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忘れられた神様  作者: ニスコー
第一章
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対決

 逃げた俺たちに使者は攻撃を仕掛け、その攻撃で俺とハチは死んだ。

 だから2つの身代わりの石が砕け散ったのだ。


「嘘だろ……」


 意味もなく吐露してみるが、もちろん嘘ではない。

 天界の使者はゆっくり馬車を走らせ、俺たちの前にやってくる。

 ハチとは別々に飛ばされてしまった。無事だといいのだが。


 こうなったら、いちかばちかアンリウムの護符に頼るしかない。

 本当にそれでなんとかなるか、この力の差を見せつけられた後でははなはだ疑問ではあるが……


 予言の岩は何も言ってないから大丈夫なはずだ。

 予言の岩はハチが人を襲い俺が倒す未来が見えると言っていた。少なくとも、その未来が来るまで俺は死なないはずだ。


「まったく、避けたかったはずの未来が、心のよりどころになるなんてな! アンリウムの護符よ、俺に力をかせ! 」


 護符を天に掲げる。

 護符から炎があふれ、天界の使者に向かって伸びていく。炎の渦が使者を取り巻くが、使者の歩みは止まらない。


 アンリウムの護符から吹出す炎は激しさを増していくが、そもそも使者は炎に対してなんらダメージを受けている様子がない。

 炎そのものが無効な存在なのかもしれない。


「くそ、無理なのか? 」


 護符から吹出す熱気に俺のほうが先に参ってしましそうだ。


「無理かもね」


 頭の中で声がする。以前ユルルングルに対した時と同じ女の声だ。

 ただあのときほど声のトーンは暗くはないが。


「なんだよ、この前は敵もろとも俺も燃やし尽くすみたいなこといってたくせに全然大したことないじゃないか! 」


 苛立ちを声にぶつける。


「ずいぶんな言い方」


 女の声は特に気にした風はない。どころか、少し楽しそうですらある。

 どうしたんだ? この間とはずいぶんと調子が違うじゃないか。


「私のことを正しく使おうとしている。制御しようとしている。だから制御されている」


「なんだそれは。俺のせいだっていうのか? 」


「違う。制御されたがっているのは私だから」


「なんだよ。全部燃やしたかったんじゃないのか? 」


「燃やしたかったけどお前じゃなかった、お前のことはどうでもいい。ただ、思い出したんだ」


 急に炎の感じが変わる。炎からあふれていた強烈な熱がなくなる。

 暖かい炎に変わる。

 だが、それと対照的に展開の使者の歩調が止まる。足を止め、苦しそうに、うめく。


「やっぱり、こっちだと効くんだ? 」


 クスクスと、女の笑い声が聞こえる。

 こいつ、遊んでるのか?

 俺だけ力の差をみせつけられた天界の使者に対してもこの余裕。恐ろしい護符だ。


「檻の中に閉じ込められて、勇者に会うまで私はただの炎だった。外の世界て、勇者の言葉と知識のみが私の世界だった。私は勇者なしでは生きていけなかった」


 歌うように声は言う。どこかからかっているようだ。その台詞を言った時のあいつは、とても真剣だったのに。それを揶揄しているかのようだ。


「なんだか、どこかで聞いた台詞じゃないか? 」


「あの子に免じて制御されてあげていたんだよ。でももう終わり。私の冒険はとっくの昔に終わっていたから。だから、手伝いだけしてあげることにしたよ。今は、ね」


 言い終えると護符は俺の手からすり抜けるように燃え尽きる。

 暖かな炎は包み込むように天界の使者を消し去った。

 あっけない……実にあっけなくすべては終わっていた。


「なんだか、よくわからないが、助かったのか? 」


 釈然としないものを感じつつ、護符の消えた右手を見る。

 護符はなくなったようだ。俺を燃やし尽くすことはなかったが、切り札もなくなってしまった。

 でも、本当に?


「お~い! 無事か? 」


 カルラがハチを担いでこちらに飛んでくる。

 よかった。ハチは無事そうだ。


 これから先のことを考える。天界からの使者はまたくるだろうか?

 こないと考えるのは希望的観測すぎるように思える。アンリウムの護符はもうない。次来られたら対応できない。

 ユルルングルの申し出を受けて逃げるか? それとも、森のどこかに隠れるか?

 隠れるといってもさっきの敵のチートっぷりを見ると隠れきる自信がない。

 でもそれは逃げるのだって同じだ。

 あんなの相手にどう逃げ切れというのだ?

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