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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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生き返らせること

 俺が誰かを生き返らせれる条件は3つある。

 ①魂が存在してること。

 ②遺体があること、ただし遺体の損傷は問わない。

 ③依代の銅貨があること。

 ただし③に関しては魂が完全な状態であればなくても問題はないようだ。


 幼馴染がなくなっていたと知ったとき、もちろん生き返らせたいと思ったが、①も②もないので現状では不可能だった。


 問題のプレセぺの姉についてだが

 ①の魂の状態についてはどうやら完全な状態でプレセぺに憑り付いているらしい。③の依代の銅貨はなくてもいいということになる。

 問題は②の遺体についてだが、その所在はヒラキンも知らないらしい。


 遺体がない状態での蘇生は可能なのか?

 やったことないからわからない。


「面白いわね」


 そういったのはプレセぺだった。けれど、いつものプレセぺとは感じが違う。

 プレセぺに寄り添っていた「すべての罪を喰らう者」が、異変を察知して離れる。ざわざわと、彼女の影がざわめき始めた。

 これって攻撃態勢ってやつか?


 天使は槍を構えなおす。俺もプレセぺと距離をとった。


「ヒラキン、この子をはやく引っ込めて頂戴。私事プレセぺを食べてしまうわよ? それからそこの天使も私に手を出さないこと、私の魂を無理やりこの子から引き離したら記憶が戻る。この子の心はまた壊れてしまうわよ? 」


 ヒラキンが慌てて「すべての罪を喰らう者」の召喚を解く。龍の少女はいずこかに消え去った。

 天使は槍の構えは解かないが、すぐに攻撃を仕掛けるということはないようだ。


「ねぇあなたサトミといったかしら? 私のことを生き返らせてくれるといったのは本当かしら? 」


「遺体があればな」


 俺は答えつつ理解した。この女、どうやら心根の優しい娘とは対極の場所にいる娘のようだ。なんかこう、邪悪なものを感じる。


「残念ねぇ。遺体はもうないの。だって私、プレセぺと一つになりたかったから……プレセぺに食べてもらったのよ? 」


 そういうとプレセぺに憑りついた姉はクスクスと笑った。


 こいつはまた……どぎついのが現れたな。俺は辟易した。

 プレセぺに自分を食べさせたとこいつは言う。あのプレセぺが本当にそんなことをしたのか俄かには信じがたいが、いうからには本当なのだろう。

 それでプレセぺを軽蔑したりはしない。話の流れやヒラキンの反応から、それがプレセぺの意思を無視したことであるということは察することができたからだ。


「お前の体じゃなくても生き返らせることはできるぞ? 」


 ジェイドとロレンスの魂の入れ替わり事件から察するにあいてる身体があれば魂を移し替えることは可能だ。

 試しに俺は提案する。


「ちょうど、俺たちのところにはジェイドっていう空いてる体があるんだ。例えばその中にお前の魂を移し替えてだな」


「馬鹿な! 」


 異議を唱えたのはガプスとかいう盗賊だった。

 ……あ、いたの?ていうか話理解できてたの?

 俺は内心舌打ちする。

 別にジェイドを生き返らせるのが面倒くさいからプレセぺの姉の魂を入れて一石二鳥を狙っていたわけではない。試しに言ってみただけだ。

 そうなったら楽でいいなとは、ほんの少し思ってたけど。


 なにせ、今ある魂を抜いたり入れたりする分には天界のルール違反には抵触しないらしく、天界の使いや天使に狙われることもない。俺としては万々歳だ。その後邪悪な魂を宿したジェイドが盗賊としてどんな悪逆非道を働くかと思うと、気になるところではあるが。


「他人の魂を別人に入れ替えるなど、許されることではありません! 」


 天使が憤慨する。


「私に男の体に入れというの? 」


 プレセぺの姉も怒りをあらわにする。


 ……べ、別に本当にやろうとおもってたわけじゃないよ! ノーカンだよ、ノーカン!


「例えばの話だ。そういうこともできるという例え話」


 俺はさも最初からそういう意図で言ってましたという風に誤魔化した。

 いやいや、誤魔化したんじゃなくて、最初からそういう意図だったんだって! 本当だってば!


 天使は疑いの目で俺を見つめている。

 くそう……いらんこと言ったせいで天使に目をつけられてしまった。もう余計なことは言わないぞ。


「でもそうね。別の女の体ならもらってもいいわ。例えば、あなた」


 チウネを指す。


 よし、それで手を打とう!


 俺は試しに言ってみたくなったが、ぐっと抑える。つい今しがた余計なことを言わないと誓ったばかりじゃないか。


 俺はそこにスイッチがあったら押してみたくなる人なのだ。別に他意があるわけじゃない。


「な、何をばかなことを!? 」


 言われたチウネは激昂している。


 でもな、チウネよ。お前は正しいことが大好きじゃないか。プレセぺに代わってその身を差し出すのはとても正しいことじゃないのか? 俺は意地悪な指摘を思いついたが、言うのはぐっと抑え込んだ。


 まぁ、冗談はさておき、これで条件はある程度出そろった。

 まずプレセぺの姉。生き返ることはやぶさかではないらしい。他人の体でも女のものならある程度は許容できるとも言っている。


 次に天使。魂の入れ替え行為はよしとはしていない。生き返らせる行為自体には何も言及してないが、おそらく、生き返らせたのちにプレセぺの姉を退治するつもりであるからだろうと推測される。天使はいつでも攻撃できる態勢にある。

 問題は生き返らせると行為に及んだ際俺がどのように処理されるかだ。ここは押さえておかないといけないところだろう。


 ヒラキンはプレセぺの記憶が戻る、とか、心が壊れるとかいうキーワードに反応している。プレセぺの姉をプレセぺから引きはがすと都合の悪いことが起こるらしい。ここもクリアしておかないといけない。


 最後に俺。代わりの体さえあれば魂の入れ替えは可能だ。だが天使の心証を悪くすることを考えればあまり好ましくはない。

 完全にプレセぺの姉を生き返らせることは……たぶん、可能だ。

 遺体の損傷関係なく俺は生き返らせることができる。プレセぺの体内に姉の体の一部が存在するならできないことはない。その感覚がある。だがそのためには、もしかすると依代の銅貨のようなアイテムが必要になるかもしれない。

 プレセぺの体の一部である姉を生き返らせてプレセぺが無事でいるのかという疑問もあるが、それは対応策がある。身代わりの石だ。生命の危機を反故にしてくれるこいつがあればたぶん大丈夫なはずだ。問題は「記憶が戻る」とか「心が壊れる」とか、そっちのほうだろう。


 ついでに、俺のほうからはもう一つ通しておきたい要求もある。ジェイドのことだ。生き返らせるたびに天界の使いやら天使やらとやりあうなんて心臓に悪いことはしたくない。なんとか天使に恩を売りつけて今回のことのついでに見逃してもらいたい。


 まとめると

 ①エキドナは完全な形で生き返らせる。その代わりにプレセぺの記憶やら心やらは守るように要求する。

 ②天使に俺の心証を悪くせずに尚且つジェイドのことを見逃すように恩も売りつける。


 ……難しいな。

 エキドナのことより天使のことのほうが、俺の身の安全と要求を通すことのほうが難しい。

 目的と手段が入れ替わってるような気がしなくもないが、あまり考えないようにしよう。


 俺はしばらく考えて、切り出した。


「人を生き返らせるという行為は禁忌の術だ。俺にとっても大変な危険を伴う。俺も本当はあんまりやりたくないんだが……」


 ちらっ、と天使を確認する。

 特に何の感傷もいだいてはいないようだ。

 まぁ、いい。とにかく、「本当はやりたくない」「代償がある」「寿命が縮む」「頭痛めまい吐き気などに見舞われる」等、可哀想な俺をアピールだアピール!


「御託はいいわ。できるの? できないの? 」


 少し苛立ったようにプレセぺの姉が言った。


「できるさ。ただ俺はさっき言ったジェイドを生き返らせるために長年貯めに貯めていた膨大な魔力を使おうとしている。ただでというわけにはいかない」


「主様はすごいよ! 」


 ハチがそれに同意する。


「簡単に人を生き返らせ……むぐ」


 俺の糸を察したかあわててアルメリアが止める。ナイスだアルメリア。

 アルメリアはなるべく天使の視界にはいらないようそそくさとハチをつれて引っ込む。

 お前も大変だな。


「俺はジェイドを生き返らせる。その力を流用してお間を生き返らせよう。とても危険な行為だ。それをあえてやるというからには条件が」


「なら、いいわ」


 そうか、なら、いいのか、それなら仕方ない……て、おい!


「私はこの子をとても気に入ってるの。一緒に生きていくのは悪くないわ」


 生きてくってお前、憑りついてるだけじゃねーか!

 俺の内心のつっこみもむなしくいけしゃーしゃーと言い放つ。


「お待ちください」


 さらに天使も異を唱える。


「あなたはこの悪魔だけではなく他の人間も生き返らせるつもりなのですか? 」


 視線が冷たい。

 ……ああ、もう!

 プレセぺに姉が別に生き返らなくてもいいとかいいだすからない頭ひねって考えてた作戦がパーだよ。こうなったらもうあれだな。開き直るしかないな。


「人を生き返らせるのって特別な行為なのかな? 」


 俺は逆に聞くことにした。

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