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忘れられた神様  作者: ニスコー
第一章
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アンリウムの護符

 雷に打たれた瞬間俺は意識を奪われ、その間に妙な映像を見た。


 とある心優しい勇者様が、魔物の封印を解いてしまう。

 魔物は魔物として村人に恐れられていたが、勇者様はその忠告を聞かなかった。あるいは、魔物でも分かり合えるはずだと思ったのかもしれない。友達になろうと勇者は言った。

 初めは、魔物も勇者の言うとおり大人しかった。でも魔物は所詮魔物だった。

 最後には勇者を殺してしまう。

 だから言ったのに、と村人は言った。


 映像がぶつ切れると現実に引き戻される。

 前方に大蛇。ハチはこちらに駆けつけている途中。ハチの移動距離から意識が飛んでいたのは一瞬だったと分かる。


 雷に打たれ死を覚悟した。しかし無傷。そういえばハチに襲われた時も無傷だった。あのときはなんで無事だったんだっけ? 天使のわっかが守ってくれたんだっけ?

 今回も天使のわっかが守ってくれた……いや、違う。


 感覚があった。爆弾石のときに感じたようにアイテムは使えるときに使えると分かる。それと同じように俺は今、もう一つのアイテムを使える感覚があった。

 そのアイテムが守ってくれたのだとなんとなくわかった。


 力を感じる感覚のある部分に手を伸ばしその正体を手に取る。

 それは紙きれだった。

「アンリウムの護符」俺が洞穴で目覚めたとき、枕元にあったガラクタの一つ。何に使うかわからないもの。予言の岩も教えてはくれなかった。

 今回の探索には持っていかないでおこうかとも思ったがかさばるものでもないため一応持ってきた。ただそれだけのもの。

 だけど今は分かる。これにはすさまじい力が秘められていることに。爆弾石とは比べ物にならない力を感じる。


 蛇は俺が雷をはじいたことに驚きつつも、もう一度雷を集め始める。だが、今はもう恐れはない。そんなものはなんの訳にもたたないことが俺には分かった。


「馬鹿だね」


 頭の中で声が響く。暗い、女の声だ。


「みんな燃えてしまえばいいんだ」


「どうでもいい」彼女はそう思ってる。だから力を貸してくれる。かつて勇者がそうしていたように。彼女の力を必要としてる人が勝手に力を使えばいい。そして一緒に燃えてしまえばいいんだ。

 女の声に呼応するかのようにアンリウムの護符が怪しい光を放ち始める。


 ……


「ゴォォォォォォ!!!!!」


 まるで豪雨が降りだしたかのようが爆音があたりに轟く。聞いた瞬間、護符に魅入られそうになっていた俺は我に返る。

 声を発したのはワニだった。大蛇を一瞥すると、ゆっくり俺に近づいてくる。

 俺の前に守るようにハチが立つ。唸り声を発するが、よくみたら足が震えている。立っているのもやっとといった風だ。蛇による雷のダメージは相当大きかったようだ。


 ワニはゆっくりと俺の前までやってくると、ただじっと俺を見つめてくる。

 その目は穏やかだった。どうしてハチがこんなにも敵対心を燃やしているのかわからない。とても悪い存在には思えない。

 その暖かな眼差しに俺は眼を逸らせなかった。


 ワニは満足したように目を細めるともう一度咆哮を上げる。ただし今度は前みたいな強い咆哮ではない。穏やかな咆哮だった。

 それを聞く大蛇たちは一匹を残して川に戻っていく。

 ワニもその後を追うように戻っていった。


「神よ。ご無礼をお許しください」


 最後に残った蛇がゆっくりと首を垂れる。


「我が名はユルルングル。あなた様の眷属が突然主を襲いましたゆえ、仕方なく応戦いたしました」


 神よ、とか言い出すから誰に行ってるのかわからなかったが俺に話をしているらしい。

 そういえば俺は神だったっけ。

 そして眷属っていうのはハチのことか? 眷属か。眷属ね。なんかカッコイイ言い方だ。


「こちらこそごめん。いきなりハチが言うこと聞かなくなっちゃって。今までこんなことは無かったんだけど」


 どうやらユルルングルはワニの子分らしい。親分を襲われたら反撃するのは仕方がない。

 それよりもハチだ。どうしてこんあことをしたのか。見たところワニは好戦的な存在ではないようだった。にも関わらず俺の制止を振り切って攻撃にでた。この分だと予言の岩の「いずれ人を襲うようになる」という予言も止めることができないかもしれない。


「ハチというのはその眷属の名前ですか? 」


「そうだけど」


「なるほど、聞いたことはありませんが確かに力を感じます。それで、その者の性分を押さえているのですね」


 何やらユルルングルは勝手に納得したようだ。


「我々がいたのではその者の刺激になりましょう。我が主は以後なるべく合わないようにねぐらを変えるとおっしゃっておりました。今後はもう2度とこのような起こらないと約束いたしましょう」


 再度ユルルングルは非礼を詫びて川に戻ってゆく。

 全員川に戻った後もしばらく呆けていたが、どうやら危機は脱せたようだ。

 とりあえずほっとする。


 相手は自己紹介をしてくれたのに自分は名乗ってないことを思い出し不味かったかなと思う。

 でもハチの名前は教えたし。ワニの名前は聞いてないからお相子だよね。

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