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忘れられた神様  作者: ニスコー
第三章
121/266

黄金の実の守り主

 誰からも忘れられた小さな森に彼はいた。

 森には神様が置いていった金色の果実があった。

 彼はただ、ひたすらその果実を守っていた。

 かつては、その果実を得るために森に挑むものもいて、それを追い払うのが彼の仕事だった。

 でもそれも昔。今ではもう、この森にい挑むものはいない。森のことを覚えているものすらいないのかもしれなかった。


 あるとき、久しぶりに森に来訪者が現れた。

 それは2羽の烏の魔物だった。

 どうやら迷い込んだらしい。

 退屈しのぎに脅して帰らせよう。彼はそう考えた。

 けれど子供の一人は無謀にも戦いを挑んできた。

 予想以上にすばしっこく、強かった。面白いと彼は思った。

 どうやらもう一人を逃がすために囮になろうという腹らしい。

 少し脅すだけのつもりだったが、予想以上に楽しくなって、ついつい殺してしまうところだった。

 子供が血を吐いて倒れた時、しまったと思った。

 やりすぎてしまったか?

 でもそうではなかった。

 その子供は不治の病に侵されていた。

 さすがに黄金の実は与えられないが、この森の薬草なら普通の薬草より強く効く。完治させることはできなくとも効果はあるだろう

 子供のことを気にいった彼は薬草をあたえた。


 しばらくしてまた烏の子供が来やってきた。今度は一人だ。

 薬草を取りに来たらしい。

 それはあのとき戦った少年とは別の子供だった。

 その子供は前に会ったとき威勢だけはよかったが、結局守られるだけで何もできない子供だった。

 あまり興味はなかったが、戦った子供がどうなったのか聞きたいので姿を現わした。

 子供は彼を目の前にして、動揺をあらわにした。でも相変わらず威勢だけはよかった。

 口だけの奴は好きではない。

 力を持つものは例えどんな存在でも評価するし、持たないものはどんな性格でも評価しない。それが彼だった。

 実をいうと威勢だけはいいくせに結局友達一人戦わせた子供を快く思ってなかった。

 脅してもう2度とこの森に近づく気をおきなくさせてやろう。彼はそう考えた。

 しかし、意外にも子供はは戦って薬草を持って帰ると言いはなった。


 子供は弱く、簡単に彼にひねられた。

 死なない程度に痛めつけ、森からほおりだす。これでもう2度とこの森にはやってこないだろう。

 ところが、子供はまた現れた。

 またたくまに彼に倒される子供だったが諦めることはなかった。何度も何度も薬草を取りに森に訪れた。

 子供は相変わらずすぐに負けたが。子供は戦うごとに強くなっていった。


 子供が薬草を取りに来るのは最初に戦った子供のためらしかった。

 強かった子供は病にふせり先は長くないらしい。そのために薬草を取りに来ていたのだ。

 そのことを知った彼はたまには見逃して薬草を取らしてやることにした。

 でも大体は子供の前に現れて簡単には薬草をあたえなかった。

 森の薬草は強いが、頻繁に使いすぎれば毒になる。

 子供に多くの薬草を与えぬために、そして少しづつ強くなる子供を見るのが楽しくて、彼は子供の前に立ち続けた。

 そんな子供を見ているうちに彼の考えも変わっていった。弱ければどんな存在の言葉にも耳を傾けなかったが、それは違うのかもしれない。もしくは、本当の強さというものは……

 結局、子供は彼に勝つことはできなかった。

 子供が彼に勝つことができたのはそれかだいぶ後のこと。カルラという名前をえて勇者と森に立ち寄ったときだ。


 ……


「というのが僕とカルラのなれ初めだよ」


 ラドンはそう言って話を締めくくった。

 て、カルラの長話をキャンセルしたと思ったら、お前が長話するんかい。

 俺は「そんなことがあったのか」などと適当に相槌を打ちつつ心の中でつっこんだ。

 カルラも「そんなことあったっけ? 」と首をかしげていたが……


「やっぱりおかしいぜ。その話だと最初にあったとき俺は戦わないでダチに戦わせてたってことになるじゃねーか! 俺がそんなことするわけねー! 」


「誰もが初めから強くあることはできないよ。あのとき逃げた後悔がカルラを強くしたのかもしれない」


「いや、俺はそんなことしねえ! 」


 互いの思い出話で口論を始めた。別に今始める話でもないよね? 他でやってほしいものである。

 そんなこと考えてたらラドンの座っていた箇所がいきなり燃えた。

 ? 燃えた?


「危ないじゃないか。アンリウム」


 間一髪難を逃れたラドンが見つめるその先には、町についてからはずっと大人しかったはずの炎の妖精がいた。

 いつものように何考えてるかわからない顔ではなく、明確な敵意を秘めて、ラドンを見つめている。

 油断していた。町についてどころか、妖精の姿を取り戻してからアンリウムはずっと大人しかった。

 けれど思い出す。こいつはある意味一番の問題児で一番言うことを聞いてくれない奴だったのだと。


「仕方ない。私お前。嫌いだから」


 後で聞いた話だが、アンリウムとラドンはもともと仲が良くないらしい。仲が良くないというかアンリウムが一方的に敵視しているのだという。

 勇者の使徒は皆勇者に惹かれて集まった。でもラドンはそうではなかったらしい。それがアンリウムの気に召さなかった。それが理由らしい。

 その勇者に彼女がしたことを考えるとなんとも身勝手な話だ。


 だが、まあ、それは置いといて。


「火! 火を消さないと! 」


 ここで燃え広がったら犯罪者だよ! 町についていきなり犯罪者だよ! 俺は慌てて火を消そうと試みた。でもアンリウムの放った炎は特別ですぐに消えることはなく瞬く間に燃え広がってしまった。

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