいるといわれる「最果ての地」のど真ん中であり、不意打ちで死んでしまうことも十分考えられる。

 仲間になったばかりのハルなんてレベル1だ。ついでに俺はレベル3……

 ……レベル3?

 そういえば俺のレベルは3のままだった。あっという間にハルにすら抜かれそうなレベルだ。装備だけどんどん強力になってくから忘れてたけど、俺単体だとめちゃくちゃ弱いじゃないか。

 やはり、万が一を考えると身代わりの石はないと困る。


 けれども、この浜辺は石どころか不純物一つない。

 歩くとキュキュっとかいう音も聞こえる。

 この音はゴミのない砂浜に起きる特殊な現象だとかなんとかテレビで見たような記憶がある。

 人間もめったにこれない場所らしいのでゴミなんてあるわけないけど。


「サトミ、何やってんだ? 」


 カルラが俺の頭上で首をかしげている。


「俺のことはいいから、ハル達のことを見といてくれ。目を離して迷子になったら困る」


 神様パワーのことはカルラには話してない。秘密にしてたわけじゃないけどなんとなく話さずにここまできた。考えてみればこの俺の能力は人にうらやましがられる能力だ。あまり他人には話さないほうがいいかもしれない。

 寝てる真に手を切り落とされて逃げ出したりされたら大変だ。

 カルラはそんなことしないとは思うが、こいつ口軽そうだし。

 どうせだからこのままカルラには内緒にしておこう。


「大丈夫大丈夫遠くに行ったりしてねぇよ。あいつらは元気に海で泳いでら」


「そうか、それなら安心……て、おい! 」


 俺はあわてて海を見る。

 ハチが犬かきしてる。犬って泳ぐときは本当に犬かきするんだな……じゃなくて、ハル? ハルは?


 ザバン!


 水しぶきが上がり魚が跳ねる、いや、魚じゃない、ハルだ。陸上とは違い下半身は魚に代わってる。気持ちよさそうに海を泳いでる。


「何あわててんだよ。ハルは人魚なんだから海の中の方が安全だろ? 」


 そういえばそうだった。心配する必要はなかったか……いや、ここは最果ての地だ。

 強力なモンスターがたくさんいる。

 海でモンスターに襲われたらやばい。陸上ならハチがなんとかしてくれるはずだが、海上ではハチもうまく動けないはずだ。

 現にハチは犬かきしてるものの、一向に前に進んでいるようには見えない。まるで溺れてるかのように浮いたり沈んだりしてる。

 あれ?本当に溺れてるんじゃない……よな?

 遠めなのでよくわからんが。


 目を凝らして凝らしてハチを見ていると、海の中に沈んだきりしばらくでてこなくなった。

 もしかしてやばい?


 いそいで助けに向かうが。海に入って気が付く。

 俺って泳げたっけ?

 海の中に入れば体が勝手に思い出す、はずもなく。立ち往生する。


「ハル!! ハチを助けてやってくれ!!! 」


 幼女に向かって助けを求める俺。

 情けないとか言うんじゃないよ?

 仕方ないじゃないか。人魚なんだし。いちばん泳ぐのうまいんだし!


 ハルもハチの異変に気が付いたのか急いで救助に向かう、と

 巨大な水柱が上がり巨大なタコの魔物が現れる。その足の1本にはハチがつかまっている。

 レベル47でRPGのボスキャラみたいなステイタスをほこるハチも海上では勝手が違うのか、苦しそうにもがいている。


「おっと、危なねぇな」


 カルラが急いでハルを保護する。どうやらカルラもハチを助けに向かっていてくれたらしい。

 まずは一番弱いハルを救出して安全な場所まで退避する。


 俺も荷物の置いてある場所に向かって走る。

 確か弓矢をもってきていたはずだ。「不殺の弓」と「光の矢」だっけか。

 光の矢の効果のほどは不明だが、不殺の弓の名前から察するところ、致命傷を負わすことはできないだろう。だが、援護くらいにはなるはずだ。

 隙は作るからあとは自分でなんとしてくれよ、と思いつつ弓矢を構える。


 だけどちょっと不安だ。


 なにせ、ハチって今までまともにモンスターと戦って勝ったことがない。

 身分証明書上のステイタスは強いけれど、「本当に強いのかな? 」という疑問が頭をかすめる。

 いくら海上で、最果ての地の強力なモンスターが相手だからって、こんなところで苦戦するようだとこれからの旅が果てしなく不安なのだけれども。


 俺のディスリが通じたのか自力でタコの足を引きちぎるハチ。そのまま一気に本体に攻撃を仕掛け、一撃で仕留める。

 モンスターを仕留めたハチは誇らしげに俺のもとに帰ってくる。

 犬かきで。


「偉いぞ、ハチ! よくやった! 」

 とりあえず褒めてやり、撫でまわす俺。

 ハッハッハッと息を吐きつつ嬉しそうなハチ。元は邪悪な存在らしいがそんな様子は微塵もない。かわいい奴だ。


 だが、俺は内心では思う。「お前のかませ犬疑惑はまだ払拭されてはいないんだからな? 」と。

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