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忘れられた神様  作者: ニスコー
第一章
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逃亡

「使者が倒されたことは天界もすぐに気づくはずです」


 すぐに逃げるべきだと主張するユルルングル。

 逃げ切れるか?

 との問いに、天界は蘇生術を使った際の魔力残滓でだいたいのめどをつけて探索してきているため可能だと答えるユルルングル。


「最果ての地にいけばサトミ様より強い魔物がたくさんいます。探索も困難になりましょう。」


「でもあいつ、一目見て俺が生き返らせたってわかったみたいだけど? 」


「目星をつけられなければ大丈夫です。絞り込む時点で紛れてしまえばそうそう見つけだすことはできないはずです」


 そういうものなのか?

 なんとなく納得しかける。待ったをかけたのはカルラだった。


「ちょっと待て。サトミをこの森から出したいのはお前らの方じゃねぇのか? 」


「どういうことでしょう? 」


「サトミが天界から狙われれば森が傷つく。お前らが一番恐れているのはそれじゃねぇのかってことだよ。その証拠にサトミが襲われた時お前は庇おうとしなかったじゃねぇか」


「あなたに言われたくはないですね」


 にらみ合うユルルングルとカルラ。

 俺のために争うのは心苦しいのでやめてほしい。


「そうであっても別にかまわないよ。俺はこの森をでていく」


「サトミ? 」


 カルラが気にかけてくれるのは意外だった。

 ユルルングル達の平和な森を乱されたくないという気持ちのほうが理解できる。

 心底嫌がられてまで森にい続ける理由は……ないこともないが、ほとぼりが冷めるまででていくぐらいはいいだろう。


 ほっとしたような表情をするユルルングル。

 やはりでていってほしかったのか……


 元の世界に帰還するカギになるかもしれない仏壇や、俺のことを待ってる予言の岩を洞穴に残してきているから、2度と帰らないわけじゃないんだ。残念だったな。


「さすがはサトミ様です。この森で生まれし神様です。真にこの森のことを考えておられる。正直安堵しました。やはり、以前森に巣食っていたあの邪悪な悪魔とは違う」


 森に巣食っていた悪魔? ね。

 そういえばと、大人しく出ていくというのだから条件をだしてみることにする。


「そのかわり一つ条件がある」


「条件ですか? 」


「ハチの本当の……いや、かつてこの森を守り滅ぼされたっていう最初の神様の名前を教えてくれないか? 」


「それは……」


 狼狽するユルルングル。まぁ、だいたいの理由は察しが付くが。


「森に巣食っていた邪悪な悪魔のことだ」


「そこまでご存知でしたか。わかりました」


 意を決するユルルングル。

 ただし、ハチには告げぬようにと釘を刺される。


 そこからの行動は早かった。もともと引っ越したばかりで必要なアイテムのめどはついてたから簡単に旅の準備をする。

 ハチと生き返った子供とカルラとでユルルングルの腹の中に入り、妖水の森を抜けることになる。

 ハチは当然として、生き返った子供はここに残ってれば天界から狙われることになるからだ。


 俺が世界のルールを捻じ曲げてまで生き返らせてしまった子供は、天界の粛清の対象となる。

 それなら最初に天界の使者が来たときに狙われなかったのは謎なのだが、どうも「依代の銅貨」が世界とのずれを打ち消してくれているからだという。

 手放したら最後どこにいても一瞬で天界に見つかるので気を付けるようにとユルルングルに言われた。

 期せずして依代の銅貨の使用法がわかったが全然うれしくない。


 グランガチを信仰していたのだからグランガチに預かってはもらえないかと思ったのだが、生き返らせた時点で彼女の神はグランガチではなく俺になったとも言われた。

 どういう理屈かはわからないが、強制的に最初の信仰者を得るはめになった。

 彼女の神は俺だから俺が守ってかないといけないらしい。


 カルラは……なんでついてくる来てるんだろうね。

 さっき気にかけてくれたのは地味にうれしかったから何も言わないけれども。


「嬢ちゃんに別れを言わなくてもよかったのか? 」


 それに結構するどいことも言う。

 確かにこれから旅立つ未来への啓示をうけれないのはきついが……


「そんな時間ないんだろ?それに……あいつとの別れはすんでいると思うんだ」


 未来の見える彼女のことだ。今回のことはわかっていたはずだ。でも俺には何も告げなかった。うまくやりすごせることもわかっていたのだろう。

 そして彼女はこういった「いつまでも、サトミ様の帰りを待っていますよ。」と、まるでしばらく会えないことがわかっているかのように。そして、再び会えるのがわかっているかのように。


 きっとまた会うことはできる。けど今彼女に会えば、そのまた会ういつかは今日になる。

 ここで会わなければ、彼女と再会できるいつかは、ほとぼりが冷めて俺が洞穴に帰ってこれるいつかになる。

 そのときまでは生きていられるってことだ。


 だから今は合わないで旅立つことにする。

 俺が戻ってくるまで、仏壇ちゃんと守っとけよと思いつつ。

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