人化
「カルラ様必殺! 地獄火炎車!!! 」
カルラが円状の炎を吹出す。
「さぁ、今だぜ! ハチ公! 」
ハチは華麗に火の輪くぐりを披露する。
「すげぇぜハチ! さすがはサトミの眷属だ!! 」
「ワウワウワウ~♪ 」
上機嫌でハチをなでまわすカルラ。ハチもまんざらではなさそうだ。
えっと何……仲良くなっちゃってんの?
あの後一向に酔いつぶれあいカルラに退屈を持て余し始めたハチの相手をさせてみたところすっかり打ち解けてしまったみたいだ。
「褒美に酒をのましてやろう」
更に酒を注いでハチに渡そうとするカルラ。
「やめろ! 」
慌てて止める俺。犬に変なものやると皮膚病になってはげたりするんだからな!
それにしてもカルラは徳利を一つしか持ってないはずだが、その酒は一向に尽きる様子はない。まるで中から湧いているようだ。
「その徳利に一体いくら入ってるんだ? もうとっくになくなってもいいはずだろ? 」
「言ってなかったか。これは湧酒徳利といってその名の通り酒が湧き出てくる宝物だぜ」
うん、途中からそんな気がしていた。
ここではもう手に入らない貴重な酒を分けてくれるというから、そこまでしてくれるんならとつきあっていたのに。なんということだ。
がっくり、と肩を落とす。
「変な奴だな。ちょっとぐがい飲ませても死にはしねぇよ」
さっき止めたはずなのに、気にすることなくハチに酒をやろうとするカルラ。
ハチ! お前も尻尾振って喜んでんじゃないよ!
「駄目ッたら駄目だ」
ハチを押さえつけて酒の入った皿を突き返す。
「わかったよ。なら、ハチを人に化けさせたらどうだ? 人に化ければ問題ないだろ?」
突き返されたハチ用の……犬用の皿の酒を飲みつつぼやくカルラ。
そんな化けさせればいいなんて簡単に言うけどそんな能力は俺にはない。
俺にそれができると思ってるということは俺のことを高く評価してるらしいし、あえて否定したりはしないけど。
「なんで封印してるんだ? 」
て……ん? 封印?
何言われたかわからなくて一瞬固まる。
「俺の目はごまかせないぜ。お前がハチの能力を封印してるんだろ? 」
俺が封印してる? ハチの変身の能力を?
何言ってんだこいつ、と否定しかけて思い直す。そういえばハチの身分証明書のスキルの欄は封印中と記載されていた。
スキルが封印されているのは事実だ。
だがそれはおれがやったわけではない。そのはずだ。だけどちょっと気になる。そういえば似たようなことを前に誰かに言われたような……
『ハチというのはその眷属の名前ですか? 』
『そうだけど』
『なるほど、聞いたことはありませんが確かに力を感じます。それで、その者の性分を押さえているのですね』
ユルルングルとの会話。あのときか……
ユルルングルはハチという名前に力があり、それで性分? 能力? を封じていると言っていた。
ハチなんて名前に特別な意味ないのに何を言ってるのかと思ったのだが、この世界では特別な意味をもつ名前だったりするのだろうか。
「どうしたんだ? 考え込んで? 」
「カルラ、ひとつ教えてほしんだが、ハチってすごい名前だったりするのか? 」
「俺に聞いてもわからねぇよ。サトミの方がよく知ってんじゃねぇのか? 実際その名前でハチの力を封じたんだろ? 」
……ハチという名前が特別な名前なのかはわからないが、名前で能力を封じることができるのは事実らしい。
この世界で名前は特別な意味を持つみたいだ。
八チ、犬につける一般的な名前。今はこった名前を付けるからそうでもないか。
いちばん有名なハチは名犬ハチ公。名前で力を与えることができるなら、頭のいい犬ににりこそすれ力を封印されることはないと思うが?
「カルラ、お前の名前は誰に名付けてもらったんだ? 」
「そういうのは簡単に教えるもんじゃねぇな。」
珍しく渋るハチ、やはりこの世界で名前とは大切なものらしい。
「まぁ、サトミと俺の仲だ。特別に教えてやろう。」
と思ったのだが、カルラは話したかったらしい。ペラペラと自分の名前の由来を話してくれた。
カルラと名付けられる前のカルラはただのモンスターだった。
そのときの記憶は自分でもよく覚えていないらしい。
時には人を襲い、時にはモンスターどおしで殺し合い、ただ生きるために生きていた。
そんなあるとき「勇者」なる物にとらえられる。勇者は空を飛び偵察ができるモンスターがほしかったらしい。
「烏天狗か。じゃあカルラでいいかな」
勇者はそういってカルラに名前を与えた。
勇者の仲間になったカルラは勇者とともに魔王を倒す旅に参加した。そこから始まる冒険活劇。すごく長かった。終わるころには夜が明けていた。
ようやく酔いつぶれたカルラととっくに眠りに落ちてるハチを横に得られら情報を整理しようとして、俺は力尽き寝てしまった。




