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忘れられた神様  作者: ニスコー
第一章
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天界からの使者

「サトミ、ここから早く逃げたほうがいいかもしれねぇぜ」


 いつになく真剣な表情でカルラが言う。


「今サトミがやったのは反魂の術だろ? 」


 しかも白骨化した死体と、足りない魂から無理やり成功させた。

 これはありえないことらしい。


「この世界のルールから逸脱した行為ってやつだ。こういうことがあると、天界から使者が来る。運が良ければ天界に連れ去られるだけで済むが、下手したら消されるぜ」


 今のサトミは神様らしい。どこ由来の神様なのかはわからないが、かつて人を庇護する神々は他の神々を滅ぼして回った。サトミもその範疇に入る可能性がある。


「忘れられた神様」というのも気になる。忘れられた神様ということはかつてこの世界に存在していたからこそ、忘れられたということだ。存在していなかったら忘れられたもくそもない。

 そして神様が忘れられるのは滅ぼされたからだ。


 と、いうことは嫌な……感じがする。

 俺はさっきまで、この森の滅ぼされた神の名前を調べようとしていた。

 俺はこの森で目を覚ました。

 忘れられた、滅ぼされた神。

 答えは初めからここにあったのではないか?


「とにかく、予言の岩に聞いてこないと」


 ハチをよんですぐ洞穴に戻ろうとする。

 けれどハチは殺気立って別の方向に唸っている。


「そんな時間はありません」


 ハチが唸る先には巨大は蛇がいた。

 ユルルングル……もうハチの前には姿を現さないと言ったはずだ。なのに、どうして……


「我が主の命令でまいりました。速く私の腹の中へ。川を下って森の外まで連れていきましょう」


 大口をあける。中に入れというのか?

 いきなりそんなこと言われたって、素直に言うことは聞けない。

 俺はまだユルルングルについて多くを知らない。はいそうですかと口の中に入るほど、信用していない。


「速く!説明している時間はありません。一刻の猶予もないのです。」


 そんなせかされたって……

 ハチは相変わらずユルルングルを敵視している。素直に従うとは思えない。

 生き返らせた子供は未だ眠ったまま目覚めない。


「ちょっと遅かったみてぇだな」


 空を見上げてカルラが唸る。


「お迎えが来たみたいだぜ」


 空から馬車が舞い降りる。

 もちろんただの馬車ではない。馬の代わりに2足歩行の爬虫類が荷台をひき、その手綱を握るは全身フルアーマーの騎士。

 爬虫類の背に翼はなく。何もない空間をかけて空を飛ぶ。


「天界の使い。久しぶりに見たぜ」


 ぞわぞわと、俺の中の感覚が目覚める。この感覚は「アンリウムの護符」だ。

 まだ何もない、何も起こっていない状態であるにもかかわらず、あいつは危険な存在であると護符は告げている。


「神ノ理ヲ覆シタモノハ誰カ? 」


 無機質な声が鎧の下から響く。感情のない。まるで機械のような声だ。鎧の下は人間じゃないのかもしれない。

 誰も何も答えないが、答えは初めからわかっていたのだろう。使者は真っ先に俺に狙いを定めた。


「オ前カ? 」


 いった瞬間、石がはじけた。

 身代わりの石だ。

 天界の使者は馬車用の鞭を打った状態でこちらを見ている。

 言った瞬間あの鞭で攻撃された。そしてその攻撃は俺をしとめるのに十分なものだったらしい。


 おいおいおい……


 俺は今までまともに攻撃をうけたことはない。ハチの仲間と戦った時だって、ユルルングルのときだって、天使のわっかか、もしくはアンリウムの護符が守ってくれたからだ。

 このせいでHPが大幅に減る瀕死の状態を味わったこともない。

 今回それを始めて味わって、身体にとてつもない疲労感を感じる。


 やばいやばいやばい


 俺っていくつ身代わりの石持ってたっけ?

 作るのはいっぱい作ったがいつもたくさん携帯しているわけではない。不慮の事故用に3つくらいは携帯してた気がするけど、あんまり覚えてない。

 記憶が確かなら、あと3回攻撃を受けたら死ぬ。

 予備の石を回収すべきか?でも身代わりの石はわりとすぐ手に入れられるしかさばるから在庫は全部洞穴の中だ。

 手持ちの石がある間になんとかするしかない。


「? 」


 攻撃を受けても俺が死んでいないことに首をかしげる使者。

 攻撃そのものは素早いが、基本的な動作は隙だらけだ。

 だからといって、すきを突く真似なんてできそうにないが。


 アンリウムの護符でなんとかできるのか?護符はいつでも発動できる状態にあるが、ユルルングルのときにはこのときにもバリアーが展開していたはずだ。なのに今回はそれがない。

 いや、ないというより、たぶんバリアーを貫通して攻撃してきた。

 もしかしたら護符でも倒せないかもしれない……絶望的な状況だけが理解できた。


 ぐいっと、ふいに背を引っ張られた。


 気が付けば周りの景色がすごい勢いで流れて行ってる。

 ハチが俺をくわえて逃走を開始したのだ。

 グランガチのときにもユルルングルのときにも戦うことをやめなかったハチが……


 けれど次の瞬間、後方より衝撃。残り2つの身代わりの石が両方とも砕け散った。

 ハチともども俺は吹き飛ばされる。

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