カルラ追跡隊
飛び去って行ったカルラを呆然と見送る俺。
「困ったことになったね」
ラドンが言うには、今更妖水の森に行ってもクロウの遺体が見つかるとは思えないとのことだった。何しろだいぶ時間がたっている。全くの無駄足だ。だが、そのことを伝えるべくカルラを追える者はいない。
瞬間移動魔法が使えるアルメリアならそのことを伝えることができるかもしれないが、現在魔王に監視されている。
ラドンは出会って以来初めてとなる困った表情を見せていた。
「こんなときだけど……ラドンは本当にカルラを魔王にしたくなかったんだな」
俺が意外そうに問うた。
カルラが魔王になることを望んでいたようにも見えたのだが?
「そう見えたのかい? 」
ラドンは苦笑いする。
「実をいうとカルラが仲間を置いて妖水の森に引きこもってしまったのには怒ってはいたんだよ」
力を持っている者はその義務を果たすべきだからね。とラドンは言った。
「僕はむしろアンリウムに魔王になってほしかったんだけどね」
そしてしれっと問題発言。
確かに勇者殺しの炎はその役割にピッタリな気もする。
アンリウムは身勝手で我がままで無邪気だ。悪として設定するならこの上ない、でも悪を押し付けるには幼すぎる気もする。
「そんなの関係ないよ」
俺の心を読んだようにラドンが言った。
……
しばらく考え込んだ後、ラドンはカルラを追う方法として一つだけ心当たりがあると言いだした。瞬間移動を使える存在に心当たりがあるらしい。
でもそれには俺の助けがいるらしい。
「俺の助け? 何故? 」
「彼も異世界からの来訪者だからね。君の方が話を聞いてくれるかもしれない。さっき君が言っていたように生き返らせる力があるというのなら、それに興味を示す可能性も高い」
そういえば、ラドンの前で蘇生術の話をしてしまった。アルメリアから話は聞いてるかとも思ったが、どうやら黙っていてくれたらしい。蘇生術の情報を簡単に知られてしまったのはちょっとしくじったかもしれない。
……
俺は宿屋に戻り女子勢を起こすと事情を説明した。
俺はラドンとカルラを追うから、しばらくここに滞在して待っていてほしいと伝える。
「それなら私もいくわ。サトミだけだと心配だもの」
おごんがそう言ってくるものと想定していたが、大人しく従うつもりらしい。
やはりラドンと会ってからおごんは変だ。
相変わらず俺の気を引こうとはしてくるから嫌われたわけではないみたいなのだが……
この状況でついてこようとしないということはラドンのことをある程度信用しているということだろうと検討をつける。
ラドンが危険な奴と思うならリスクを背負ってでもついていこうとするだろう。少なくとも俺はそうする。
「私は反対です」
代わりに反対したのはチウネだった。
妹のことが心配らしい。一刻も早くトートにつきたいのだろう。
「そんなのサトミさんが危険です! 悪魔と手を組むなんて、もしサトミさんに何かあったら私……」
しかし意外にも俺を心配しているチウネ。どうしたのか? 本当に俺に惚れてしまったとでもいうのか?
一応断っておくがチウネが俺の事を好きだと思われるような行動をとっているのはおごんへの対抗意識のためだ。
ここでチウネを選ぼうものならちょっと付き合ってすぐにふられるね。付き合わないけどね!
まぁ、チウネの場合俺の性格を強制するという迷惑な野望があるのでそういうの関係なしに一生憑りつかれそうだけど。
「もしサトミさんに何かあったら私……どうやって妹を助けたらいいんですか!? 」
ですよねぇ。そんなとこだろうと思ってたよ。
「空間転移の力が必要なんですよね? 」
チウネが「だったら私が飛べば一番手っ取り早いのでは? 」と提案してきた。
チウネは魔道具「時と空を渡る霊竹のやり」で空間を渡ることができる。ただし制限距離は不明。
発動させる際は場所よりも人物を思い浮かべて飛ぶことから対象の人物がいないと飛べないらしいが、例外もあるためはっきりは分からない。しかも一度失敗して全く関係のないところに飛んでしまったこともあるという。
「でもお前うまく制御できないんだろ? 」
「制御できなかったの連続して使って疲れていた1回だけです。万全の状態なら大丈夫です」
何を根拠にか彼女はそう言い切った。
最近のチウネは優秀で言うことはないのだが、でも今までの負債が大きすぎていまいち信用が……
「チウネ……さんの、言うことは、本当です」
小さな声でハルが主張してきた。
う、う~~~~ん
「わかったとりあえずチウネの空間転移でカルラを追うことにしよう」
ハルがそういうなら仕方がない。
俺とチウネが2人でカルラを追って呼び戻そう。
高速で飛んでるカルラを追ってチウネが空間転移。カルラは気づかず通り過ぎ、俺とチウネはあえなく地面に激突……ダメじゃん!
「う~む」
俺は少し考えて、いそいそと空飛ぶ絨毯を持ち出した。その上に乗っかる。
これならカルラが気が付かなくてもそのまま地面に墜落するようなことはない。
「何してるのですか? 」
チウネが不思議そうに首をかしげる。
「いいからチウネも乗って」
言われるままにチウネも絨毯に乗った。絨毯は力なく地面に落ちた。重量オーバーだったみたいだ。
「何してるのですか? 」
チウネが不思議そうに首をかしげる。
……う、うるさいなぁ。もう!
「あの……」
おずおずとハルがその上に乗ると絨毯が再び浮いた。
ハルは俺たちより魔法の絨毯をうまく扱えていると思ったが、積載量にまで差が出ているとは思わなかった。俺は驚いて。
「すごいじゃないか! 天才だな! 」
とりあえずハルを褒め称えた。ハルは赤くなってうつむいてしまったが、嫌がってはいない、と思う。
「でもそれなら私がついていった方がいいんじゃない? 」
おごんが言った。確かにおごんは4枚の翼をもっている。当然飛べる。ハルも連れて行くくらいならおごんを連れて行ってもいいかもしれない。
「なら俺も! 」
自分は飛べないから自重していたハチだったが、4人も行くとなれば話は別だ。取り残されまいと主張する。
「さすがにそんな沢山は無理ですよ! 」
チウネが悲鳴をあげる。
……どうしようか?
考えた結果。俺とチウネとハルで行くことにした。
忘れてはいけないハチの人を襲うようになるという予言。それに関わる最有力候補はハルの身の安全。俺がすぐそばにいれば最悪すぐに生き返らせることも可能だけど、離れているうちに遺体が紛失したりすれば2度と生き返らせることはできない。
わざわざこの面子の中で弱い3人がえりすぐって出かけるのは不安ではあるが、カルラと合流できればその心配もすぐになくなるだろう。たぶん。




