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忘れられた神様  作者: ニスコー
第三章
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目指すべき方向

 宿屋のボヤ騒ぎは宿屋の主人に金を握らせて不問にしてもらった。

 金を握らせたとかいうと人聞きが悪いけど、ボヤで傷んだ部屋の修繕費とその間の損害費を多めに払って警察的なところに届けでないよう口止めしてもらっただけだから悪いことはしてない、はずである。

「なんなら記憶を消してあげましょうか? 」

 というおごんの申し出を受けなかったのだから大目に見てほしい。


「そういう訳だから、僕もしばらく君たちの旅に同行するよ。よろしくね」


 ラドンはそう言うとおごんを意味ありげに見た。

 そういえばあの騒動でもおごんはでてこなかった。

 おごんほどの力を持っていればアンリウム同様ラドンの来訪に気が付いたはず。

 にもかかわらず、おごんはむしろアンリウムに続いて俺の部屋に行こうとしたハチを止めていたらしい。

 俺に惚れているというおごんにとって、ラドンを撃退するのは俺にアピールする絶好のチャンスだったはず。にもかかわらずハチの邪魔をした。

 どうやらおごんとラドンには何か因縁があるみたいだ。


 ……


 これからの旅の目的は魔王の追っ手を避けつつトートに行くということになる。

 てっとり速い移動手段があればいいのだが、瞬間移動の使えるアルメリアは魔王の監視下にある。高速で移動できるカルラは魔王の追っ手に見つかる可能性があるため目立った行動がとれない。ハチも高速で移動できるが移動手段が陸路になるため目立つので駄目だ。でっかい犬が道をかけていたらきっと通報される。チウネの空間転移は不安定。どうやら地道に行くしかなくなってしまったみたいだ。

 元から地道に行く気だったけどね。


 魔王に対する対応策の為7人の勇者の使徒、そして魔王13人衆について、カルラとラドンからいろいろと話を聞いておくことにした。


 ……が、情報の羅列は覚えるのが難しく、さっぱり理解できなかった。


 13人衆の仲間、特性について事細かく教えてくれるラドン。その揚げ足をとるカルラ。まぁカルラのことは置いておこう。それを差し引いてもよくわからなかったのだ。

 せめてストーリー仕立てにしてくれるとわかりやすいんだけど……


「注意するのは黒騎士とヘキサゴンかな。こいつらは絶対に勝てない連中だから」


 そんな俺にラドンが一言でまとめてくれた。


「ていっても俺は倒したけどな! 」


 でもカルラは自慢げに揚げ足をとった。

 こういう風に言った情報をカルラがすぐさま反故にしてくるから余計分かりにくくなっていたりする。


 なんとか情報を整理すると

 本来は、魔王13人衆のうち倒せるのは前回魔王を倒した勇者の使徒を含む7名だけで、他は倒せない絶対的な力を持っていたのだという。


今はその内の4名は倒されてしまったため絶対倒せないのは2名。それが黒騎士とヘキサゴンなので気を付けるようにということだった。


 魔王を倒すという行為は魔王13人衆の中から7名を倒し、最後に勇者が魔王に挑戦することからなる。

 そして13人の内倒せるのは7人だけ。

 勇者は誰が倒せる相手なのか、そして少なくとも先代勇者の使徒を超える仲間を仲間にしないと魔王に挑戦できない。

 これが意味するものとは、魔王討伐とは他の7つ国による投票のようなものらしいということだ。

 7つの国の代表者すべてが魔王を倒すという意思が無ければ、あらかじめ倒せる7人の敵を選んで倒すことなどできない。


 ところが、俺の幼馴染の選んだ勇者の使徒により例外が起きた。倒せないはずの6人の13人衆の内4人を倒してしまった。


「倒したのはカルラ、田中さん、鈴木、そしてアンリウムだよ」


 ラドンがそう付け加えた。

 そう、倒したのはカルラとアンリウムと田中と鈴木ね……て、鈴木? そんなやついたっけ?


 幼馴染の仲間の7名は

 カルラ、アンリウム、ラドン、アルメリア、クロウ、田中……ああ、もう一人いる。そいつが鈴木か。

 鈴木っていうと日本人に多い名前ナンバー1の鈴木のことだろう。ていうことはつよい力を凡庸な名前で封じられている存在ということになる。


 カルラを魔王にしなくたって強そうなのゴロゴロいるじゃないか。


「そういう訳にはいかないんだよ。何せ田中さんは名前で神格を封じられているからね」


 神格のないものは神様が与えたでたらめに強い力にも、神様のルールに従って戦わないといけない。

 例えば神様が「出会った瞬間負ける力」なんか与えてたら絶対に勝つことはできない。

 だから神格のあるカルラが必要らしい。


「じゃあ俺が田中の名前を解放すればいいわけか」


「解放することが人間にとって必ずしもいいこととは限らないけどね。実際この世界はあやふやな魔王によって戦争も起きていないんだよ」


 敵が明確ではないから戦争も起こらないのだとラドンは言った。

 ならそれはいいことなのではないか? 


「魔王があやふやな存在のまま逃げ続けるのが一番ベストってことか」


「僕はそれは反対だけどね。敵がいなければ緩やかな老化により人は滅ぶだけなんだよ」


 ラドンは言った。


「それからサトミ君、君の仲間のおごんさんだけど、彼女にも同じことを君はしてるんだよ」


「? 」


「彼女の力は君たちの中では一番強いけれど、神格は無いから神様の造った強制ルールには逆らえない」


 気が付いてないようだから念のためね。とラドンは言った。


 まさかのごんぎつねフラグ復活か。勢いで変な名前つけなきゃよかったと俺は後悔した。


「そういうわけで、戦っちゃいけないのは2人。残りはカルラの意志一つで退けることができる。本人の意志一つでね」


ラドンは念を押すように言った。

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