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忘れられた神様  作者: ニスコー
第一章
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お別れ

「散々私のことを利用して捨てるんですね。シクシクシク……」


 一応人格があるっぽい予言の岩を洞窟においていくのは少々気が引ける。

 そういうわざとらしい鳴きまねされるとおいていきたくなるけど。


「嘘ですね。私がどんな風に引き止めたって、上げ足とって私を悪者にしておいていく。サトミ様はそうお考えです」


 違う。

 といいたいところだけど、引っ越す事実は俺の中でもう決まっている。変える気はない。

 どうせでていくなら気持ちよく出ていきたい。

 気持ちよく出ていければこっちの都合で気兼ねなく戻ってこれる。

 そのためにはどう自分の正当性を主張して出ていくかが問題になる。

 俺は正しい。お前が悪い。だからいつでも戻ってきてOK。そう仕向けなければならない。

 ということは、予言の岩の言うことはあたらずしも遠からず。


 でもそんな風に仕向けなくったって、予言の岩が快く送り出してくれればすむ話でもある。

 俺の心が読めるんだし、察してくれてもいいなと思うのだけれけどな。


「お前はただ、俺が立ち寄ったらニコニコ笑って出迎えればいいのだってことですよね?私は都合のいい女なんですね……ヨヨヨ」


 ……女というか岩だけどな。鬱陶しい。


 予言の岩の言動はどっかでみたコントを思わせる。俺の脳内にある記憶をトレースしてるのだろうか。

 小賢しい。


 俺の心が読めるんだからむしろ自分から率先し気持ちよく送り出すべきだ。俺に余計な手間をかかせないでほしい……て


 あーもう。これじゃあ俺は完全に悪役じゃないか。

 これから先予言の岩に会いに行くのに後ろ暗さを感じるレベルである。

 まさか……これが願いじゃないだろうな。最近俺が予言の岩に頼ってばかりだから距離を置かせようと?


「でもいいんです。私はサトミ様の者。所有物なのですから、どんなに冷たく扱われようと嫌いになることはできないのです」


 自分に酔ったような物言いの予言の岩。

 岩だけに表情はないが、どこか遠くを見つめていってそうな哀愁が漂っている。


 ぬう、よめない。こいつが何を考えているのか。


「まぁ、子芝居は置いておきましょう」


 唐突に冷静になる予言の岩。

 ……? どういうことだ?


「サトミ様は自分なしじゃいられない女のほうが好みみたいなので、行かないでと泣いてすがってみました」


 いや、あっけらかんと笑って見送ってほしかったのだが……


「私のことただの岩として見るならそうでしょう。でも少しでも意思のある存在と認めてくれるなら、そちらのほうが好ましいと思ったのです。例えば、サトミ様はご友人に転校すると言ったら、またいつでも遊びに来いよと言われるのと、行くのが悲しいと言われるのどっちがいいですか?」


 やっぱりまたいつでも遊びに来いよって言われた方がいい気がするぞ。


「じゃあそれが好きな異性だったなら? 」


 ……お前は好きな異性ではないぞ。


「それではそれが両親だったなら? 」


 お前は俺の両親でもない。


「ようは関係性によってとってほしい態度が違うということです。そして私は、サトミ様に「行かないでほしいと言われることを好まれるような存在」でありたかったのです」


 お前がそう思ったって俺はそうは思っていないぞ。それはただの押しつけだ。そういうのが行き過ぎるとストーカーになるのだ。


「でも、私は予言の岩ですからそこはわきまえているつもりです。逸したくても逸することはできません。だからでもあるんです。私はサトミ様の心がわかってもサトミ様は私の心がわからない。サトミ様に私のことをわかってほしかったのです」


 なんだか、面倒くさいことをいいだしたな。


「そうかもしれません。申し訳ありません。本当はサトミ様の希望通りニコニコと見送っていればよかったのです。それなのに、こんな……」


 なんというか……重いな。

 でも不思議と不快には思っていない。

 そこまで俺のことを思ってくれるのは素直にうれしい。


 それは彼女が予言の岩であり、自分に見返りを求めない無償の存在だからだが、と同時に一つ問題もある。

 こいつは俺の心がわかる。こういうふうに俺が感じることもわかっていたのではないかということだ。


「サトミ様、私はサトミ様に生を受けるまでただの岩でした。生を受けてからはただサトミ様の知識と未来のみが私の世界でした。私はサトミ様なしでは生きていけません。いつまでも、サトミ様の帰りを待っていますよ」


 俺の質問には答えず彼女はそういった。

 このタヌキめ。と俺はそのときそう思った。でも後から考えれば俺がそう思うことすら彼女の手の打ちだったのだ。

 なぜなら俺はこの時彼女への疑念で頭がいっぱいで気が付かなかったからだ。彼女は「いつまでも、サトミ様の帰りを待っていますよ。」といったのだ。まるでしばらく会えないことがわかっているかのように。

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