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忘れられた神様  作者: ニスコー
第一章
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酒盛り

「引っ越すんだってな! 祝ってやりにきたぜ? 」


 カルラはそういうと酒瓶を見せる。

 日本の時代劇に出てきそうな焼き物でできた徳利というやつだ。

 そんなもの、どうやって手に入れたんだ?


「おっ、めざといな。こいつは俺がここに来る時持ってきた秘蔵の品なんだ」


 今日は特別だからな。一緒に飲もうぜ? とカルラ。

 洞穴まで俺に決闘を申込みに来たら予言の岩に引っ越したと言われ、慌てて用意したらしい。


 いやいや、突っ込みどころがいくつかあるぞ。

 なぜ決闘を申込みにきた来た。そしてなぜ引っ越したとわかったら決闘のことを忘れて祝いの品を用意している。ていうか予言の岩よ。簡単に俺の居場所を教えるんじゃない。


「サトミはグランガチと戦って勝ったわけだろ。だったら縄張りをはっきりさせとくためにもどちらが強いか決めとかねぇと駄目だろ?」


 駄目だろ? じゃないよ。

 グランガチとはたたかってないし、縄張りとかどうでもいい。

 だいたいカルラはグランガチと戦ったことはないみたいなこといってたはずなのに、なんでそんな話になるのか。


「グランガチとは戦ったことねぇけど、グランガチに勝ったサトミに勝てれば俺の方が強いって証明されるじゃねーか」


 だから、俺はグランガチとは戦ってないんだが……


「まぁ、決闘はいずれするとして、引っ越したんなら祝うのが先だ。飲もうぜ? 」


 カルラは俺の話など聞く耳を持たず酒を進めてくる。ついでに俺の今晩の食事を勝手につまみ始める。

 何ナチュラルに俺の飯に手出してんだよ。


 あきれつつも、とりあえず決闘しなくてよくなったのはよかった。最初からろくな理由でからんできたわけではないと思っていたが本当にろくな理由じゃなかったわけだ。


 進められた晩酌を眺めてため息をつく。


 そういえば、グランガチのときと違ってハチは大人しい。

 傍らでお座りしてお墓の前のお供え物をじっと見ている。そんな見ても当たりませんよ。

 以前好戦的になったのは相手がグランガチだったからみたいだ。


「さぁさぁ、ぐいっと飲めよ」


 言われるままに酒を飲む。うん、おいしくないね。

 元いた世界において俺は酒を好んでいたのか、それ以前に酒を飲める年齢だったのかは思い出せない。

 ただ、酒をみてよい感情をいだかなかったことから好きではなかったことは確かみたいだ。


 だが、カルラがここに来る時に持ってきたという貴重な品だ。

 こんな場所ではもう2度と手に入れることはできないだろう。そんな貴重な品をわざわざ土産に持ってきてくれた気持ちは汲んでやらねばなるまい。

 全く飲まないのも悪い。仕方ないので適当に飲んでうまいことカルラを酔い潰すことにする。


「カルラってお酒に強いんだな。すごいな。カルラのかっこいい飲みっぷりがもっとみたいな(棒」


「へへ、煽てても何も出ねーぞ」


 とかいいつつノリノリで酒を飲むカルラ。本当に扱いやすい。

 ただ酒に強くて酔いつぶれてはくれない。

 話を切らすと酒を進めてくるので矢継ぎ早に質問してごまかし逆に飲ませるを繰り返すのだが、いい加減話題もつきてくる。

 そんなときふと墓に目が行く。


「この廃村にいたのってワーウルフなんだよな? 」


「そうだぜ。ワーウルフって言ったって顔が狼そのものの奴もいれば、普段は人間で月の番だけ狼に変わる奴もいた。部分的に狼な奴もいたな」


「それは猫耳娘ならぬ。犬耳娘ってことか……」


「ああん?若い娘はいなかったな。幼いガキはいたけど」


「その子も捕らえられたのか? 」


「たぶんな」

 襲われた現場を見てたわけじゃねぇけど、と付け加える。

 そいつはよかった。襲われるのを黙ってみてたんだ、などと言われたらただでさえ低いカルラの株がさらに下がってしまうところだった。


「そういやその子はワーウルフじゃなかったな。頭に角が生えてたし」


「もしかして、羊みたいな角か? 」


「そこまでは覚えてねぇな」


「……」


 あんまり聞きたくない答えを聞いてしまった。

 骨は大人にしては小さすぎた。子供だとすれば説明がつく。


 もしあの骨が子供の物だったなら、一人残されていたのも想像できる。

 村が襲われたらまず子供をかくまうはずだ。

 そしてもくろみ通り子供だけは助かる。でも助かったからといって子供一人では生きていくことはできなかった。

 だから残されていた遺体は一つ。人目のある場所にもかかわらず回収されずに残っていた。それは憶測にすぎないが、事実なら後味の悪い話だった。

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