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忘れられた神様  作者: ニスコー
第三章
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魔王と謁見

「これが盗賊の町襲撃の顛末なのかい? 」


 現、魔王がアルメリアに問うた。

 アルメリアの提出した報告書には勇者が盗賊の町にやってきたこと。教会を壊したこと。自分の担当であったジェイド以下数名が犠牲になったことが書かれていた。

 ジェイドが生きていることやサトミ、カルラ達のことは伏せてある。

 なぜそこまでする義理があるのかと問われればないのだが。

 アルメリアは一応13人衆の1人という身分にある。13人衆は全てが時期魔王候補であり、ある程度の秘匿権は持っている。これくらいは自己判断で揉み消したって構わないはずだ。

 この先サトミやジェイドが有名になっても、そのことを隠していたアルメリアが粛清されるようなことはない。

 ノーリスクだから言わないでおいてあげるだけだ。

 それだけなんだからね! 勘違いしないでよね! みたいな?


「近くの町から、巨大なカラスがやってきて町を破壊した後勇者を吐き出して去って行ったという報告もあるのだが……」


「そ、そうなんですか? 」


 アルメリアの額に大粒の汗が


「カルラかな? 」


「カルラですね」


 アルメリアはあっさり認めた。これはもう隠しても仕方がない。

 カルラをかばおうとか考えた自分が馬鹿だったのだ。あいつは笑いながら人の善意を踏みにじる奴なのだ。せっかく人が旅の心配してあげたのに、「いつでも会えるじゃん? 辛気臭ぇな。歳取ると涙もろくなるのか? 」とか言い出したのだ。

 誰が歳なのか? 涙もろくなるのか? だいたい自分はあの時泣いてなどいなかった……はずだ。


「そうか、カルラが……」アルメリアの内心など知るよしもなく魔王は考え込む。


「で、どうだった? カルラは魔王を引き受けてくれる気になったのかい? 」


「はぁ? 」


 唐突なことにアルメリアが変なところから声が出てしまった。


「ないない。カルラがそんなの引き受けるわけわけないじゃない! 」


 あまり驚いたので素が出てしまう。でもまぁ、今ここにはアルメリアと魔王しかいない。そして魔王と彼女は旧知の間柄でもある。今更な話である。


「そうかな、俺たちの中では一番適任だったよ。1番強いか……はおいておいてトップツーは間違いなくカルラとアンリウムだった。かといってアンリウムに魔王の力を与えたら本気で世界を火の海にしかねない。そういう意味でもカルラが適任だったと思う。少なくとも、クロウに魔王をやらせるよりはね」


 クロウ、それは魔王の前任者の名前だ。

 純粋な戦闘力では現魔王の方が上だったのだけれど、クロウは神格を持っていた。だからカルラの代わりに魔王になった。

 だがそれは現在では秘匿されている。クロウは魔王の地位にありながら勇者ではないただの人間達に倒されてしまったからだ。

 魔王は勇者によって倒されなくてはならない。それが決まりだ。


「もしがクロウが人に殺されたと知ったら……」


 魔王の瞳に危うい光がともる。


「でもそれはあんたの望む魔王の姿ではないでしょ」


 アルメリアはとっさにくぎを刺した。魔王がカルラに魔王をやらせたいのはカルラが気のいいいい加減な阿呆だからだ。世界を滅ぼしたいからではない。


「そうだね」と魔王は微笑んだ。瞳に宿る危うい光は消えていた……ように見えた。


 ……


 フェクション! 誰かが俺の噂をしていやがるぜ。女だな。だがいったい誰が……


 カルラが1人で痛いことをほざいている。


「ところでサトミ、一つ気になることがあるんだが」


 あほなことをほざいでいたと思っていたカルラだが、一転真面目な顔をして詰め寄ってくる。


「お前、もしかしてモテてないか? 」


 カルラはおごんと、チウネを見ていった。

 チウネはアンリウムと何事か口論している。アンリウムは新しいおもちゃのターゲットとしてチウネに狙いを定めたらしい。

 おごんはハルに花の冠など作ってよいお姉さんをアピールしているが、内からにじみ出る邪悪さにハルはハチの後ろに隠れてしまっている。だがおごんは諦めない。

「じゃあハチちゃんにも作ってあげましょう」

 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。俺を射るためにハルを射るためにハチを射ることに決めたらしい。


 よし、2人ともこっちの話は聞いてない。


「キノセイダヨ」


 サトミは機械的に受け流した。


「そうなのか? 」


「ソウダヨ」


 余計なことを言うんじゃないカルラ。刺激するんじゃないカルラ。

 あれは地雷。両方とも地雷。正解のない答えなんだ。つこったんだらいけないものなんだよ!


「やってないのか? 」


「やるって何をだよ! 」


 サトミはとりあえず話をそらすことにした。


「むしろ俺は失恋したんだよ。プレセぺのことが好きだったんだよ。でもプレセぺはヒラキンと一緒に旅立っちゃったんだよ。きっと今頃ラブラブだよ。俺は枕を涙でぬらすしかないんだよ」


「ふられたって、何? 」

 ハルとハチがひそひそと話し合い、ハチが首をかしげている。

 ハルは俺のところトコトコと走りよってくると「主様、かっこいいと、思います」と元気づけてくれた。


 お、おう……ありがとう。


 一応目の前の問題に対してより大きな問題を提起することによって話を逸らす作戦である。

 と、兎に角これで満足か? 満足だな。だったらもうこの話は終わり。金輪際恋話なんかしないように!


「そうか」


 カルラは安堵の表情を浮かべて言った。


「サトミとはずっとダチでいられると思ってたぜ」


 お前なんか友達じゃねーわボケ!


「俺はサトミに嫉妬して言ってるわけじゃねーぜ? ただ俺はハーレムって奴が許せないだけなんだ」


 カルラは聞いてもないのに遠い目を見て語り始める。


「俺がまだモンスターだったころ、群れはハーレム性で一匹のオスが群れの女全てを自分の者にしてたんだが、腹違いの弟が群れの若い娘と恋をしてだな……」


 そして糞長い話を延々と聞かされる羽目になった。

 要約すると、カルラには腹違いの弟がいた。弟は病弱だったが力自体は強かった。あるとき弟は群れの娘と恋をして、その恋を実らせるためにリーダーになろうとした。でも病弱な弟にその力はない。だからカルラが代わりにリーダーをぶったおした。ハーレムは解体して弟と娘は結ばれてハッピーエンド。俺はすごい。俺は強い。

 結局カルラはただのモンスターだったころから強かったっていう自慢話だった。


 長話を聞き終えたころには次の町が見えてきた。

 最果ての地を抜ければ人の町もまばらに点在しているらしい。盗賊の町を出てからそう日にちもたってはいなかった。


 町に着く前にハルやカルラなど、半獣半人間の外見はかなんとかしとかないといけない。

 これはカルラの人化の術でなんとかなる。

 町についたら砂漠で取りためておいた砂金を換金だ。魔法の絨毯には乗せれるだけの砂金を積んである。

 砂金は破壊された盗賊の町に沢山寄付してきたがもとが砂漠の砂だけに腐るほどある。

 もう、この時点で金については何の心配もなかい。

 とはいえ油断は禁物。たくさんの人の目にさらされる。アルメリアやジェイドがいた盗賊の町のように守ってくれる人もいない。気を引き締めてかからなくてはいけないだろう。

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